アメリカ代表

世界との実力差がなくなった今に相応しいチーム編成を

今夏に開催されるパリオリンピックに向けたアメリカ代表の候補41人が発表されました。レブロン・ジェームズやケビン・デュラント、カワイ・レナードなどビッグネームから、タイリース・ハリバートンやパオロ・バンケロといったライジングスターまで豪華な名前が並びました。ここから12人が選ばれ金メダルを目指すことになります。

ハンドラー
ドリュー・ホリデー、デリック・ホワイト(セルティックス)、ジェイレン・ブランソン(ニックス)、アレックス・カルーソ(ブルズ)、ドノバン・ミッチェル(キャバリアーズ)、タイリース・ハリバートン(ペイサーズ)、デイミアン・リラード(バックス)、トレイ・ヤング(ホークス)、タイラー・ヒーロー(ヒート)、ステフィン・カリー、クリス・ポール(ウォリアーズ)、ジェームズ・ハーデン(クリッパーズ)、オースティン・リーブス(レイカーズ)、デビン・ブッカー(サンズ)、ディアロン・フォックス(キングス)、カイリー・アービング(マーベリックス)

ウイング
ジェイレン・ブラウン、ジェイソン・テイタム(セルティックス)、ミケル・ブリッジズ、キャム・ジョンソン(ネッツ)、ジョシュ・ハート(ニックス)、スコッティー・バーンズ(ラプターズ)、ジミー・バトラー、ダンカン・ロビンソン(ヒート)、アンソニー・エドワーズ(ティンバーウルブズ)、ポール・ジョージ、カワイ・レナード(クリッパーズ)、レブロン・ジェームズ(レイカーズ)、ケビン・デュラント(サンズ)、デズモンド・ベイン(グリズリーズ)、ブランドン・イングラム(ペリカンズ)

ビッグ
ジョエル・エンビード(セブンティシクサーズ)、ジャレット・アレン(キャバリアーズ)、ボビー・ポーティス(バックス)、バム・アデバヨ(ヒート)、パオロ・バンケロ(マジック)、アーロン・ゴードン(ナゲッツ)、チェット・ホルムグレン(サンダー)、ウォーカー・ケスラー(ジャズ)、アンソニー・デイビス(レイカーズ)、ジャレン・ジャクソンJr.(グリズリーズ)

スティーブ・カー

スター選手を集めるも連携不足の『即興チーム』に

1992年のバルセロナオリンピックで『ドリームチーム』が結成されて以来、アメリカ代表は2004年のアテネ大会を除き、オリンピックの金メダルを獲得し続けてきました。圧倒的な強さを発揮している──と言いたいところですが、実際は接戦を強いられることも多く、苦しい戦いを制しての金メダル獲得となっています。

今シーズンのNBAではオールNBAファーストチームが「全員アメリカ以外の選手になるのでは」と予想されるほど、個人レベルではアメリカと世界の実力差はなくなっています。スーパースターを集められる選手層がアメリカ代表の強みではあるものの、代表チームよりもNBA優先の傾向が強いために継続的なチーム作りができず、ワールドカップとオリンピックのたびにスター選手を寄せ集めた『即興チーム』で大会に臨むことになり、勝つにせよ負けるにせよ連携不足を露呈しています。

NBAを頂点とするアメリカのバスケでは、個人レベルで競争を勝ち上がっていきますが、クラブレベルでの育成をする世界のバスケでは、どの選手も若いうちからポジション毎の役割を植え付けられ、代表チームでもチーム戦術がしっかりと構築されます。NBAでプレーするスター選手も、代表チームに行けばそのバスケを学び、遂行することが求められ、準備期間が十分ではなくても一定の成果を出してきます。またスーパースターの寄せ集めであるアメリカ代表は、連携だけでなくオフボールでの貢献やハードワークなどが他国に比べて足りない要素になりがちです。

昨年のワールドカップでのアメリカ代表はディフェンスに問題を抱えていました。NBAでスター選手と見なされるのは得点力のあるガードでありフォワードですが、アメリカ代表で結果を出すにはオフェンスに能力が偏るのではなく、攻守両面で優れた選手を選ぶ必要があるでしょう。チームディフェンスをどこまで機能させられるかは未知数でも、選手それぞれのディフェンスの意識が高ければ、ある程度の計算は立ちます。

また、ルールやファウルコールの違いもあり、国際試合ではビッグマンの重要性が高くなるため、スモールラインナップが多用されるNBAから戦い方を調整する必要もあります。その点ではビッグマンを多く招集するだけでなく、多様な戦術にアジャストできるタイプの選手を選ぶ、あるいは育てる必要があります。

トーナメントでは1試合でも負けたら金メダルを逃すことになり、金メダル以外は大失敗となるアメリカ代表にはミスの許されない戦いが続きます。「10回戦えば9回はアメリカ代表が勝つ」という力関係でも、残りの1回を出さないための戦いをする必要があり、それはNBAチャンピオンを目指す戦いとは似て非なるものとなります。

短い準備期間で普段とは異なるチームメートと連携を深めるには、経験値の高いベテランや複数のポジションをこなせる戦術理解力の高い選手が向いているはずです。ただ、それが分かっていながら『NBAにおけるスターパワー』を優先する選手選考を行ってきたのも確かで、今回の候補に挙がった41名はそれぞれ優れた能力の持ち主ですが、どんなスタイルを志向し、誰を中心とし、誰にどういう形でサポートさせるのか、そこは難しい判断になるでしょう。