藤田弘輝

ハードなディフェンスで群馬を67点に抑え有終の美

5月7日、レギュラーシーズン最終戦となる仙台89ERSvs群馬クレインサンダーズの第2戦が行われた。第1戦は一進一退の攻防となりオーバータイムの末に群馬が勝利したが、第2戦はエナジーレベルの高いディフェンスと高確率の3ポイントシュートで仙台が群馬を圧倒し84-67で勝利した。

前日に引き続き、シュートタッチの良いネイサン・ブースとラショーン・トーマスが連続で3ポイントシュートを成功させたことで勢いに乗った仙台は、ディフェンス強度も高くなりターンオーバーを誘発。群馬の積極的なアタックを強固なインサイドディフェンスで阻むと、速い展開から着実に得点を積み重ね、開始5分で10点のリードを築いた。群馬にフリースローでの得点は許すもフィールドゴールを約6分間に渡って成功させず、このクォーターで3ポイントシュートを5本中4本成功させて12点リードで第1クォーターを終えた。

ディフェンスローテーションのミスを突かれ、並里成に連続で3ポイントシュートを決められると、野本建吾にも連続で速攻を許し一気に4点差に迫られた。それでも、タイムアウトを取った仙台はボールムーブが良くなり、小林遥太とブースの3ポイントシュートで再びリードを広げる。トーマスのアタックは前日に続き効果的で、群馬のディフェンスを崩し、良い流れを呼び寄せた。ディフェンスでも前線から激しくプレッシャーをかけてターンオーバーを誘発し、澤邉圭太がイージーバスケットで得点するなど再びリードを拡大し、48-32で前半を終える。

後半に入っても、仙台の手が伸びてくるハードなディフェンスの前に群馬は思い通りにパスが回せずリズムがつかめない。ただ、仙台もシュートミスが目立ち、後半開始から3分間以上に渡って得点を挙げられず拮抗する展開に。それでも、仙台は澤邉とブースの連続3ポイントシュートで息を吹き返すと、ファストブレイクを2本続けて守れば、ペイントアタックから展開を作り突き離していった。そして、片岡大晴の3ポイントシュートでこの日最大の22点のリードを奪うと、勢いそのままに70-51で最終クォーターを迎えた。

追い上げたい群馬は仙台のズレをうまく突いてクォーター開始から6連続得点を挙げると、オフィシャルタイムアウト後にはマイケル・パーカーのゴール下で1桁点差まで戻したが反撃もここまで。仙台は青木保憲とトーマスが得点を挙げて悪い流れを断ち切ると、さらに青木とブースの3ポイントシュートなどで突き放して快勝を収めた。

藤田弘輝

「みんなに支えられて戦い抜くことができた」

会見で藤田弘輝ヘッドコーチは安堵の表情を浮かべ「自分たちがやりたいディフェンス強度や、チームでオフェンスをしっかりやることを表現できたのは良いことだと思います」と、この勝利を振り返った。

仙台にとってレギュラーシーズン最終戦はプレーオフ争いにも残留争いにも絡まない試合となったが「何のためにプレーするかというところで、お客さんのためにもというのもありますが、これだけ素晴らしい人間が集まったチームなので、自分たちのためにも良い形で終わるのを大事にしていたので勝ててうれしいです」と、チームの集大成として勝ち取った勝利だったことを語った。

昨シーズンから仙台の指揮を執って見事にB1昇格を果たし、今シーズンからB1に復帰して新しいチャレンジとなった藤田ヘッドコーチは今シーズンのチームをこう表現した。「何より良い人間が集まってくれて『明日も頑張ろう』と思わせてくれるようなメンバーでした。10年近くヘッドコーチをやっていて1番負けたシーズンでしたが、1番と言っていいほどこのチームの一員で戦えて誇らしかったです。みんなの存在がなかったら、今シーズンの負け方では自分は持たなかったと思っているので、支えられて戦い抜くことができたと思っています」

そして、最終的に19勝41敗で東地区最下位という結果ではあったが、決して潤沢とは言えないチーム予算の中で「よく戦ってくれた」と評価し、言葉を噛み締めながら今シーズンを振り返った。「簡単なことばかりでなく、ケガもたくさんあり、連敗もあり、悔しい負けもあり、個人的に結果を出せない選手もたくさんいたり、自分自身もすごく悩みました。それでも全員が戦い続けたチームでした。それが人生で最も大事なことだと思っていて、良いことも悪いこともたくさんありますが、戦い続けることが大事だと思うので、それを表現してくれたチームでした」

この日の観客は4,028人と大入りを記録し、今シーズン合計で10万人の動員を超えた。今後2026年に構想されている新B1リーグに向けてこのように思いを語った。「(ブースターは)クラブにとっては酸素のようなもので、なくてはならない存在ですし、新B1に行くには4,000人が必要です。今日みたいに4,000人以上集まってくれたのは大きいですし、強豪チームのように勝ち試合をたくさん見せられるシーズンではなかったですが、一緒に戦ってくれて感謝の気持ちがいっぱいです。コーチも選手もそうですが、みんなで新B1に行きたいです」

また、試合後には仙台の志村雄彦社長から来シーズンの藤田ヘッドコーチの続投が発表された。続投に向けて藤田ヘッドコーチは「やりたいことは変わらないので、どれだけ上積みできるかだと思います。バスケットの質をどう上げていくかにフォーカスしていって、8月から始まる練習をどうしていくか、明日から考えていきます」と展望を話す。

三遠ネオフェニックスや琉球ゴールデンキングスでチャンピオンシップ出場を経験している藤田ヘッドコーチにとって、仙台での2シーズン目は勝利をなかなか勝ち取れず苦しんだことも多かっただろう。しかし、勝利以上の経験をチームメートと共に得られたシーズンになったことも確かだ。クラブや選手からの信頼も厚い藤田ヘッドコーチと、多くのブースターから愛されている仙台の来シーズンの躍進を期待したい。