「今シーズンに積み上げてきたディフェンス、我慢してプレーすることを大切に」
いよいよ今年のBリーグ王者を決めるファイナルの第1戦まであと1日となった。レギュラーシーズンでは多くの故障者を抱えながらリーグ最高勝率の53勝7敗と圧倒的な強さを見せ、天皇杯に続く頂点を目指す千葉ジェッツと、2年連続のファイナル出場から悲願の初タイトルを目指す琉球ゴールデンキングスの対決となる。
両チームの対戦を見ると、天皇杯決勝では千葉が終始リードを奪う展開から87-76と快勝し、レギュラーシーズンは4月1日、2日と対戦して1勝1敗だった。また、この3試合ともに千葉Jがギャビン・エドワーズを故障で欠いていることも加味すれば、千葉Jが優勢なのは否めない。
これまでの対戦で明らかなのは富樫勇樹、ヴィック・ロー、クリストファー・スミスに原修太など、個での打開力に優れた選手が多い千葉Jの方が、点の取り合いでは圧倒的に有利であること。琉球が勝つにはタフな守備を継続し、しっかりシュートで終わるオフェンスを続けることで千葉Jにトランジションを出せさないなど、ロースコアに持ち込むことが必要だ。この琉球が勝つために不可欠な堅守を支える1人が小野寺祥太だ。チャンピオンシップでも粘り強いディフェンスで相手オフェンスの起点役にプレッシャーをかけ続けると、速攻など相手の得点チャンスを未然に防ぐ戦略的ファウルなど冷静なプレーも光った。
ファイナルに向け「いつもと変わったことをするのではなく、今シーズンに積み上げてきたディフェンス、我慢してプレーすることを大切にやっていきたいと思います」と小野寺は言う。
昨シーズンの琉球は地区首位を快走し、余裕を持って地区優勝しチャンピオンシップの第1シードをつかむと、その勢いに乗ってファイナルまで到達した。しかし、今シーズンは最終節になってようやく地区優勝を決め、千葉Jに続く第2シードでチャンピオンシップと1年前に比べると険しい道のりを乗り越えての頂上決戦となった。しかし、だからこそ得られたものがあると小野寺はとらえている。「昨シーズンは、レギュラーシーズン中に圧勝した試合も多かったです。それが今シーズンは、我慢して接戦を勝ってきました。ファイナルでも、この部分を出していきたいです」
富樫ストッパーの役割「フラストレーションを溜めるようなディフェンスを」
冒頭でも触れたが、オフェンス力では千葉Jに大きなアドバンテージがあり、琉球としてはいかにロースコアの競り合いに持ち込めるかが勝利の肝となる。そして千葉Jのオフェンスを勢いに乗せないためには当然のことだが、エースの富樫をいかに抑えることができるかが大事だ。実際、今シーズンで唯一、琉球が78-76で競り勝った4月2日の試合では、富樫を7得点に抑えたことが大きかった。この時、密着マークで富樫を苦しめたのが小野寺だ。あの試合がディフェンスへの自信を深めるきっかけになったと明かし、ファイナルでも予想される富樫へのマークについてこう意気込む。
「富樫選手についていた時、より自分のディフェンスが通用すると感じられて継続するようになりました。相手がボールをもらう前にフィジカルを意識して、フラストレーションを溜めるようなディフェンスをしていきたいです」
ちなみに現在の琉球のロスターで、桶谷大ヘッドコーチと最も付き合いが長いのが小野寺だ。桶谷ヘッドコーチはチーム創世記から琉球を率いるが、bjリーグで2度目の優勝を置き土産に2011-12シーズン終了後に退任する。そして翌年から新天地として選んだのが岩手ビッグブルズだった。岩手での2シーズン目、地元の盛岡南高校から高卒で入団したのが小野寺であり、桶谷ヘッドコーチが翌年にチームを離れるまでプロ選手として生き残るために必要なものを基礎から叩き込まれた。
「桶さんはディフェンスを意識してやっています。そこは僕の強みの部分でもあり、表現していきたいです」。こう語るように、小野寺は桶谷ヘッドコーチがチーム作りの根幹とするハードワーク、身体を張り続ける献身的かつ泥臭いディフェンスを体現している。そして、プロ10年目の小野寺は岩手時代のbjリーグファイナルズ、昨年のファイナル、今年の天皇杯ファイナルと大舞台を経験してきたが、その全てが桶谷ヘッドコーチの下でプレーしている時だ。
しかし、いずれもあと一歩でタイトルを逃してきた。今回こそはと強い思いを小野寺は語る。「桶さんとは長い付き合いですが、bjリーグの時の有明コロシアムでのファイナルズ、去年のファイナルも優勝できなかったです。今シーズン、またチャンスをつかんだので今度こそ桶さんと優勝したいです」
ディフェンスファーストでスタッツ面では目立たないことが多い小野寺だが、ファイナル進出を決めた横浜ビー・コルセアーズとの第2戦では3ポイントシュートを3本成功させ11得点を記録。また、地区優勝を決めたレギュラーシーズン最終節の広島ドラゴンフライズ戦では試合終盤に勝利を決めるタフショットを沈めるなど、ここにきてオフェンスでもインパクトを与えている。ファイナルの流れを変える伏兵として、小野寺の存在に注目だ。
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