湧川裕斗

「第一のマークをはがせなかった」

福岡大学附属大濠の2年生シューター湧川裕斗は、ウインターカップ決勝で福岡第一の激しいディフェンスに屈した。ウインターカップ初戦で35得点と爆発したものの、勝ち上がるごとにマークは厳しくなり、決勝では7得点。前半はわずか2得点に封じ込まれ、53-63で敗れた責任を噛みしめた。

序盤から福岡第一のボールを持たせまいというディナイディフェンスに手を焼き、時間がたつにつれて表情が曇っていった。第2クォーター終了間際、湧川の放った3ポイントシュートはエアボールとなった。「先生としっかり目を合わせて、表情をよくしてやっていけと言われて、切り替えようとしました。マークをはがせなくて、ボールをもらえなくて。技術がまだまだでした」

第4クォーターは残り5分39秒をベンチで見守った。湧川は悔しさをにじませた。「大事な試合の後半の場面で、集中力が出せなかったです。来年は1試合通して点を決め続けられるようになりたい」

福岡大濠のエースガードを表す13番を背負う湧川は、3年生を勝たせられずに涙し、ライバルが歓喜を味わう姿を目に焼き付けた。『13』は2学年上の兄、湧川颯斗(滋賀レイクス)から受け継いだ。兄は2年時の2021年大会でエースナンバー『14』を背負い、日本一に貢献。連覇を狙った前回大会はポイントガードとして臨み、準々決勝の藤枝明誠戦で敗れて悔し涙を流した。まだ1年生だった湧川も先発メンバーに名を連ねていたが、4分余りの出場に留まった。

「シュートがうまく、ターンオーバーが少ない」と片峯聡太コーチが入学当初から評価する逸材。点が取れるポイントガードとして迎えた今年は思うように役割が果たせずに苦しんだ。渡邊伶音の長期離脱を踏まえ、6月から持ち味のシュート力を生かそうとシューターに転向した。シューティング練習では平日は400本成功、休みの日には1000本成功のノルマを課した。その場でのキャッチアンドシュートからバリエーションを増やし、ワンフェイクを入れたり、ワンドリブルしたりと動きをつけてのシュートを増やした。福岡第一のプレッシャーをかわすためだった。一方で、1年生ポイントガードの榎木璃旺が落ち着いてプレーしやすいようにコミュニケーションを取った。

11月の福岡県予選では得点が伸びず6得点。ただ、片峯コーチはこの試合を高く評価した。「彼のシュートが入らなくてもコートに立ち続ける理由を、コーチが言えるようにしないとチームメートに悪影響が出てしまうんです。今回はディフェンスを頑張ってくれた」と理由を説明した。

福島東陵との2回戦では20本中9本の3ポイントシュートを決めて35得点を。得点は試合を重ねるごとに減っていったものの、準々決勝の美濃加茂戦は13得点に加え1スティール1ブロックを記録した。「雰囲気が良い時にはチームに声を掛けることができました。プレータイムが増えていった榎木のサポートができたのは成長した部分です」と振り返る。

決勝の試合終了のブザーが鳴って、応援スタンドにいた3年生からねぎらわれると悔しさが一層こみ上げた。「大会期間中のシュートが入らない時に宿舎にいる時間でも、『行けるぞ、行けるぞ』と励ましてくださいました。でも最後にその期待に応えられなかったです」

全国屈指のシューターは最終学年を迎え、新チームの主将を任された。「流れが悪い時間帯にも声を掛けられるようにならないといけない。この悔しさを来年のインターハイや日清食品トップリーグ、ウインターカップで果たせるように、チーム一丸で頑張りたい」

男子ではまだ達成したチームのない『新3冠』を達成するには、新キャプテンの精神面の成長は不可欠。相棒のビッグマン渡邊、やはりエースとしてさらなる成長を誓う髙田将吾との『ビッグスリー』は逆襲を誓う。