バディ・ヒールド

バイアウト市場で狙うのはラウリーだけではない?

セブンティシクサーズはトレードデッドラインで大きく動いた。開幕前に契約したばかりのベテランであるパトリック・ベバリーにマーカス・モリス、7年目と古株のフルカン・コルクマズにダニュエル・ハウスJr.の中堅、3年前の1巡目指名選手のジェイデン・スプリンガーと5人を放出し、ペイサーズからバディ・ヒールド、バックスからキャメロン・ペインを獲得した。

本来であれば、エースのジョエル・エンビードが膝の半月板を痛めて戦線離脱している今、その不在を埋めるセンターの補強が最優先となる。優れたシューターのヒールドは、エンビード不在の間の得点力を補い、ペインはベバリーに代わってタイリース・マクシーの2番手を務められるが、エンビードのゴール下での存在感を欠いた穴埋めがないまま、トレードデッドラインは過ぎ去ってしまった。

ヒールドは良い補強となるだろうが、問題は彼の契約が今シーズン限りで切れることで、そのために大きな対価を払う必要はなかったが、今シーズンに勝負に行くのだとすれば、エンビード不在の穴をそのままにしておくのは理解に苦しむ。そう考えると、シクサーズにはまだ『次の手』があると考えるのが普通だろう。

ロスターには3つの空きができ、サラリーも減らせたことで、バイアウト市場に打って出ることができる。貴重な戦力だったベバリーを躊躇なく放出できたのは、代わりとなる戦力獲得の目処が立っているからだと予想される。それはペインではなく、カイル・ラウリーだろう。

ラウリーはテリー・ロジアーを中心としたトレードの一部としてヒートからホーネッツへとトレードされたが、ホーネッツには合流していない。ホーネッツは新たなトレードを模索したのだろうがデッドラインまでに成立させらず、バイアウトに合意してフリーエージェントになるものと見られる。

37歳のラウリーは年齢による衰えは隠せないが、その経験と強烈なリーダーシップは優勝争いを演じるチームで役に立つ。レイカーズやマジックもラウリーに興味を示しているとされるが、ラウリーはフィラデルフィア出身であり、指揮官ニック・ナースとはラプターズ時代にともに優勝を勝ち取った仲だ。バイアウトが成立すれば、ラウリーはベテラン最低保証額での契約に応じると予想される。

そしてもう一つ考えられるのは、「6週間から8週間後に再検査」と発表されているエンビードの復帰について、明るい材料があるということだ。万が一にも彼が今シーズンを棒に振る、あるいはプレーオフには間に合っても十分なコンディションを取り戻せない可能性があるなら、トバイアス・ハリスにニコラス・バトゥーム、ケリー・ウーブレイJr.と今シーズン限りで契約満了を迎える主力を多数抱えるシクサーズは、来シーズン以降の準備へと方針を切り替える方が理にかなっている。

エンビードが健康を取り戻せば、シクサーズは再び優勝候補へと浮上する。エンビードが最も効果的にプレーできるのは、自分がプレーするための十分なスペースがあること。ヒールドは3ポイントシュートだけでなく、相手ディフェンスの意識を引き付けてエンビードのプレーを助けられる。そしてラウリーは、リーダーシップという点でシクサーズの大きな助けとなるはずだ。そして、ロスターにはまだ2枠の空きがある。優勝を目指すチームにとって、将来の2巡目指名権を集めることにさして意味はない。残り2つのロスター枠をどう活用するか、ダリル・モーリー球団社長にはすでにアイデアがあるはずだ。

シクサーズはエンビードが離脱したナゲッツ戦から、強行出場してケガを悪化させたウォリアーズ戦も含めて1勝7敗と失速。モー・バンバとポール・リードがエンビードに代わるセンターを務めているが結果に繋がっておらず、しばらくは我慢の時間が続く。