帝京長岡

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、日本バスケットボール協会

チームを一つにした「一人にするな」の言葉

ウインターカップ4日目、男子は8試合が行われベスト8が出揃った。

帝京長岡は八王子学園八王子と対戦。木村圭吾のミドルジャンパーを浴び、ラスト3秒で同点に追い付かれたが、アウトサイド主体の八王子に対し、ガードのドライブやセンターの力強さで上回った帝京長岡が85-77で延長にもつれる熱戦を勝ち切った。

柴田勲監督は「難しい試合でした」と試合を振り返った。「特に試合終了間際に追い付かれたことで『もうダメだあ』みたいな感じで、ちょっと元気がなかったんですよね」。そこで「あと5分できるんだから。みんなで楽しめたら、楽しんだほうが勝つんじゃないか」との声を掛けたことが、選手から余計なプレッシャーを取り除き、最後まで集中力を保つことに繋がった。

負ければ終わりという極限状態で、試合を楽しむことは難しい。それでも、試合を楽しみ勝利できたのは、柴田監督が試合を通して掛け続けた「一人にするな」という言葉の力があった。

前半を35-29とリードして折り返した帝京長岡だったが、第3クォーターに反撃を浴び、5点のリードを許して最終クォーターを迎えた。チームハイの37得点を挙げたケイタ・カンディオウラはフリースローを獲得するも4本連続でミスするなど、追撃のチャンスを自ら逸していた。

そのケイタに柴田監督が言葉を掛け、チームメートも笑顔で励ますなど、チーム一丸で大黒柱を支えた。その結果、ケイタはフリースローを成功させ、その後もリバウンドで本領を発揮し、勝利へ直結する働きをした。

「決めなきゃいけないシュートをポロっと落とす。気持ちが痩せるというか、弱くなるというのもあるので。そう言った時は声を掛けあって、一人で戦ってるんじゃないぞっていうメッセージは込めてます。ケイタも熱くなると一人で暴走しちゃうこともあるので、みんなで同じ方向を見て最後までやれて良かった」と柴田監督は振り返る。

神田龍一

両足を攣りながらもエナジーを与え続けた神田

37得点23リバウンドを記録したケイタの活躍は言うまでもないが、「満身創痍なんですけど、3年生らしく、リーダーシップを発揮してくれてやってくれたのは頭が下がります」と柴田監督に言わしめた神田龍一の働きは忘れてはならない。

最終クォーターに入った時点で追いかける展開を強いられた帝京長岡だったが、その追い上げムードを演出したのが神田だった。神田はボールをプッシュし続け、自らもフィニッシュまで持っていき22得点を挙げ、ガードながら13リバウンドを記録した。第3クォーターの中盤で両足が攣るアクシデントに見舞われながらも、勝負が決したラスト17秒までコートに立ち続けた。

何度も苦痛に顔をゆがめ、足を気にする素振りを見せながらのプレーとなったが「そこは自分がやらなきゃという気持ちでやりました」と、最後までボールをプッシュし続けた。周りから見れば交代させるべきと思うところだが、指揮官は神田の出たい気持ちを尊重した。

昨年のウインターカップでは3位の好成績を収めた帝京長岡だが、インターハイを制した開志国際に県予選で敗れ、全国への道を断たれていた。リベンジを果たすべく臨んだ大会だったが、その開志国際は彼らの眼前で桜丘に敗れた。

「去年の先輩方は3位で、良い思いをさせてもらいました。今年のインターハイ予選で開志国際に負けて全国に出れなかったので、そこは悔しかったです。県内で切磋琢磨してきたチームなのでその分も背負ってやりました。代わる気はなかったです」と神田はプレーすることへの熱い気持ちを語る。

八王子学園八王子を振り切り、これでベスト8進出。メインコートでのプレーは実現させたが、彼らが目指すのはもっと先だ。偉大な先輩に並ぶべく、今日は前回王者の明成超えを狙う。