松脇圭志

桶谷HC「オフェンスの終わり方が改善されたことで、自分たちのやりたいディフェンスができました」

10月22日、琉球ゴールデンキングスが横浜ビー・コルセアーズと対戦。粘り強いインサイドアタックに効果的なキックアウトなど、バランスの良いオフェンスで得点を重ねた琉球が88-70で圧勝した。66-89で大敗した前日のリベンジを果たし、戦績を5勝1敗としている。

琉球は立ち上がりからアレン・ダーラム、アレックス・カークを軸にフィジカルの優位を生かして、インサイドアタックから高確率でシュートを決める。また、守っても激しくプレッシャーをかけ、横浜BCのペイントタッチを簡単に許さない。その結果、相手に外からの単発なシュート打たせることで成功率を抑え、ディフェンスリバウンドからのトランジションに持ち込んでイージーシュートを次々と決めていった。こうして攻守で自分たちのやりたいプレーを遂行した琉球は第1クォーターで27-15とビッグクォーターを作り出す。

このまま流れをキープし2桁リードを保って前半を終えた琉球は、後半に入っても危なげない試合運びを見せる。河村勇輝、ジェロード・ユトフを中心に横浜BCがトランジションから連続得点の時間帯を作るが、琉球はダーラムのバスケット・カウント、松脇圭志の3ポイントシュートなどで主導権を渡さない。先制パンチから危なげない展開で楽々と逃げ切った。

この試合、琉球はヴィック・ロー、田代直希の2人が故障で欠場したこともあり、先発メンバーが前日から大きく変わった。今村佳太、小野寺祥太、ダーラムが新たに先発に名を連ね、岸本隆一、アレックス・カークの5人を選択した。桶谷大ヘッドコーチは、この変更がうまくハマってくれたと振り返る。

「試合に出られるメンバーがしっかりステップアップしてくれました。(先発の変更について)昨日は小野寺が出ている意味がないような使い方をしてしまいました。今日は河村君のマークにつけて仕事をさせないようにする。それが一番ハマったのかと思います。また、ローがいないことでハンドラーが欲しかったので、今村を(今シーズン初めて)先発に戻しました。(岸本、小野寺、今村の)3人は昨シーズンの先発メンバーで、阿吽の呼吸から良いスペーシングから粘り強くエクストラパスも出すなど、オフェンスをよく繋いでくれました。オフェンスの終わり方がかなり改善されたことで、自分たちのやりたいディフェンスができました」

また、ローの不在によってダーラムが5番ではなく、4番ポシションでのプレーが増えたことで「マッチアップの関係でゴール下にアタックしやすくなりました」と語った。「昨日はインサイドのミスマッチがあまりなかったです。今日はダーラムを4番で使うことにより、フィジカルのミスマッチが起こりました。そこでポストにどんどんボールを預けようという話をしていました」

松脇圭志

6試合中4試合で2桁得点の松脇「シュートへの意識は増していると思います」

ケガの功名といった形で先発変更が機能した琉球だが、立ち上がりでつかんだ流れをずっとキープできたのはベンチメンバーの貢献があったからこそ。特に松脇は3ポイントシュート3本成功を含む11得点を記録し、セカンドユニット牽引した。

「相手の3ポイントシュートとトランジションを止められたことが勝因だったと思います」と言う松脇は、自身のプレーについて次のように語る。「昨日はシュートが入らなかったですが、空いたら打つ気持ちはずっと持ち続けています。今日は良いタイミングで決めることができてよかったです」

今回の試合で、松脇は開幕6試合で4度目の2桁得点を記録。得点が伸びている背景には、キャッチ&シュート以外にもプルアップやステップバックなど、動きが多彩になっていることが大きく、「オフに僕に足りない部分を教えてもらって、それを試合で出せています。オフシーズンのスキル練習がすごく生かせていると思います」と松脇は見ている。そして、メンタル面の変化についてこう続けた。

「開幕節、(アジア競技会に出場していた)佳太さんがいなかったです。そこでウイングのところで自分で点を取る気持ちでプレーし、それが今でも続いている感じです。また、桶さんには去年に続いて今年も『どんどんシュートを打っていいよ』と言われています。それもあって打ちやすくなっていますし、シュートへの意識は増していると思います」

本人もディフェンスファーストを強調しているが、松脇はフィジカルの強さを生かしたディフェンスで存在感を高めてきた。ただ、本人が思う以上に非凡なオフェンス面の信頼感も高まっており、だからこそ指揮官も「もっとシュートを打ってほしい」と言っている。

それでも、松脇本人は謙虚な姿勢を崩さない。「シュートが入っている時は『もっとボールを欲しい』というマインドにもなります。ただ、そこで『自分勝手にやるのは違う』と一歩立ち止まって考えるところはあります。みんなの良いところを出し合って勝つのが自分たちのバスケです。あまり自分のエゴを出したいとは思わないです」

ちなみに学生時代の松脇は1学年下の杉本天昇(ファイティングイーグルス名古屋)と一緒に、土浦日大高校、日本大学で世代屈指の点取り屋コンビを形成し、全国有数の成績を残してきた。本人は学生時代について「あの時は何も考えていなかったです(笑)。あれでよかったらできますけど、今はちゃんと考えてプレーしています」と、自由奔放にやりすぎていたと考えている。

ただ、今の松脇はプロでいろいろな経験を積み、指揮官も「精神的にブレない、常に冷静でプレーしてくれる。あの歳(26歳)で、あそこに辿りついているのはすごいと思います」と称える成熟さを有している。

松脇がエゴを出して得点を取りに行っても、それはチームオフェンスを重視した上でのプレーで、チームの和を乱すことはないと周りは信頼している。琉球のプラス要素として、よりアグレッシブに得点を狙いに行く松脇の姿をみんなが求めている。