「自分の仕事なのに気付くのがちょっと遅かったです」
バスケットボール男子日本代表はアジアカップ2025予選の初戦でグアム代表(同76位)と対戦し、77-56で勝利した。
最終スコアだけを見れば日本の快勝のように映るが、実際は生命線の3ポイントシュートに当たりが来ず、前半を1点ビハインドで終えるなど、FIBAランキング76位の格下に苦戦を強いられた印象は否めない。
先発出場し、ジョシュ・ハレルソンに次ぐ12得点、3アシストを記録した比江島慎だが、3ポイントシュートは7本中2本の成功に留まり、チームワーストの4ターンオーバーを喫した。そのため、彼の表情も決して明るくなかった。比江島は「久しぶりのトム(ホーバスヘッドコーチ)さんのバスケで、しっかり(形は)作れていたとは思うんですけど、なかなか3ポイントが入らない中でリズムがつかめずと言いますか……。最初から日本に流れを持って行けなかったので、そこはしっかり反省したい」と試合を振り返る。
日本はロスター入りした馬場雄大がコンディション不良のため欠場となるアクシデントに見舞われた。「馬場がカッティングをしてくれたり、流れを作ってくれたりするところで、急にプランを変えなきゃいけなくなり、僕も戸惑いはありました」と、馬場不在の影響について比江島は言及したが、何よりも自身の役割を遂行できなかったことに目を向けた。
「前半で3ポイントと2ポイントのバランスが3ポイントに偏ってしまって、僕らが目指しているバスケにならなかったです。3ポイントに偏っている時はドライブを仕掛けなきゃいけなかったし、自分の仕事なのに気付くのがちょっと遅かったです」
ワールドカップ2023でアジア1位となり、パリ五輪の切符を勝ち取ったが、世界的に見れば日本は強豪国とは言えず、アジアでも飛びぬけた存在ではない。常に格上との対戦が続いてきた日本にとって、必勝が求められるような状況はこれまでになかった。慢心があったとは言わないが、比江島も格下相手のやりづらさは少なからず感じていたという。
「初めての経験でもあったし、フィジカルは僕らより優れている部分もあるので、そういったところに戸惑ってしまった。正直、(格下相手の難しさは)みんなもあったと思います。しっかりフリーが作れて、いつでも打てる状況の中で選択していかなきゃいけなかったので、難しい部分はありました」
「経験がある中で、僕がしっかりゲームを作らなきゃいけなかった」
自身のパフォーマンスに納得がいかない比江島だったが、ハレルソンに次いで長い27分39秒のプレータイムを与えられた。25日の中国戦を見据え、プレータイムを抑えることもできたが、ホーバスヘッドコーチはその選択を取らなかった。そこには、比江島への信頼や期待が込められていた。「僕とマコは2年間一緒にやってきて、彼のプレーが必要かなと思った。去年のワールドカップの経験があって、彼のリーダーシップも大事です。彼はあまり言わないんですけど、やっぱりそこをもっとステップアップしてほしい。もっとできると思います」
そして、比江島は指揮官の期待を肌で感じているからこそ、その期待に応えられなかったことを悔やんだ。「経験がある中で僕がしっかりゲームを作らなきゃいけなかった。サバイバルも始まっていて、その中で経験値を出していかなきゃいけないところに関しては、全然アピールできなかったです。ターンオーバーも多かったし、ワールドカップでしたようなミスを今日もしてしまった。中国戦は切り替えていきたいです」
日本の3ポイントシュート成功率は26.7%(12/45)と最後まで当たりが来なかったが、失点を56に抑えたようにディフェンスの強度は最後まで保たれた。それでも比江島は「調子が上がらない中でやるべきことを最低限やれたというか。そこしか収穫はなかったと思う」と、最後までネガティブな言葉が続いた。
この思わぬ苦戦を糧にできるか。それは中国との大一番の結果次第だ。格下相手でモチベーションを高めることは難しかったかもしれないが、中国戦ではワールドカップで見せたハイパフォーマンスに期待したい。