不祥事から再起するユドカ「逆境から成長する1年にしたい」
ロケッツがイメイ・ユドカのヘッドコーチ就任会見を行った。
2020-21シーズンが始まってすぐにジェームズ・ハーデンが出ていったのを機にチームは低迷し、3年連続で勝てない時期を味わった。それでも、低迷は計算されたもので、2023-24シーズンからは新たなフェーズに入る。その最初の象徴がユドカとなる。
今回の会見には、ラファエル・ストーンGMだけでなく、オーナーのティルマン・フェルティッタが同席した。2017年にロケッツのオーナーとなった彼は、レストランチェーンとカジノを擁し、M&Aでビジネスの規模を拡大し続けてきた経営者で、ロケッツの意思決定は息子のパトリック・フェルティッタに任せて現場介入をほとんどしてこなかった。
その彼が今回、チーム買収を決めた時以来6年ぶりに会見に出た。これは今回のユドカ招聘がロケッツにとっていかに意味のある決断かを端的に示すことだ。
会見の冒頭でフェルティッタは「今日はロケッツにとってエキサイティングな日だ」と話し始めた。
「3年前、チーム戦略にかかわるメンバーとともに厳しい決断を下した。NBAは他のスポーツと違い、中位グループに入るとそこから抜け出せなくなる。ハーデンはそれを知っていて、負けたくないから移籍を選び、それはチームに大きな影響を与えた。一選手の決断がチームのすべてを変えてしまうのは驚きだったが、そこで我々はこの苦しく恐ろしいプロセスを選択することを決めた。厳しい時期だったが、一緒に耐えてくれたファンの皆さん、我々を見放さなかった地元のメディアには心から感謝している」
「今のロケッツには若いスター候補がたくさんいて、4人か5人は数年後にはオールスターになると期待している。最初の2年間はひどいプレーもあったが、すごく成長してもいる。ストーンGMはドラフトで、完璧ではなくとも素晴らしい仕事をしてきた。スティーブン・サイラスもチームを成長させてくれた。これからロケッツは次のフェーズに進む。スター選手を育て、フリーエージェントを補強する。キャップスペースは6000万ドル(約78億円)ある。どんなチームになるかワクワクしているよ。そして、正しい道を歩むために新たなコーチを迎えることになった」
「これまでの第1フェーズでは這い上がってきた。今日からチームは第2フェーズに入る。這い上がってきた我々は歩きだし、そして走っていく」
『The Athletic』は今回のヘッドコーチ選びの過程を関係者から詳しく聞き取っている。ロケッツが面談したうち有力な候補はジェームズ・ボーレゴにフランク・ボーゲル、そしてユドカ。ユドカは公式な面談の前夜にストーンと個人的に会い、互いのバスケットボールへの考え方について長時間話し合った。翌朝から始まった面談は夜遅くまで続き、この時点でストーンGMもパトリック・フェルティッタも「ユドカで決まり」との確信に至ったそうだ。このタイミングでラプターズがニック・ナースを解任したが、ロケッツ首脳陣の受け止め方は「ナースがフリーになった」ではなく「早く決めなければユドカがラプターズに取られるかもしれない」だった。
ユドカは不祥事でセルティックスを離れることになったが、ロケッツは精査した上で「問題なし」と判断した。会見で最初にユドカに向けられた質問もこのことで、ユドカは「数カ月前に発表した声明で私は謝罪したが、今も後悔し続けている」と語る。「この1年は自分自身を見つめ、反省しながら成長の機会を探してきた。それが自分をより良いコーチ、リーダーにすると思う。これからは逆境から成長する1年にしたい」
ユドカとストーンは最初に知り合った夜に意気投合した時点で、今オフのロケッツがどんな補強をするかを細部まで話し合っていきた。ヘッドコーチ就任が正式に決まり、その延長線で議論は進んでいる。ドラフト、フリーエージェント、トレードと、このオフのロケッツは大きく動くことになる。
フェルティッタの言う第1フェーズは再建期で、第2フェーズで勝ち始め、第3フェーズで優勝を狙う。ユドカはこれに自分なりの解釈を加え、これから取り組む第2フェーズは「一貫性を持ってプレーできるようになること」と語った。プレーオフが盛り上がる中、ロケッツはすでに新シーズンに向けて精力的に動き始めている。