文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

チーム合流から間もない状況でのデビュー、今後の向上に期待

中断期間が明けてのリーグ再開以降、『特別指定選手制度』を活用した学生プレーヤーの入団が相次いでいる。学生プレーヤーにとっては主だった公式戦がない今が、制度を使うにはベストの時期。リーグ中断期間にチームに加わって練習していた選手たちが、公式戦に出場し始めた。

レバンガ北海道では地元の札幌大4年生の田原隆德がデビューを果たした。年末の試合からベンチに入っていた田原は、1月21日の滋賀レイクスターズ戦の第2クォーター終盤にコートに立った。ファーストプレーで相手のハンドリングミスを逃さずスティールを決め、味方のジャンプショットのタイミングに合わせてゴール下に飛び込みオフェンスリバウンドを狙うなど、攻守に思い切りの良いプレーを披露。スクリーンを使ってマークを引きはがし、ドライブレイアップに持ち込んで自ら得点機会を作り出すも、ブロックショットを浴び得点は奪えなかった(翌日の第2戦にはフリースローで初得点を記録している)。

デビュー戦を終えて田原は「自分にできるディフェンスとリバウンドを思いっきりやろうと臨みました。プロデビュー戦はとても緊張しましたが、練習してきたことを信じて100%自分の力出せるように心がけました。今後はプロ契約とリーグ優勝が目標です」とのコメントを残している。

北海道vs滋賀の第1戦では、試合終了間際に滋賀が高橋耕陽(日本大4年生)をコートに送り出し、田原と高橋の特別指定選手2人が同時にコートに立った。札幌出身の高橋は北海道を相手に、ブレイクから走ってフリーのレイアップを沈めてプロ初得点を挙げている。地元でのゲームとあって「友人が見に行くと言ってくれていました」と言う高橋は「レイアップだったので、次は外からのシュートを決められるように頑張りたいです」と語る。高橋はリーグ再開の1月18日から、短いプレータイムとはいえ3試合連続で出場機会を得ている。

『貴重な経験』では済まない、プロ契約を勝ち取るための戦い

大学王者の筑波大の3年生エース、杉浦佑成はサンロッカーズ渋谷に入団し、1月18日の川崎ブレイブサンダース戦でデビュー。22日の仙台89ERS戦にも出場した。王者川崎相手にはインパクトを残せず、仙台89ERS戦ではプレータイムが30秒足らずと本領発揮はこれから。来週には日本代表の強化合宿にも招集されており、新たな環境でのステップアップが期待される。

B2に目を向けると、さらに多くの特別指定選手が活躍している。特に目立つのは青森ワッツだ。八戸学院大4年生の野里惇貴は昨年12月24日のアースフレンズ東京Zとの試合でデビューし、25分の出場で3ポイントシュート3本を含む11得点と活躍。以後6試合すべてでプレータイムを得ている。中断期間には明治大4年の會田圭佑も入団。會田は先週末の信州ブレイブウォリアーズとの2試合に出場、1月21日のデビュー戦では25分出場10得点と結果を残した。

学生プレーヤーの活躍は頼もしい限り。しかし、特別指定選手制度は3カ月という期限での契約でしかない。特に大学卒業を控えた選手は、本契約を勝ち取らなければ本当の意味での『プロ』にはなれない。B1もB2もクラブの選手登録人数は10名から13名と定められているため、誰かを蹴落とさなければ契約を勝ち取れない。そんな厳しい競争が当たり前に発生する。

選手にとっては酷な話かもしれないが、厳しい競争が全体のレベルアップにつながる。若い世代の活躍に、現役世代の選手たちが刺激されることもあるだろう。見る側としては競争は歓迎すべきこと。学生プレーヤーがプロの世界で切磋琢磨して、全体のレベルを底上げしてくれるのなら、日本のバスケットボール界にとってはまさに理想的な状況、『特別指定選手制度』が狙い通りに機能したと言える。これからしばらく、『特別指定選手』のパフォーマンスに注目したい。