去年のユーロバスケットに参加しなかったことを批判
今夏のワールドカップで日本代表と同じグループに入るドイツ代表が揺れている。キャプテンのデニス・シュルーダーが選手選考に異議を唱えたのを機に、マキシ・クレーバーが代表辞退する騒動に発展したのだ。
事の発端はシュルーダーがポッドキャスト番組『Got Nexxt』でクレーバーを批判したこと。7月31日からドイツ代表はワールドカップに向けて始動するが、その合宿参加メンバー18名にクレバーが入っていた。「マキシは去年いなかった」とシュルーダーは繰り返した。
マキシは昨年のユーロバスケットに参加していない。膝のケガが原因となっているが、シュルーダーはそうは思っていない。「彼が新しい契約を結んだばかりで、稼ぎのことを考えて所属チームにいるべきだと考えるなら理解できる。でも、自分のプレーの幅を広げる練習に取り組みたいと言うのは理解できない。マキシにプレーなんてないからだ。年齢を重ねれば自分の強みが見えてくる。彼はカーメロ・アンソニーじゃないし、プレーの幅なんていらないんだ。『それで代表でプレーしないつもりなのか?』と僕は思った」
代表チームより優先すべき個人の成長はない、というのがシュルーダーの考え方だ。ただ、自らクリエイトするのは自分を始めとする他の選手の役割で、クレーバーはお膳立てされた3ポイントシュートを打つだけの選手、という言い方にクレーバーが気分を害したであろうことは容易に想像できる。
ヨーロッパの選手は代表チームへの思い入れが強いものだが、シュルーダーは特にそうだ。今夏にラプターズへと移籍したが、その加入会見でも「代表のおかげでNBAのシーズンオフにレベルの高いプレーに触れていられる。だから僕はいつも代表に参加するんだ」と、新しい契約を結んだばかりでもワールドカップ参加の意向をあらためて表明するとともに、それがラプターズでのシーズンにもプラスになることを強調していた。
ドイツ協会は事態の収拾に乗り出し、シュルーダーとクレーバーとの面談を行った。2人の間で直接の話し合いもあったという。協会は「すべてが内部で明確にされた。最終的にクレーバーは代表チームからの離脱を決めた」とコメントしている。
ドイツの指揮官ゴードン・ハーバートは、この騒動が起こる前に「全員が国を代表して最高レベルでプレーすることを名誉と感じて集まってくれる。メダルを目指して戦うつもりだ」と力強く語っていたが、今回は代表チームへの思いが強すぎることが騒動を招いた。
18名から12名への生き残りは簡単ではなく、今回の騒動がなくてもクレーバーが残れたかどうかは定かではないが、選考の過程で代表により強くコミットしてきた選手が外れる可能性をシュルーダーは嫌ったのだろう。
アメリカではスタープレーヤーが代表を軽視し、「オリンピックなら出てもいいが、他の国際大会はお断り」という考え方がまかり通るが、ヨーロッパでは違う。1年ごとに違うメンバーで代表チームを組むのではなく、数年がかりでチームを作り上げていく過程で毎年夏の大会を戦っていく考え方だ。その考え方から外れた選手を呼び戻すべきではない、と考えるのはシュルーダーだけではないだろう。
ただ、これは内部で処理すべき案件だった。代表でプレーすることを名誉に感じて馳せ参じていたはずが、一度辞退すれば追い出される『強制力』があるような雰囲気になれば、いずれその弊害も出てくるだろう。そしてシュルーダーとクレーバーという意味では、新シーズンのラプターズとマーベリックスの試合に見どころが一つ増えたことになる。