デリック・ホワイト

劇的ブザービーターよりも重要な、ホワイトのアジャスト能力

劇的なブザービータープットバックでセルティックスのシーズンを繋いだワンプレーで、デリック・ホワイトは一躍ヒーローになりました。しかし、このワンプレー以上の大仕事が、ジミー・バトラーを止めるディフェンスです。

第1戦でバトラーはマッチアップをホワイトにスイッチさせ、次々とドライブアタックを決めていきました。今シーズンのオールディフェンシブチームに選ばれたホワイトが、セルティックスディフェンスの弱点として狙われたのです。フィジカルの強いバトラーからすると、力で押し勝てるホワイトは絶好のターゲットでした。単純なフィジカルの勝負だけに修正が難しく、実際に第2戦では試合終盤にホワイトのプレータイムは減らされました。

しかし、バトラーとホワイトの関係性はシリーズが進むにつれて逆転していき、第6戦まで来るとホワイトがバトラーを完璧に抑え込むようになりました。ディフェンスの弱点ではなくなったことでホワイトのプレータイムは伸び、最後までコートに立っていたことで、あのブザービーターに繋がったのです。

バトラーの1on1の特徴は、ドライブでのコンタクトで相手の動きを制限したところに、チェンジオブペースでの突破、ポンプフェイクとフェイダウェイを使ったジャンプシュートを組み合わせるところにあります。さらにフィジカルの強さを生かして強引に身体を当ててファウルを取っていきます。そのため、通常はフィジカルで負けない選手がマッチアップするのが有効です。

ホワイトはこのシリーズ序盤にはコンタクトプレーに耐えようとしましたが、踏ん張ることで次の動作が遅れ、バトラーに手玉に取られました。そこでバトラーの行きたい方向へのドライブはさせるものの、抜かれることもコンタクトされることもなく、ペイント内まで粘り強く付いていく守り方に修正しました。

さらに今ではポンプフェイクも読み切っています。フェイクには引っかからないのに、そのままシュートに行くとホワイトはブロックに跳んでおり、バトラーのプレーを完璧に読んでいます。こうしてファウルドローを狙えなくなったバトラーにはプレー選択に迷いが生じ始め、リズムが崩れていきました。

バトラーはもともとコンタクトプレーに強い一方で、リング近辺のシュートをポロポロと落とす癖があります。実際、第3戦まで48%決まっていたペイント内のシュートが、ポンプフェイクを読み切られることが増えた第4戦以降は35%まで落ちています。

1試合の対戦ではバトラーの圧勝に終わったマッチアップでしたが、同じ相手と続けて対戦することで癖を見つけ、対応することが可能なプレーオフでは、ホワイトのアジャスト能力が光っています。一度はウィークポイントと見なされたホワイトがストロングポイントに変わったことで、史上初の3連敗からの4連勝が現実になろうとしています。