ジョーダン・プール

「お互いに学び、一緒に成長していかなきゃいけない」

ウィザーズは21人の選手でトレーニングキャンプをスタートさせた。その半数は昨シーズンにはチームにいなかった選手だ。ブラッドリー・ビールの時代に終止符を打ち、スーパースターは不在でも、そうなる可能性を秘めた若い選手とともに再出発した。

ビールの退団は、今のところチームの士気を落としてはいない。メディアやファンの期待値は低くなったが、選手たちは新たな挑戦に心を躍らせ、新生ウィザーズを自分が引っ張るという意欲を持っている。

ヘッドコーチのウェス・アンセルドJr.は、新たなチームのリーダーを指名するのではなく、自然発生的に生まれるのを待っているが、選手それぞれのモチベーションの高さを頼もしく感じている。

ウォリアーズから移籍してきたジョーダン・プールも、その意欲を隠そうとはしない。「良いコアメンバーがいて、良いベテランもいる。才能のあるチームに来ることができてうれしい。これまで学んできたことを新しいチームで生かしていくつもりだ」と彼は言う。

負け続けてきたウィザーズとの選手とは違う経験をしてきた、という思いがプールにはある。それで驕るのではなく、他のチームメートが知らないことを知ることで、自分がチームの向上を助けられると感じている。

「僕らは若いチームだから、お互いに学び、一緒に成長していかなきゃいけない。プレッシャーのかかる状況でどう振る舞うべきか、試合を決めること、試合やシリーズのために犠牲を払うことがどんなものか、それを僕は経験してきた。そのレベルでプレーしたいと思っている選手に、自分の知識を共有できると思う」

一方で、過去との決別は明確にするつもりだ。ウォリアーズを離れるきっかけとなったのは、練習中にドレイモンド・グリーンに殴られた1年前のアクシデントだ。彼はこれまで取材のたびに、言葉を選びながらもこの件について率直な気持ちを語ってきたが、今後はそれをしないと言う。「今となっては遠い昔の出来事だし、昨シーズンを通じて繰り返し話してきた。質問するのは構わないけど、多分まともには答えないよ」

バスケに詳しくない人にとって、ジョーダン・プールと言えば『スター選手に生意気な口を利いて殴られた若手』であり、彼のプレーヤーとしての能力や人間性については何も知らないし、興味もない。そのレベルの会話に彼はもう付き合うつもりがないのだ。

新たな仲間たちも、そんな彼を支持している。プールが話さないのなら別の誰かにと、メディアはカイル・クーズマにこの件をどう思うかと聞いた。オフを通じてプールと一緒にワークアウトを行い、すでに絆を深めたクーズマは「僕は表紙を見て本の内容を分かったつもりにはならない」と答えている。

殴った側にはお咎めなし、殴られた側が追い出されるのは理不尽だが、それに固執してもポジティブな何かが生まれるわけではない。プールはそれを理解しており、今はキャリアの第2章をより良いものにすることに集中している。

リーダーシップについてプールはこう語る。「子供の頃だって、バスケチームのリーダーになろうと自然に思った。自分にその能力があり、チャンスが巡ってきたなら、迷わずそうするものだと思う。僕はリーダーになる準備ができていると感じていた。多くの人は20代後半とか、30歳になってからこのチャンスを得るけど、僕は24歳でこのチャンスを手に入れた。一生に一度と言っても大袈裟じゃないぐらいのチャンスだと思っているよ」

『殴られた若手』はもう終わり。プールは新天地ウィザーズで充実した日々をスタートさせている。