トバイアス・ハリスをきっかけにラプターズを攻略
セブンティシクサーズは現地12月22日のラプターズ戦を121-111で制しました。ここ10試合での平均得点が40超えと絶好調のジョエル・エンビードへの対策がハマったラプターズが序盤に15点ものリードを奪いましたが、シクサーズは見事なアジャストで前半のうちに逆転し、最後は危なげなく勝利しました。それはヘッドコーチのニック・ナースがもたらした今シーズンの新生シクサーズの姿でもあります。
ラプターズのゲームプランはエンビードに3ポイントライン近辺では自由にボールを持たせ、ドライブを狙ってきたら複数人で止めにいき、ミスを誘ってのカウンターアタックでした。フィニッシュ力はあっても判断能力には課題のあるビッグマンに対する王道の対処ですが、加えてファウルドローされないようプレッシャーはかけてもブロックを狙いすぎず、細心の注意を払ったマンマークも効果的でした。
第1クォーターで12分フル出場したエンビードですが、4本打ったフィールドゴールは1本しか成功せず、フリースローも獲得できず。これに対してターンオーバーは4つを記録し、ラプターズは速攻だけで点を奪いました。エンビード対策のゲームプランが完璧に機能しただけでなく、自分たちのオフェンスでもドライブに対するカットプレーの合わせで鮮やかに得点を積み上げ、試合を完全に支配していました。
しかし、ここからシクサーズは警戒の薄いトバイアス・ハリスから攻略を始めます。パスを受けた瞬間のマークが緩かったハリスは3ポイントシュートを9本中5本を決めると、さらにゴール下へのカットプレーでディフェンスを混乱させていきます。前半だけで24得点、試合トータルで33得点7アシストと、エースが止められた試合の流れを変える働きでした。
守ってもドライブに対して複数人で止めに行く1-3-1のゾーンや、ハンドラーへ早めのダブルチームでパスを促し、ラプターズがやりたいことを優先的に止める工夫を見せます。3ポイントシュート成功率がリーグ27位とアウトサイドに課題があるラプターズの弱点を露わにしていくと、後半はほぼ何もさせずに試合を終わらせています。
オフェンスに変化をつけてラプターズの狙いをかわし、ディフェンスでは相手の強みを消していく。自分たちの強みを出すことだけを考えていた昨シーズンまでのシクサーズとは対照的に、今シーズンは試合中の見事なアジャストが武器となっています。結果的にはエンビードもマークが緩くなった後半に得点を重ね、30得点以上かつ10リバウンド以上の連続試合を12に伸ばしています。
逆にラプターズから見ればゲームプランは機能したものの、オフェンスのバリエーション不足が目立ちました。サイズとスピードを持ち合わせ、ドライブ能力が高い選手は揃っているため、形にハマると強さを発揮しますが、アウトサイドシュートやディフェンスの逆を取るイマジネーションに優れた選手がいないことでワンパターンに陥りがちです。巧みな変化をつけたシクサーズと、打開する方法が見つけられなかったラプターズという対照的な両チームの試合でした。