熊谷航

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

粘る北海道を振り切るビッグプレーを披露

シーホース三河がレバンガ北海道を迎えた2019年最初の一戦。三河は金丸晃輔、狩俣昌也と主力を欠きながらも、ウイングアリーナ刈谷で過去最多の3070名の観客を前にチーム一丸の戦いを披露。粘る北海道を振り切って84-77で勝利した。

北海道は内海知秀を新たな指揮官に迎えてシーズン序盤の不振から抜け出しつつある。この試合でも立ち上がりからセンターのデイビッド・ドブラスにボールを集め、彼のアタックとパスアウトというシンプルな攻めが機能する。開始4分半でドブラスは5アシストを記録。うち4つが3ポイントシュートを演出したもので、特にストレッチ4のバイロン・ミュレンズと同時にコートに立っている時はこのホットラインが超強力に機能した。

3ポイントシュート攻勢で主導権を握ったかに思えた北海道だが、三河も同じペースで得点を重ねる。インジュアリーリストから復帰したアイザック・バッツと桜木ジェイアールのコンビネーションが機能。また三河は第2クォーターに熊谷航と岡田侑大、特別指定選手の2人が思い切りの良いプレーを披露。セカンドユニットでリードを作り、44-39で前半を折り返す。

後半開始早々、北海道はミュレンズが個人3つ目のファウルでベンチへ。西川が個人技でズレを作り出してのシュートを決め、森川正明も強引なアタックからバスケット・カウントをもぎ取るビッグプレーでリードを広げる。

デイビッド・ドブラス

北海道はドブラスを中心に粘りのバスケを展開

北海道にとって苦しかったのは、後半開始早々にミュレンズが個人3つ目のファウルをコールされ、ベンチに下げざるを得なかったこと。この直後、西川に個人技でズレを作られてミドルジャンパーを許し、森川正明にも強引なアタックからバスケット・カウントをもぎ取られるなど三河の攻勢を浴びる。

それでもミュレンズ不在の時間帯に桜井良太、野口大介がチームバスケットを遂行して3ポイントシュートを決めて反撃。ディフェンスでも2-3のゾーンで三河の出鼻をくじき、桜木やミークスがインサイドでボールを止めた瞬間を見逃さずにスティールから速攻に持ち込む。残り1分、多嶋朝飛のファストブレイクで62-60と逆転に成功して最終クォーターへ。

そんな苦しい試合をモノにする立役者となったのは熊谷だった。約2週間前にチームに加わり、これが三河で3試合目、この試合で初得点を挙げていた熊谷が接戦の第4クォーターを託され、思い切りの良いプレーでオフェンスを牽引。ピック&ロールからオープンになった機を逃さず2本の3ポイントシュートを決める。北海道もドブラスがこの時間帯でも運動量を落とさず、バッツやケネディ・ミークスに走り勝つことでイージーシュートの機会を作り追いすがるが、最終クォーターになって頼みの3ポイントシュートが5本中1本成功と不発に終わった。

熊谷は技巧だけでなく、ルーズボールにダイブしてマイボールにするなどハッスルも全開。残り1分10秒にはドブラス、ミュレンズの間を割って入る強引なアタックからのダブルクラッチを決めて82-75。173cmと小柄な熊谷にとって、ビッグマンの間をすり抜けるドライブは大学時代からの十八番。そのプレーをプロ相手でも披露する、勝利を大きく引き寄せる一撃となった。

西川貴之

西川貴之は18得点、金丸不在を感じさせない働き

過去2シーズンは「セカンドユニットにプレー機会がない、選手が育たない」との批判もあった三河だが、鈴木貴美一ヘッドコーチは比江島慎、橋本竜馬が抜けたこのシーズン、チーム全員の力を結集する方向へと起用法をシフト。接戦の第4クォーターを若い熊谷に託すのは勇気のいる決断だったが、そもそも熊谷を乗せたのも第2クォーターを任せる判断があったから。

鈴木ヘッドコーチは「今年初めての試合ということで、やっぱり何かを変えなければならないということで、森川選手も含め若い選手たちがエネルギッシュに練習をやっていまして、そういう選手たちをどんどん使っていかないと」と語る。熊谷と岡田についても「何回か試合には出場したのですがビクビクしながらやっていて、『今日は自分たちがやるぞ』という感じでやっていました」と気持ちの面での向上を喜んだ。

また、この試合を通じてコンスタントに得点を重ねた西川貴之はシーズンハイの18得点。フィールドゴール14本中9本成功と高確率でシュートを決めて、エーススコアラーの金丸不在を感じさせなかった。

一方の北海道は大黒柱のマーク・トラソリーニが欠場、ポイントガードの多嶋もコンディションが整わず先発を外れる状況で、持てる戦力をフルに活用して三河に終盤まで食い下がった。内海ヘッドコーチは「勝負どころで三河さんが上だった。バランス良く得点できていた」と相手を称える。

そういう意味でも熊谷が桜木、バッツと並ぶ15得点を挙げたことは直接的な勝因になった。当然、大学レベルではNo.1のポイントガードでもプロでは経験がないということで、北海道は前から激しいプレッシャーを掛けてリズムを崩そうと狙ったが、これに屈せずにボールを運んでターンオーバーはゼロ。またシュートアテンプト17はチーム最多と、積極性も目立った。

この日は目立たなかったが、もう一人の特別指定選手である岡田も間違いなく能力はある。三河のファンにとって比江島と橋本の流出はこの上ない痛手だったが、そのポジションに世代トップのスター候補生をすぐさま連れて来る三河の力を見せ付けられる試合となった。三河のファンは昨夏に大きな失望を味わったが、今は新しい何かが生まれる予感を楽しむことができているに違いない。