勝ちはしたが、指揮官は反省「プラン通りのディフェンスは全くできていなかったです」
琉球ゴールデンキングスは5月11日、チャンピオンシップのクォーターファイナル初戦で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。3ポイントシュート7本成功の24得点を挙げた今村佳太の活躍に加え、リバウンド数で42-27、セカンドチャンスポイントで26-13とゴール下の肉弾戦を制したことで、91-85のハイスコアリングゲームに競り勝った。
試合の出だし、琉球は名古屋Dのテンポの良いボールムーブに対応できない。パスを散らされ、バランスの取れたオフェンスに苦戦し7−15と先手を取られた。しかし、ここからジョシュ・ダンカンが攻守に渡って持ち前のフィジカルなプレーで活躍し、流れを変えて互角の展開に持ち込む。
第2クォーターに入ると、名古屋Dが持ち味の機動力を生かしたトランジションを繰り出す。後手に回った琉球はシューターへの対応がルーズになり、名古屋Dにこのクォーターだけで7本中5本成功と3ポイントシュートを次々と決められ突き放されてしまう。だが、アレン・ダーラムを筆頭としたゴール下へのアタックで応戦すると、終了間際に、岸本隆一が3ポイントシュートを沈め41-44と追い上げて前半を終える。
後半に入ると、琉球は守備の強度を上げることで、名古屋Dのオフェンスのリズムを崩して流れを引き寄せる。そしてジャック・クーリーが代名詞であるオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスポイントで得点を重ね、このクォーターだけで11得点の大暴れを見せることで一気に逆転する。だが、琉球はここで安易なターンオーバーから終盤に反撃を許してしまう。
第4クォーターに入っても、互いに譲らず僅差で推移する白熱の展開が続いていったが、名古屋Dがレイアップのミスなどここ一番で決定力を欠いたのに対し、琉球はエースの今村佳太が違いを見せる。2点リードの残り35秒から沈めた決勝弾など、第4クォーターのみで3ポイントシュート3本を含む10得点を挙げてチームを牽引し、琉球に大きな勝利をもたらした。
琉球は勝ったとはいえ、名古屋Dにファストブレイクポイントを24点も与えるなど内容は決して良くなかった。だからこそ、桶谷大ヘッドコーチも「勝てたことは良かったですが、プラン通りのディフェンスは全くできていなかったです」と、まずは反省を口にした。
「やられてはいけないトランジション、3ポイントをかなりやられました。シュートが入ったから勝てた試合だと思っています。明日はプラン通りにディフェンスを遂行することが重要です。オフェンスリバウンドも行ってはいけないところで行って、走られてしまったところが第1クォーターはかなりありました。明日はやるべきことを徹底してやりたいです」
「一喜一憂することなくやるべきことをやり続けたいです」
自分たちの根幹であるディフェンスがうまく機能しなくとも勝てたのは指揮官が語ったようにシュートが入ったから。特に傑出した働きを見せたのが今村だった。抜群の勝負強さを見せたエースは、試合終盤の自身のプレーをこう振り返る。
「まずは、(自分にオフェンスを)任せてくれるチームメートに感謝したいです。僕自身、今シーズンは特に勝負どころで活躍しないといけない選手だと思って日々プレーしています。その思いがあの段階で出たと思います」
今村が決めた7本の3ポイントシュートの中でも一番のハイライトは、残り35秒にスイッチで守ったコティ・クラークの前から決めた、5点差に突き放す一撃だ。その前のオフェンスにおいても今村はハンドラーを務めたが、残り約10秒にダーラムへパスを出している。ここでダーラムは1対1を仕掛けるが、キレ味に欠け外からのタフショットを打って外した。こういった背景もあり、あの場面では自分が打つと決意していたと明かす。
「その前のポジションで、AD(ダーラム)に疲れが溜まっていると見ていました。だから、あそこは自分が打ち切る。たとえスイッチされても打ち切って決め切る自信がありました。レギュラーシーズンの積み重ねが、あのシチュエーションで出たと思います」
今村が強調する積み重ねとは、シーズンを通してここ一番でオフェンスを任される『ゴー・トゥー・ガイ』の責任を担い続けてきたことを指す。この経験があるからこそ、チャンピオンシップの大舞台で勝負強さを発揮できた。この大活躍にも本人は至って冷静だが、それは昨年のファイナルで敗れた雪辱を果たすことしか考えていないからだ。
「去年のチャンピオンシップで非常に悔しい思いをして、やりきれなかった後悔があります。チームを勝たせる選手にならないといけない。そこに対してブレずに一貫してやっていく。チャンピオンシップはたった1日が終わっただけです。自分たちが悔しさを感じたのはまだまだ先の舞台なので、一喜一憂することなくやるべきことをやり続けたいです」
琉球にとって自分たちのやるべきディフェンスを遂行できなかったのは大きな反省点だが、見方を変えればそれでも勝つことができたのは大きい。今日の第2戦、琉球は本来のディフェンスを遂行し、そして今村がオフェンスをしっかり牽引することができれば自然と結果はついてくる。