デイミアン・リラード

スクート・ヘンダーソンの指名権へのオファーを断ったことが決め手に

デイミアン・リラードはトレイルブレイザーズを去る。現地7月1日、11シーズンを過ごしたクラブに彼がトレードを要求したとの報道に対し、ジョー・クローニンGMがこれを認めた。

2020-21シーズンを終えたところでテリー・ストッツを解任し、その半年後にはCJ・マッカラムを放出。ずっと一緒に戦ってきたヘッドコーチと相棒を失ったことでリラードはパフォーマンスを落とし、欠場も増えた。この2年間は常に「リラードも移籍するだろう」と見られ、リラード自身もクラブとファンへの忠誠を誓いつつ、フロントとの関係が冷めていくのは様々なコメントからもうかがえた。

33勝49敗と低迷してプレーオフ出場を逃した昨シーズンを終えたタイミングで、リラードは新星シェンドン・シャープの才能を称えると同時に「僕は優勝するチャンスが欲しい。チームが育成重視の道のりを選択するとしたら、それは僕が望む選択ではない」と語っている。

エースの要望に対し、フロントの動きはチグハグだった。ロッタリーで3位指名権を引き当てると、今ドラフトで最高のポイントガードとの評価を受けるスクート・ヘンダーソンを獲得。昨年のシャープに続いてガードを指名するのは、マッカラムの穴埋めではなくリラードの後継者を意味する。クラブに忠誠を尽くすリラードを絶対的な存在としつつ、同時にいつでもトレードできるような動き方だ。

リラードが優勝の夢を公言しつつも内心ではあきらめ、再建チームのリーダーとしてキャリアを終えることをフロントは期待していたのかもしれない。だが、彼はついに決断を下した。もうこのチームにはいられない、と。

リラードは32歳になったが、いまだリーグ屈指のスコアラーであり、『デイム・タイム』と名付けられたクラッチタイムの勝負強さは他の選手と一線を画す。それでもこの2年はケガが増え、ブレイザーズだからこそ『チームの顔』として意味のある2027年までの大型契約を締結済み。36歳になる4年後に6320万ドル(約82億円)を支払う大型契約は、どのチームもそう簡単には抱えられない。

移籍先はヒートが有力で、他にはセブンティシクサーズとクリッパーズの名前が挙がっているが、リラードがトレード要求を突き付けていること、実力はともかく年齢を考えると不自然なまでの長期契約を結んでいることを合わせて考えると、ブレイザーズが得られる見返りは限りなく小さなものになるはずだ。

昨夏のジャズは再建に舵を切ると決めた途端に、ドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアを躊躇なくトレードに出し、再建を後押しするドラフト指名権を大量に得た。それと比較すると、ブレイザーズの優柔不断な態度、リラードを巡るチグハグな対応は非常に悪いものに感じる。

クローニンGMは声明の中で「デイムは退団を希望した。我々が勝利を求め続けるのは変わらない。その目標のため、チームにとってベストな動きをする」と述べているが、この2年間で『ベストな動き』は全くできていない。地元メディアの『The Oregonian』は、スクート・ヘンダーソンを獲得できる3位指名権に好条件のオファーが来ていたのをブレイザーズが断り、これがリラード退団要求の決め手になったと報じている。

リラードはブレイザーズのクラブ史で最も偉大な選手だ。しかし、「もっと早くトレードすべきだった」という印象を残してポートランドを去るのは残念でならない。