決勝では205cm、中国の大黒柱ハンを攻守で翻弄する見事なプレー

女子アジアカップ2023、日本は決勝戦で71-73と中国に競り負けた。ここ一番での決め手に欠けて勝てる試合を落とし、惜しくも6連覇を逃したのは残念だが、もちろんポシティブな面もある。まず、チームとしてはまだまだ発展途上とはいえ、局面ごとに個々の判断力を尊重するクリエイティブなバスケットボールの片鱗を見せることができた。

また、選手でいうと今回が代表デビューでありながら、切れ味鋭いドライブで攻撃の起点となった星杏璃と、不動の先発を務めエースガードとしてチームを牽引した山本麻衣など若手の台頭が目立った。そして見逃せないのが、チーム最年長のベテランだが、衰えを全く感じさせないハイパフォーマンスを見せた髙田真希だ。

準決勝までの髙田は、サイズ不足の日本代表において貴重なインサイドプレーヤーとしてディフェンスとリバウンドに注力し、オフェンスでは空いたら仕掛けるくらいの繋ぎ役の印象が強かった。しかし、決勝の中国戦では、相手の大黒柱である205cmのハン・シュと互角以上に渡り合った。ディフェンスでは巧みなポジション取りと強靭な足腰を生かし、ハンにゴール下でボールを持たせなかった。そして、オフェンスではスピードのミスマッチを生かしてドライブや3ポイントシュートを決め、決勝は17得点4リバウンドの活躍だった。

あらためて日本代表に不可欠な存在であることを示した髙田は、試合の明暗を分けた鍵を「ディフェンスだと思います。リードしていたのに後半になって、一気に6点を取られて追いつかれた場面などはコミュニケーションが足りていなかったです」と語る。

そして、大会MVPのハンを翻弄した自身のプレーについてはこう続ける。「特に国際試合はディフェンスとリバウンドを意識してやっている部分があります。そして中国はセンターがポイントゲッターでもあるので、そこをしっかり抑えて、相手にオフェンスリバウンドを取らせない。(ハンを相手に)自分の中ではマッチアップをしていた時、そんなにやられていない認識はあります」

また、オフェンスでは「自分にアドバンテージがあると思っていました。積極的に3ポイントシュートを打ったり、ドライブから崩していこうと考えていました」と、想定通りのプレーができたと振り返っている。

「今大会を1つの経験として次に繋げていければいいと思います」

チーム全体のパフォーマンスで課題はあるが、髙田は着実に前進できていると感じている。「もちろん優勝を目指していたので悔しい気持ちはあります。でも大会を通して成長できました。最初は自分たちのやるべきプレーの手順を追っていくことに力を注いで、相手を見ながら動けていないところもありました。それでは実際の試合になると、相手の守り方も違ってくるので、システムの中でディフェンスに対してどうやって動いていくのかが重要になります。昨年9月のワールドカップに比べると、自分たちがやるべきことを理解し始め、スムーズにプレーできた手応えもあります」

そして、この成長は今大会に限ったことではなく、地道な積み重ねによるものだと強調する。「一気に何か変わったというより、ワールドカップ前からの積み重ねでしっかりステップアップできている。今大会を1つの経験として次に繋げていければいいと思います」

次の国際大会は、いよいよ世界の列強たちとパリ五輪の切符をかけて争う五輪最終予選となる。アジアカップと比べて、相手のレベルが大きく上がるのは間違いない。この厳しい戦いを勝ち抜くには、インサイドの核として髙田の存在が必要だということが今大会でより明確になった。物事を冷静かつ俯瞰的な視点で見られる点も含め、コート内外において、日本代表には今までと同様に髙田が欠かせない。