セルティックスで結果を残すもトレード要員に
マルコム・ブログドンは『NBAのビジネス』に振り回された。ペイサーズの正ポイントガードだったブログドンは昨夏、セルティックスへの移籍に際してシックスマン起用を受け入れている。その前のシーズンにNBAファイナルに進出したセルティックスにはマーカス・スマートがいたものの、個人の打開力に優れて点の取れるポイントガードを欠いており、ブログドンは『優勝のためのラストピース』と期待されていた。彼自身も優勝争いのできるチームへの移籍を大いに喜び、気合いが入っていた。
昨シーズンの彼は高い期待に応えるプレーをして、最優秀シックスマン賞を受賞した。それでもプレーオフで負ったケガが長引くと分かると、セルティックスは彼をトレード要員とした。生え抜きであれば名誉の負傷として扱われるところが、移籍組は時に不当な評価を受ける。クリスタプス・ポルジンギス獲得のためのトレードは流れたが、ドリュー・ホリデー獲得に絡む3チーム間トレードでトレイルブレイザーズに送られた。
ペイサーズはまだプレーオフを狙う力があったが、ブレイザーズはデイミアン・リラードを放出した完全なる再建チーム。昨年にステップアップを果たし、良いパフォーマンスを見せたにもかかわらず、この状況へと落とされるのは理不尽でしかない。高いレベルでプレーしたい彼の気持ちを分かっているからこそ、移籍が決まった時点で「ブログドンはまたトレードされる」との噂だった。ただでさえブレイザーズはスクート・ヘンダーソンとアンファニー・サイモンズ、シェンドン・シャープと若手ガードを抱えており、リラードを放出していたのだ。
しかし、そんな噂に反してブログドンはやる気に満ちている。ケガの影響でやや出遅れ、プレシーズンゲームでは短い時間の『試運転』のみに留まっているが、「フロントもヘッドコーチも僕がこのまま残ることを望んでいるし、僕もそのつもりだ。多くの人が僕をトレードすべきだとか、僕が移籍を望んでいるとか誤解を招くようなことを言っているけど、それは正しくない」と彼は言う。
「僕にはNBAで7年のキャリアがあり、優勝争いをするチームでのプレーを経験し、若いスター選手が成長する場に立ち会ってもきた。このチームには才能ある若手が多く、しっかりした手腕を持つコーチもいる。僕としては、ベテランとしてリーダーシップを発揮すべき機会に恵まれたと思っている。ここに来たことは僕にとって大きなチャンスだ。それを最大限に生かしたいと本心から思っているよ」
ヘッドコーチのチャウンシー・ビラップスは、若手たちの才能を信じ、バスケに取り組む姿勢こそ称賛しているものの、コミュニケーションにもっと積極的になり、コート内外で声を出すべきだと言う。ところが実際は「ロッカールームでは下を向いてスマホに夢中だ」と、今どきの若者のスタイルに頭を悩ませてもいる。
そんなブレイザーズでリーダーシップを発揮し、チームが秘めたポテンシャルを引き出すのがブログドンの役割だ。「ケミストリーを作り、継続性のあるチームにする。特にディフェンス面でそうあるべきだ」とブログドンは言う。「若い選手たちは得点力も爆発力もあって、オフェンスは任せておいても大丈夫だろうけど、チームとしていかにまとまってディフェンスできるかが、このチームの大事なポイントになる」
『リラード時代』が終わったブレイザーズには誰も注目していないが、ブログドンはその将来性を信じている。「多くの人が僕らのことをリーグ最弱と見ているけど、僕はそうは思わない。若くて才能のあるチームで、欠けているのは経験だけ。若手が成長するのに必要な経験を提供するのがここでの僕の仕事になる。責任を持って、大いに張り切ってその仕事に取り組んでいるよ」