近畿大学附属

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

攻守ともに噛み合わず「すべて裏目に出たのは初めて」

楽しめばいいんですよ──。近畿大学附属の大森健史監督はウインターカップへの意気込みをそう語った。実際、一番の武器は選手、ベンチを含めた全員がバスケを楽しむことにある。チームTシャツに「バスケは人生の一部でしかないんやで」と記されているように、その『気の抜き加減』が強さの秘訣だ。

だが、前橋育英との1回戦では、バスケを楽しむことができなかった。ボールと人が動き、しっかり相手ディフェンスを崩すも、シュートがリングに嫌われ続けた。シュートが入らないことで浮足立ち、ボール運びでミスが続く。また前橋育英がタフな状況でも高確率でシュートを沈めたことで、12-24といきなり2桁のビハインドを背負った。

その後もチェンジングディフェンスやオールコートディフェンスを駆使して流れを変えようとしたが、前橋育英にすべて対応された。すべてのクォーターで上回られて61-97での大敗。1回戦で姿を消すことになった。

大森監督も「なんなんだろう。シュートが嫌われ続け、序盤のフリースローも落ちて。すべて裏目に出たのは今回が初めてです。ずっと嫌な展開でしたね」となかば呆然。もちろん対戦相手への対策はしてきたが、フィジカルの強さは誤算だったという。

「ここまで当たりが強いとは思わなかった。ビデオでは当たりの強さは分からないですね。フィジカルで全部負けていて、完敗です」。大森監督がそう言うように、近畿大学附属は球際の強さで負け、ターンオーバーからの失点も多かった。

「こっちの良いところが何も出ずに終わってしまった」と、力が出せなかったことを悔やむも、「まあ、負ける時はこんなものです」とあっさりとした表情を浮かべた。

近畿大学附属

試合を楽しめず「情けない」

キャプテンの野崎海斗も、泥臭いディフェンスや声を出してチームを引っ張る本来の姿を見せることができなかった。そして、「楽しむという僕らのスタイルも出し切れてなかったので、情けないです。楽しみたかったんですけど、負けた限り悔いがないとは言えない」と人目をはばからずに涙を流した。

客席にいる他の部員たちは、「よくやった」、「全国47位だ」と、とびっきりの明るさで選手たちに労いの言葉を送った。だが野崎は客席に向かって両手を合わせて頭を垂れた。「ごめんって言うなと言われたんですけど、あいつらの応援に応えられなかったので。ここまで来れたのも全部あいつらのおかげもあったので」とその時の気持ちを説明した。

チーム最長の30分間コートに立ち続けた岩﨑光瑠も、近大特有の『明るさ』が出せなかったことを敗因に挙げた。「自分たちのディフェンスが機能しなかったです。相手のシュートが入って、テンションを高めようと思ったんですけど、シュートが入りすぎて、逆にだんだん下がってしまいました。楽しむことが僕らのスタイルなので、それが出せなかったことが一番大きいです」

練習時間を短くしたり、勉強やバスケ以外のことを大切にするなど、他の強豪校とは一線を画す近畿大学附属バスケ部。今回は初戦敗退となったが、大森監督は今後もこのスタイルを貫き、さらに進化させていくことを誓う。

「今までやってきた形なので。負けると変えてしまったら、ウチらしくなくなってしまう。さらにいろんな考え方やいろんな方法を突き詰めてやっていかないといけないです。このスタイルは変えるつもりはないです」