フィジカルをスピードで上回る福岡第一、フェイスガードを打ち破って準決勝進出

2018/12/27
プレーヤー
5384

福岡第一

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

河村勇輝は苦しみながらもトリプル・ダブルを記録

ウインターカップ男子の準々決勝、優勝候補の福岡第一は東海大附属諏訪と対戦した。

優勝候補の福岡第一に対し、東海大附属諏訪は試合開始とともに松崎裕樹と河村勇輝にフェイスガードの密着マークを付けた。福岡第一のトランジションオフェンスをすべて止めることはできなくても、出鼻をくじく効果は十分にあった。黒川虎徹を起点とする攻めから高原伊吹の3ポイントシュートなどで得点を重ねるが、クベマジョセフ・スティーブに3ブロックショットを浴びるなどインサイドを攻めあぐねたことでリードは奪えず、12-19で第1クォーターを終える。

それでも黒川がディフェンスマンの古橋正義をぶち抜くドライブレイアップを決めるとチームに勢いが付き、高原が3ポイントシュート、黒川のプルアップジャンパーで21-21の同点に。

ただ、東海大附属諏訪が主導権を握って試合を進めたのはここまでだった。井手口孝コーチは松崎と河村に「フェイスガードされてる気持ちがあって攻め気がなくなっているだけじゃないか」と喝を入れる。それと同時に古橋、小川麻斗にも攻撃の意識が目覚めると、福岡第一の怒涛の攻めが始まる。スティーブのブロック、チームで隙を見せず24秒バイオレーションを誘うなどディフェンスも機能。39-27で前半を折り返した。

福岡第一

17得点の小川麻斗、13得点の古橋正義が活躍

第3クォーター途中、スティーブと接触した米山ジャバ偉生が唇から出血。その直後に張正亮が個人ファウル4つでベンチに。ゴール下で戦うビッグマンが2人同時に抜けたことで、東海大附属諏訪は難しい状況に追い込まれる。この隙を福岡第一は見逃さない。きっかけを作ったのはポイントガードの河村だった。「前半はフェイスガードされていて自分のスタイルでプレーできず、シュートが打てなかったので、後半は速攻を増やしアシストを出そうと狙いました」

ここから河村が狙い通りにアシストを連発。松崎とスティーブの連続バスケット・カウントが飛び出すと、今度は河村が自分でマークをかわして3ポイントシュートを沈めて60-37。第3クォーター終了を待たずに、勝利をほぼ確実なものとした。

最終クォーターも福岡第一はディフェンスの強度を落とすことなく試合をコントロール。80-55、残り2分のところでベンチメンバーが投入される。最終スコアは86-63。福岡第一が4つのクォーターすべてで上回る完勝でベスト4進出を決めた。

出鼻はくじかれたが、早急に立て直して自分たちのスタイルで反撃。そんな中でも井手口コーチは「ディフェンスが頑張りました。良いディフェンスができたと思います」とディフェンスを称える。実際、シュートタッチの良かった高原には3本の3ポイントシュートを含む22得点を奪われたが、チームのシュート成功率は3点シュートが20%、2点シュートが28.8%と試合を通して低く抑えた。

福岡第一では松崎がチームトップの22得点、スティーブは18得点19リバウンドと活躍したが、東海大附属諏訪のプランを打ち破ったのはむしろ、17得点の小川麻斗、13得点の古橋正義だったと言うべきだろう。彼ら2人がディフェンスで踏ん張り、フィジカルに対して走って上回り、そしてチャンスを得点に繋げることで2人のエースにフェイスガードを付けるディフェンスを無力化した。

福岡第一

井手口コーチ「監督は欲張りで、キリがないから」

河村は10得点10リバウンド15アシストのトリプル・ダブル。本人曰く「記憶にない」というトリプル・ダブルだが、シュートについては納得がいっておらず「10点も取ってました?」とピンと来ていなかった。「チームの勝利が一番で、あまりスタッツは気にしていませんが、結果として付いてくるのは良いと思います。自分のシュートの調子があまり良くなくチームに迷惑を掛けていたので、アシストを多めにしようとプレーして、それが効いたのなら良かったです」

井手口コーチはそんな河村に対し、「監督は欲張りで、キリがないから」と笑いつつ、8本中5本の成功に終わったフリースローに目を付け「フリースローを落とすのはターンオーバーと同じだと思わないと。そういうレベルの選手になってほしい。カリーだってそうでしょう(笑)。それを当たり前にできる選手になってほしい」と語る。今日の東海大附属諏訪によるフェイスガードも、「自分にいろいろやってきてる、とナーバスになってるのか自分に酔ってるのか(笑)」と、喝を入れられなくても攻略してほしいと高いレベルを求める。

なかなか厳しい注文だが、河村自身も「実際その通りです」と真正面から受け止める。「福岡第一のガードとしてやるからには、それなりのプレーをしなければいけない。そういう責任感を持ってやっています」と、彼自身が目指すガードの理想は高く、そこにブレずに進んでいる。

世代No.1のポイントガードとしての評価を確立しつつあるが、河村が目指すのはそのずっと先。ただし、明日の準決勝に目を向ければ、U18日本代表でともにアジアを戦った富永啓生を擁する桜丘との対戦が待っている。河村vs富永、もちろん個人と個人の戦いではないが、どちらがよりチームを牽引できるか、注目の顔合わせであることは間違いない。世代屈指のガード対決が楽しみでならない。