「ディフェンスは今シーズンを通して自信がつきました」
今シーズンのBリーグにおいて、最も大きな躍進を果たしたチームの代表格は横浜ビー・コルセアーズだ。開幕当初こそ黒星が先行したが、12月に9勝3敗、1月に6勝2敗など中盤戦になると大きく貯金を増やしていった。その結果、レギュラーシーズンを33勝27敗の中地区2位で終え、チーム史上初となるチャンピオンシップ進出を決めた。
横浜BCの持ち味といえば、河村勇輝を中心としたトランジションオフェンスだ。河村がコートを縦横無尽に駆け回り自ら得点を挙げるだけでなく、次々と味方のシュートチャンスを作り出すことでリーグ有数の爆発力を誇っている。だが、選手たちはオフェンス以上にディフェンスをチームの根幹として何よりも重視している。堅守からリバウンドをしっかり取り切らないと、当然のように走る展開に持ち込めない。自分たちの得意な流れに持ち込むには、しっかりとしたディフェンスがあってこそという共通認識を持っている。
その中でもチーム随一のディフェンス力を評価され、不動の先発ガードを担っているのが須藤昂矢だ。短期決戦のチャンピオンシップでは、レギュラーシーズン以上に出だしの勢いが重要となる。勢いをもたらす発火点となりやすい3ポイントシュート封じへ、須藤が強靭なフィジカルを生かした激しい守備で川崎のシューター陣をしっかり抑えられるかどうか。それは序盤の攻防で大きな鍵となってくる。
須藤は自身にとっても初めての出場となるチャンピオンシップへの思いをこう語る。「シーズンを通してしっかり1人ひとりが自分の仕事を理解してプレーできました。献身的なメンバーが揃っているので、経験を積みながら勝ち切れる試合が増えていき、目標としていたCSへの切符を手に入れられたのはチーム全員を誇りに思います。今は楽しみな気持ちが強いです」
また、「CSはこれまで経験したことがない舞台なので緊張感はありますけど、自分たちのやってきことを出すだけです。そして、今までやってきたことに自信を持っています。それを、どれだけ出せるかのワクワク感の方が大きいです」と続けた。
そして自身のパフォーマンスについては、次のように振り返る。「ディフェンスは今シーズンを通して自信がつきました。そこはCSでも自分の武器としてチームを助けたいです。オフェンスは徐々にですけど、選択肢を増やせていると感じています。ピック&ロールを使ったり、ドライブだったり、自分の中である程度は余裕を持ちながらプレーできる場面が増えてきているのは成長できていると思います」
「いつも以上に闘志を押し出していかないといけない」
冒頭で述べたように横浜BCの躍進の土台となっているのはディフェンスの強化だ。そこには今シーズンから加入したアシスタントコーチを務めるイゴア・ジャレティッチの存在も大きいと須藤は語る。
「チーム始動からジャレさんがディフェンスを指導してくれて、チーム全員の意識が1から変わりました。全体でディフェンスの圧力が変わったのは大きかったと思います。本当にフィジカルの部分が大事という意識はみんな持っています。お互いを助け合うディフェンスがすごくチームの色として出せていると思います」
チャンピオンシップ初戦は、川崎ブレイブサンダースとの神奈川ダービーで周囲の注目も大きい。「神奈川のチーム同士で気合もより入っています。ただ、気負いすぎることなく、今までやってきたことをとにかく表現できるようにしていきたいです」こう自然体で臨む須藤は、出だしから持ち味のタフなディフェンスを見せ、チーム全体の強度を上げていきたいと意気込む。「川崎はホームですし、すごくアグレッシブにやってくると思いますが、そこで受け身になることなく40分間やりきる。まずはスタートの5人が、最初にディフェンスのトーンをセットすることは大事です」
また、「とにかくみんなで助け合いながら」とチームで守ることを須藤は強調するが、「自分がディフェンスでチームに勢いを与えられる部分はあります。責任を持ってシューターを抑えていきたいです」と、個のディフェンスにプライドも持っている。
外から見れば、今シーズンの横浜BCは中盤戦から勢いに乗る順風満帆な航海だったように見える。だが、須藤はそういった見方を否定する。そして、荒波を乗り越えてきたからこそのたくましさ、総合力に手応えを得ている。「毎試合タフでとにかく大変でした。接戦が多く、ケガ人も多くてレギュラーシーズンは苦しかった気持ちがすごくあります。その中で、青木(勇人ヘッドコーチ)さんもよく言っていますが、日替わりでヒーローが出てくることが多くて、チームとしての経験値を積み重ねていけました」
明日からの大一番は、会場が満員となりプレーの一つひとつに観客が反応し、これまでにない熱狂の中でのプレーとなる。「これからのキャリアにもすごく繋がってくる舞台で、今までやってきことを表現していきたい」と語る須藤は、心身ともに準備万端だ。「CSはお互いの感情が高まった試合になります。相手はホームでお客さんの力もある中で、いつも以上に闘志を押し出していかないといけません。チームに勢いを与えるためにも、感情の部分も大事です」
これまで冷静沈着なプレーでチームを支えてきた須藤の感情を爆発させる姿はチームを鼓舞し、会場にいる横浜BCのファンにも大きな力を与えてくれる。そういった場面が増えれば増えるほど、横浜BCが勝利する可能性は高まるはずだ。