桶谷HC「マックはキングスがずっと勝っていくために必要な部分を知っています」

琉球ゴールデンキングスは、週末に行われた島根スサノオマジックとのホームゲームで2試合ともに最後までもつれる激闘に勝利。西地区のライバル相手に価値ある同一カード連勝を達成し、11勝3敗でブレイクを迎える。

ここまでの琉球を振り返ると、大黒柱ジャック・クーリーがインジュアリーリスト入りした状態でシーズン開幕を迎え、クーリーかの復帰と入れ替わりでウィック・ローがリスト入り。夏の日本代表活動中に負傷しまだ出場がない渡邊飛勇も含め、インサイド陣のやりくりに苦しんでいた。さらにEASL(東アジアスーパーリーグ)に参加することで、週3日での試合が続く過密スケジュールを考慮すれば、申し分のない出だしだったと評価できる。

このスタートダッシュは、各選手たちの奮闘に加え、コーチングスタッフの見事なサポートがあってこそだ。島根との2試合目終了後、桶谷大ヘッドコーチは「スカウティングチームは本当に優秀です」と、限られた時間の中でもしっかりした対戦相手への準備ができていることが大きいと強調する。

コーチ陣においては、アンソニー・マクヘンリー新アシスタントコーチが、これまでのチームになかった視点をもたらしていることも大きい。

2008年に琉球に加入したマクヘンリーは、Bリーグ初年度まで9シーズンにわたって琉球に在籍。bjリーグで4度の優勝に貢献すると共に、ハードワークとチームファーストを根幹とし、今も継承されている琉球のチーム文化の構築に尽力したレジェンドだ。琉球を離れた後は2017-18シーズンから昨シーズンまで5年間、信州ブレイブウォリアーズに在籍し、B1昇格を含め大きな功績を残した。

今オフに入って引退発表した彼が、セカンドキャリアのスタートに選んだのは古巣・琉球のアシスタントコーチ就任だった。まだ、コーチ1年目だが、現役時代から卓越したバスケットボールIQを持ち、若手の指南役としても優秀だったマクヘンリーは早速チームに大きな影響を与えている。

「いる、いないでは全然違います」と桶谷ヘッドコーチは、マクヘンリーを称える。「マックが入ってくれて、すごくバランスが取れています。キングスはスカウティングチームがかなり優秀で、良いものを出してくれる反面、これまで選手目線で見られるコーチがいませんでした。今はマックがいるので、『こういう部分が選手として難しい』と助言をくれる。僕にしても『これはどう? 』と聞きやすいです。選手とのズレをなくしてくれる立役者になってくれています」

「あと『ハードワークをしなさい』とみんな言いますが、彼はどこでハードワークをしなければいけないか、キングスがずっと勝っていくために必要な部分を知っています。そのことを外国籍を含めて、みんなに伝えられるのはプラスです」

クーリー「マック抜きにキングスの歴史を語ることはできないです」

指揮官が言及したように、これまで琉球にはトップリーグでプレー経験のある元選手出身のコーチがいなかった。ただ、これは当然のように元選手なら誰でもいいという訳ではない。琉球の培ってきた文化を深く理解し、指揮官と信頼関係のある元選手のコーチが求められていた。現役時代、桶谷ヘッドコーチの下でプレーした経験もあるマクヘンリーは、上記の条件を最も満たすことのできる人物であり、彼が元選手として初のコーチになったのは必然だった。

選手として琉球での最後の在籍年は2016-17シーズンとかなり前だが、それでもマクヘンリーが琉球の歴史においてどれだけ大事な人物かは、外国籍も含めて全員が理解している。

ジャック・クーリーは語る。「マックがキングスでどんな存在だったかは前から知っていました。マックは沖縄を今の強豪の地位に引き上げた人物で、彼が今のチームの礎を築きました。マック抜きにキングスの歴史を語ることはできないです」

そして、クーリーは次のように厚い信頼を強調する。「沖縄のレジェンドであるマックがいてくれてラッキーです。彼は頭がよく、バスケットボールについて本当によく知っています。僕の質問について、知識が豊富で色々なアドバイスをくれます。僕の復帰に向けて、彼の存在は大きな助けとなりました」

また、マクヘンリーの卓越した指導力は、細かい部分にも及んでいる。島根との初戦、琉球は終了間際にアレン・ダーラムからのパスを受けた岸本隆一が決勝弾となる3ポイントシュートを決めて競り勝った。桶谷ヘッドコーチは「ダーラムが(岸本をマークしていた)津山選手に対してバンプを入れてスペースをとってパスをする。このプレーはずっとマックが教えていて、『やっとやってくれた』と言っていました」と試合後に明かしていた。

コート上で躍動した現役時代のようなはっきりと目に見える形での貢献はない。ただ、マクヘンリーがコーチとしても琉球にとって欠かせない才能の持ち主であることは早くも証明された。琉球がこれからも強豪であり続けるために何よりも大切なチームカルチャー、 伝統を紡いでいく担い手として、マクヘンリーコーチの存在感はより高まっていく。

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