八村塁

世界で勝負できても不思議ではないという、無関心が故の短絡的な考え

「僕もすごいうれしくて、もうずっと家で叫んでいました」

夏の国際大会で日本代表がパリ行きを決めた試合を、レイカーズの八村塁は自宅で見届けていたという。試合後には渡邊雄太(サンズ)、馬場雄大(長崎ヴェルカ)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)に連絡したことを明かしている。

「自力で出場権を獲れたのはすごいこと。すごくうれしかった。その3人や比江島(慎)さん、ほかの若い子たちもやってくれた。そうしたこれまでの積み重ねがあっての勝利だったと思う」

このメンバーに八村が加わるとなれば、彼の活躍を知る人であれば期待が膨らむばかりだろう。一方、昨夏の参加見送りについて「サッカーじゃ考えられない」などと一部で批判が起き、パリへの出場意欲について報じられれば今度は「都合よすぎ」という声が上がった。アスリートに批判は付き物だから、そういった声がSNSなどで聞こえること自体は自然である。不自然なのは、八村に対する有象無象の批判がわざわざネット記事になることだ。

世界大会後のトム・ホーバスHCが八村について触れたコメントも、あえて曲解させようとするかのような見出しがつけられた結果、八村不要論として世に拡散され、後にホーバスHCがわざわざ火消しのコメントを出す事態になった。 ネット記事はクリック数が目当てである。裏を返せば八村についてのネガティブな記事に対する反響は大きいのだと知れる。

八村と他のアスリートを分けるもの。それは民族的なバックグラウンドだ。私は八村と面識はないが、これまでの発言を振り返る限りごく普通の青年に見える。少なくとも往年のイチローや本田圭佑のような灰汁の強いタイプとは思えない。取材を拒否したという話は聞いても、記者に食ってかかったというような話は寡聞にして知らない。おそらく八村がミックスでなければクリック数目当てにネガティブな記事を書かれることはなかっただろう。2023年現在の日本は、未だミックスに対して好奇の眼差しを向ける人が多い。八村関連の記事から、私はそう推察している。

八村が2019年にドラフト9位でウィザーズに指名された時は地上波でも大きく取り上げられた。その後もオールルーキー2ndチーム選出、平均2桁得点、プレーオフ出場と、八村は日本人選手初の快挙を次々と成し遂げていくことになるが、その始まりとなったのがあのドラフトだ。

八村塁

『ホーバス・ジャパン』からバスケに興味を持ち出した層にとって、八村は未知の存在

私がバスケメディアをやっているということで、あの当時は普段バスケに関心がない知人からも八村の話題を振られることが多かった。その際に複数人から、「でも八村は半分向こうの血が入っているからね」と言われて驚いたのを覚えている。彼らはDMでヘイトメッセージを送りつける類の人間ではない。決して差別主義者ではないものの、昔ながらの偏見に目を覆われている。アフリカ人はアジア人より身体能力が高い。ミックスも同様だ。だから世界で勝負できても不思議ではない。無関心が故にこう短絡的に考えているのだ。

アフリカ人とアジア人のミックスはアジア人より平均的に身体能力が高い。これは間違いではないだろう。おそらく統計もある。しかし、だからNBAに行けて当たり前だと論じるのは考えが飛躍し過ぎている。あの時私が思ったのは、実際にNBAを観たことがある人ならこうした論理の破綻は絶対に起こさないだろう、ということだ。NBAに集まってくるあらゆる国、あらゆる人種のトップ選手たちがとんでもないレベルで競い合う姿を観れば、アフリカ人とアジア人のミックスはアジア人より平均的に身体能力が高いという統計がバスケを語る上でいかにちっぽけな要素か直感的に理解できるのに……。

あれから4年が経ち、今再びバスケットボールが世間の耳目を集めている。先日の世界大会における日本代表の活躍のおかげだ。Bリーグのチケットも売り切れが続出していると聞く。来年のパリで行われる世界大会までは代表選手のメディア露出も続くはずだから、Bリーグにとってはそれまでにいかに固定客を作るかが勝負だ。

