カイル・クーズマ

クーズマ32得点、敵地でヒート相手の接戦を制す

今シーズン、ピストンズは28連敗という不名誉なNBA記録に並び、それはチームに『弱い』というイメージを植え付けた。しかし、連敗を止めて年が明けると、ピストンズはしばしば勝つようになった。そして気付けば、ウィザーズが逆転されて最下位に。プレーオフとは無縁で下位に沈んでいるのは同じでも、『最下位』は心理的に厳しいものがある。カイル・クーズマにジョーダン・プールとタレントを揃えるも機能しないチームの雰囲気は重苦しいものになっていた。

だが、そのウィザーズも変わりつつある。エース候補として加入しながら結果を出せないプールをベンチスタートに回したことが一つの転機になった。チームで一番の高給取りをベンチには置きづらいものだが、彼自身がプレッシャーが少なくなったことでようやくリズムを取り戻すようになった。そして、多くのシュートを放つが決められなかったプールが外れたことで、スタメンによる攻めのバランスは劇的に改善している。まずまずのプレーをしても力負けする試合が続いてはいたものの、現地3月8日に同じく下位のホーネッツに勝利し、さらに3月10日には敵地でヒートを110-108で破る金星を挙げた。

先発ポイントガードのタイアス・ジョーンズは16アシストを記録。「一生懸命に努力しているのは同じだけど、結果が出るのは良いことだ。勝てば自分たちのやっていることが間違っていないと証明できる」とうれしそうに語る。

大きな点差は付かなくてもビハインドの時間帯が多い苦しい試合展開だったが、ウィザーズの選手たちは集中を切らさず、ハードワークを前面に押し出すヒートに一歩も引かずに戦い続けた。第4クォーターにクーズマの11得点の活躍で残り2分45秒で10点のリードを奪う。ここからヒートの猛反撃を浴びるも、最後はダンカン・ロビンソン、ジミー・バトラーのシュートが決まらず、リードを守り切った。

32得点とエースの仕事を果たしたクーズマについて、ジョーンズは「一度集中したら彼はすごい。ディフェンスに重圧をかけ、リムに向かってプレーする時、彼は真価を発揮する」と称える。クーズマはこれで8試合連続で20得点超え。ドライブからも3ポイントシュートでも得点できる幅広いオフェンス能力を持つ選手だが、このところは自らアタックして攻める意識が増し、フリースローでも得点を伸ばしてもいる。ジョーンズの言うように「リムに向かってプレーする時」こそクーズマは違いを見せられるようだ。

一方でクーズマはジョーンズについて「オープンになった瞬間を見逃さずにパスを出してくれる。常に落ち着き、自信を持っているからミスも少ない」と語る。この日のジョーンズは16アシストを記録して、ターンオーバーはわずか1。勝った試合の後でも彼は唯一のミスを気にしていた。彼は今シーズンここまで平均7.2アシストを記録し、アシストをターンオーバーで割った『AST/TO』は7.43で、マイク・コンリーやタイリース・ハリバートン、クリス・ポールを上回るリーグトップクラスの数字だ。

ジョーンズのプレーメークにより、コーリー・キスパートが22得点、デニ・アブディヤが16得点、ビラル・クリバリーが11得点で彼自身が12得点と、先発がバランスの良い攻めを続けてヒート守備陣に狙いを絞らせなかった。突出したスターの台頭は印象こそ強いが、再建が始まったばかりのウィザーズにとっては、アブディヤ、キスパート、クリバリーといった自分たちが指名して育てる選手が経験を積むことの意味は大きい。

そしてやはり、最下位脱出はうれしいものであり、若い選手たちに自信をもたらしてくれる。ヘッドコーチ代行を務めるブライアン・キーフは言う。「我々の目標は成長にある。試合だけじゃなく、練習ごとに少しずつ積み上げていきたい」