バーノン・マクリン

文・写真=鈴木栄一

インサイドの優位を生かし、勝負どころで本領発揮

1月23日、川崎ブレイブサンダースが敵地に乗り込み横浜ビー・コルセアーズと対戦した。28得点11リバウンドのニック・ファジーカス、23得点17リバウンドのバーノン・マクリンとツインタワーがゴール下を制圧すると、僅差で迎えた第4クォーターの出だし、トラップディフェンスからのターンオーバー奪取による連続得点で突き放し、79-70で神奈川ダービーを制した。

この試合前、川崎はシェーン・エドワーズが練習中に約3週間から5週間の離脱見込みとなる右足関節の捻挫を負ったと発表。これによりエドワーズに代わりジュフ バンバをベンチ登録した。

第1クォーター、横浜はブランドン・コストナーが8得点、川村卓也が6得点と両エースの活躍により着実に加点。一方の川崎は6オフェンスリバウンドなどシュートチャンスを作り出すもフィールドゴール22本中6本成功が示すように決定力を欠き、横浜が24-15と先手を取る。

だが、第2クォーター早々、横浜は好調のコストナーが走っている時に滑って転倒し負傷するアクシデント。攻撃の柱がベンチに下がった横浜は、オフェンスが一気に停滞してしまう。一方の川崎は、コストナー離脱でより強まったサイズの優位を生かし、ファジーカス、バーノンのインサイド陣で計15得点をマークして反撃。川崎が36-34とリードを奪い前半を終える。

横浜のコストナーは第2クォーター終了間際、一旦はコートに戻って来たものの後半はプレーせず。「コストナーの途中加入でオフェンス面がだいぶ楽になりました。彼が来たこでチームが一つにまとまりつつあります」と横浜の指揮官トーマス・ウィスマンがその存在の大きさを語る攻撃の要のアクシデントは大きな痛手。しかし、ここで田渡凌など日本人選手が奮闘して食らい付き、川崎の5点リードと僅差のままで第4クォーターに突入する。

ジュフ バンバ

期待に応えたバンバ、ディフェンスで勝機を呼び込む

しかし、第4クォーター序盤、川崎は「バンバが出ている時、ダブルチームのディフェンスを積極的にと言っていました。これを出した時、横浜さんの準備ができていなかったです。そこでターンオーバーを奪い、イージーなレイアップを3回連続で決めることで流れが来ました」と北卓也ヘッドコーチが振り返る猛攻で一気に突き放す。

この日、20得点と奮闘した横浜の川村卓也も「第4クォーターで相手のダブルチームのディフェンスに僕らがまんまと引っかかってしまったことが完全に勝敗を分けた」と振り返る。クォーター開始から14連続得点を挙げた川崎が69-51と一気にリードを広げる。その後、横浜も残り2分半には6点差にまで縮めるが、追い上げもここまで。ファジーカスの得点など要所をしっかり締めた川崎が勝利を収めている。

連勝を5に伸ばした川崎の北ヘッドコーチだが、「内容的には良くはなかったです。イージーミスが多いです。こういうゲームをやっていると上位のチームに勝つことは難しい。一人ひとりが、このことをどう思うか、どうしていなければいけないのか考えないといけないです」と反省しきり。金曜、土曜と行われる栃木ブレックス戦に向けて危機感を募らせている。

それでも負傷したエドワーズの代役となるバンバのプレーぶりについては、手応えを得ている。「良いプレーがいくつかありました。起点となってパスをしているのは良いこと。ただ、試合に出ていないことでゲーム勘の問題はあり、リングをもっと見て積極的になってくれればとは思いますが、期待しています」

川崎は中1日で宇都宮に移動し、金曜と土曜で栃木ブレックスと対戦する。前回の栃木との対戦ではホームで痛恨の連敗を喫している。そのリベンジを果たすためはバンバの貢献に加え、チーム全体としてプレーの精度、遂行力を高めることが不可欠となる。

川村卓也

川村「良くなっている過程を勝利に結びつけなければ」

一方、横浜のウィスマンは、敗戦の中にも明るい材料があったと総括する。「第2クォーターの途中でコストナーがケガをして難しい状況になったにもかかわらず、残った選手が全力でプレーして、最後までもつれさせることができました」

「ディフェンスリバウンドを取りきるのが大事。今日も相手にオフェンスリバウンドを14本取られてしまった。そこは修正点です。オフェンスリバウンドが6つ少なく、ターンオーバーが4つ多いことで、攻撃回数で相手が10回多かったのは痛かったです。もう一つ、ペイント内で56点とゴール下で止めらなかった。それをすべて踏まえたとしても今日は選手たちが頑張り、非常に収穫のある試合だったと思います」

さらに指揮官は、「この試合の前の4試合は2勝2敗。2敗はともにオーバータイムでの敗戦でした。そして今日は川崎と渡り合えました。あと一歩で勝ち負けが変わってくるところに来ています。シーズンを通してチームは良くなってきています」とポジティブな変化を感じている。

ウィスマンが言及するように、12月26日にコストナーがデビューして以降、横浜のパフォーマンスは確実に向上している。この点については川村も「ゲームとしてひどい展開を少しずつ消せていることで、選手が自信を取り戻している部分はあります」と見ている。ただ、エースはそれと同時に「白星を増やしてブースターを喜ばせるためには、内容が良くなるだけでなく最終的に結果を勝ち取らないと意味がない。さらにチームがもう一歩良くなるには勝つことが特効薬であり、良くなっている過程を勝利に結びつけなければ駄目です」と厳しい口調で語る。

土曜、日曜と横浜は同じくリーグ下位に位置する秋田ノーザンハピネッツと激突する。コストナーの状態が気になるが、今年こそ残留プレーオフを回避するためにも、良くなってきた内容を勝利という結果に繋げることがより求められる、シーズンの踏ん張りところだ。