BリーグだけでなくNBAに手を出そうか悩んでいるという新規のバスケファンも多いだろう。なにせ渡邊雄太の「パリに行けなければ代表引退」という宣言はあの大会を彩るストーリーラインの一つとなったからだ。その渡邊が優勝候補の一角であるサンズに加入した。日本人初のNBA優勝も夢ではない。

そして八村塁である。八村は2021年に日本で開催した世界大会を最後に代表戦には出場していない。つまりホーバスHCの下では一度もプレーしていないということになる。参加不参加にいちいち過剰な批判が出たり、八村不要論がまことしやかに拡散された背景には、こうした事情もある。逆に言えば、『ホーバス・ジャパン』からバスケに興味を持ち出した層にとって、八村は未知の存在に近いはずだ。来年のパリで行われる世界大会に不可欠だと言われる八村が一体どれほどの選手なのか気になるという方も多いだろう。

日本代表から離れていた2年間、実は八村のキャリアには逆風が吹いていた。2021年の母国開催の世界大会で日本代表は思ったような結果を残せず、例によって八村が批判の槍玉に挙げられた。その心労からメンタル面のコンディションを崩し、2021-22シーズンは開幕から39試合を欠場することになった。その欠場以来八村のチームにおける序列は下がり、活躍してもスタートで使われない日々が続くことになる。

八村塁

八村のすごさが正当に評価される、価値ある新シーズンへ

そんな八村のキャリアに転機が訪れたのは、今年1月23日のレイカーズへのトレードだ。レギュラーシーズン後半でチームの信頼を勝ち取った八村はポストシーズンで大活躍し、このオフに見事再契約を勝ち取った。

僥倖だな、と私は思う。先の世界大会で大勢のバスケットボールファンが生まれた。八村について多くを知らない彼らが真っさらな気持ちでNBAを観れば、ミックスだから活躍できるというような簡単な世界でないことはすぐにわかるだろう。そして彼ら新規層を含むNBAファンは今季、世界最高峰のタフなリーグで躍動する八村の姿を目撃することになる。なにせ年齢、モチベーション、契約額、チームの状況、オフに励んだレブロン・ジェームズとのトレーニングなどなど、今季の八村がキャリアハイのパフォーマンスを見せる予兆がそこら中に転がっているのだ。

久方ぶりのバスケットボールブームと八村塁のキャリア再生のタイミングが重なったのは僥倖で、これを機に八村塁のすごさが正当に評価され、ミックスへの偏見が減り、この世から差別が無くなり……いや、そこまではいかないまでも、その端緒となるならばそれだけでも価値のある一年になるだろう。

さて、八村の活躍を見守るべくNBA視聴を開始したいという方々にお知らせだ。今シーズンから楽天モバイル「Rakuten最強プラン」の契約者は無料でNBA Rakutenを視聴できるようになった。通常のLEAGUE PASSは月額4,500円なので、乗り換えればかなりお得にNBAを楽しめる。乗り換えが面倒という方には、デュアルSIMのプランが有用だ。SIMを買い足すだけなら番号が変わるという手間もない。データ使い放題で月額2,980円、3GBまでの使用までなら980円という価格設定になっていて、それぞれの生活スタイルに合わせて選択できる幅が広いのも魅力的だ。ちなみに私はデュアルSIMの契約を検討している。NBA観戦を楽しみつつ、楽天モバイルの使い勝手次第ではメインに切り替えるつもりだ。

先に渡邊の所属するサンズが優勝候補の一角だと書いたが、八村がプレーするレイカーズも昨季4強まで残った素晴らしいチームである。大舞台に強い八村が優勝に貢献し、「バスケはすっごい、すっごい楽しいです」と言った、あの日(ウインターカップ3連覇達成)の笑顔を取り戻す。そんなシーンが見られることを期待しつつ、是非一緒にNBAを楽しみましょう。

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