今村佳太

「パリ五輪に向けて一つひとつのチャンスをつかみにいかないといけないです」

バスケットボール男子日本代表は、ワールドカップ2023以降では初の公式戦となる、アジアカップ予選Window1で2月22日にグアム戦、25日に中国戦をそれぞれホームで行う。この2試合はパリ五輪に出場する12名のロスター枠を争う、競争のスタートを意味する。当然のようにワールドカップに出場したメンバーは選考争いで優位に立っており、今回の2試合でも主力として起用されていくのは確実だ。

ただ、トム・ホーバスヘッドコーチは、出場していない新戦力も試したい意向を示している。その中でも指揮官が、言及した1人が琉球ゴールデンキングスの今村佳太だ。昨シーズン、Bリーグ王者となった琉球のエースである今村だが、これまで日本代表にはほとんど縁がなく、ホーバス体制においても、ワールドカップ予選Window3となった2022年3月1日のオーストラリア戦、3日のチャイニーズ・タイペイ戦の2試合に出場したのみ。この2試合で3ポイントシュート9本中2本成功など、全く持ち味を発揮できずに終わると、その後はフル代表に招集されることはなかった。

「また、チャレンジできる機会をいただいてうれしいです。自分が特にBリーグで積み上げてきたモノは必ず代表に還元できると思います。パリ五輪に向けてどれだけアピールできるか、一つひとつのチャンスをつかみにいかないといけないです」

このように今村は、久しぶりの代表活動への意気込みを語る。そして、特に次の部分を強調していきたいと続ける。「ある程度、ディフェンスの部分はアピールできていると思います。オフェンスではこの2年間、自分が一番焦点を当ててきたのは周りを生かしながら得点することです。このクリエイトする部分はすごく成長できていて、そこは評価していただいていると思います」

前回、今村はシューター的な使われ方をしており、自身の得意とするハンドラーではプレーできなかった。しかし、今回に関しては、「今日の練習でもトムさんが『ボールをもらってハンドラーをしてね。ピックを使ってほしい、アタックをしてほしい』と言ってくださっています。それもあって余裕を持ってやれていると思います」と明かし、自身の持ち味を発揮できる状況でプレーできそうだ。

今村佳太

周りを巻き込むプレーを重視「自分のペースを崩さずにやりたいと思います」

冒頭で触れたように、ポジション争いにおいてワールドカップ出場組の序列が上なのは間違いない。22日、25日の試合で今村が出場機会を得たとしても、ベンチスタートで限られた時間でのプレーになる可能性は高く、今村も自身の立ち位置については「危機感を一番持っています」と語る。

「ワールドカップ組が結果を出したのは事実で、そこに割り込んでトムさんの信頼を得るのは難しいです。ただこの2試合でアピールできるので、自分がゲームを作る気持ちで臨みたいです」

琉球での今村はハンドラーとして、コートに出ている選手全員をオフェンスに巻き込むことを重視している。ただ、限られた出番であれば、自ら得点やアシストを挙げる方がインパクトを残しやすい。それでも今村は「ベースとしてそれ(周りを巻き込むこと)が自分の強みで、どれだけ自分の流れでプレーできるかが大事です。消極的になって何も見せられないのは一番良くないので、そこは気をつけながら自分のペースを崩さずにやりたいと思います」と、自分らしさを出すことを大切にする。

何故なら、それこそが序列を高める一番の近道だと信じているからだ。「自分の強みを出すことが差別化にも繋がります。それを見せていかないと12名には入れないです」

言うまでもなく、琉球の一員である今村にとって、ワールドカップ出場を逃したことは大きな後悔となり、パリへの思いをより強くする一因となっている。「沖縄でのワールドカップは琉球ゴールデンキングスに所属していた分、つかみ取れずにすごく悔しい思いをしました。自分としては、パリ五輪は誰よりも強い気持ちでやっていきたいです」

2年前とは違い、今村は攻守ともに高い次元でこなせるBリーグ屈指の2ウェイ選手の地位を確立した。そして今回は、持ち味であるハンドラーとしてプレーできる模様だ。自らの進化でより本領を発揮しやすい状況をつかみとった今村が、今回こそ日の丸を着て本来のプレーを見せてくれることを楽しみに待ちたい。