並里成

並里の巧みなゲームメークでゾーンディフェンスを攻略

4月30日、群馬クレインサンダーズとファイティングイーグルス名古屋の第2戦が開催された。第1戦でインサイドを制圧し大勝した群馬が、この日もリバウンドやファストブレイクで圧倒して88-79で勝利を収めた。

序盤はFE名古屋の激しいディフェンスの前に良い展開が作れなかった群馬だったが、マイケル・パーカーのアウトサイドシュートを皮切りに、スティールからのケーレブ・ターズースキーのインサイドプレー、再びパーカーの連続得点で9-0と走り突き離しにかかる。この間、ディフェンスでもFE名古屋のシュートミスやトラベリングを誘発したが、徐々にジェレミー・ジョーンズや石川海斗の3ポイントシュートが当たりだし差を縮められる展開に。セカンドユニットの群馬はペイントをしっかりアタックし2ポイントシュートを量産するが、相馬卓弥に3ポイントシュートを許し追い上げを食らってしまう。

群馬は第2クォーター最初のオフェンスでターズースキーがペイントで得点を挙げると、スティールからのファストブレイクでジャスティン・キーナンがダンクと一気に流れを持ってくる。早くも前半2個目のタイムアウトを取ったFE名古屋に取らせたが、菅原暉の3ポイントシュートなどオフェンスの手を緩めない。しかし、その後は3ポイントシュートへのチェックが甘くなり連続で得点を許してしまう。並里がクリエイトしてFE名古屋のゾーンディフェンスを攻略してリードを広げるかに見えたが、3ポイントシュート攻勢のFE名古屋の成功率を下げることができずに48-44と4点リードで前半を終えた。

後半に入っても、並里のプレーメークとアシストが冴え渡る。ピック&ロールからうまく展開を作り、ターズースキーの連続得点をお膳立て。しかし、前半から高確率で決まっていたFE名古屋の3ポイントシュートも衰えず、群馬は後半開始2分に逆転を許してしまう。並里が気を吐き、ミドルジャンパーに続いて3ポイントシュートも成功させてリードを渡さず、さらにアキ・チェンバースと八村阿蓮の3ポイントシュートを立て続けにアシストした。それでも、ドライブに対応しきれなかった群馬はフリースローで失点を続け、3点リードで最終クォーターを迎える。

FE名古屋の裏を突くカットに対応できず連続得点を許してしまい先発メンバーに戻すが、石川に3ポイントシュートを決められて逆転を許す。群馬はタイムアウトを使って悪い流れを切ると、インサイドをしっかり攻め立てターズースキーの連続得点で再逆転。オフィシャルタイムアウト後、堅実なパス回しを見せた群馬は菅原とパーカーが要所で得点しリードを広げる。さらにスティールからファストブレイクを成功させ、インサイドをしっかり固めてバイオレーションを誘発。その後、時間と得点差をうまくコントロールして、ホーム最終戦を勝利で飾った。

並里成

並里「試合の流れをファンの皆さんが引き寄せてくれました」

第1戦の圧倒する試合展開とは違い、第2戦は群馬が引き離しにかかるもFE名古屋の追い上げを受けた。水野宏太ヘッドコーチは我慢の展開をこう振り返る。「1対1のところで崩されたり、外のシュートを決められたり、自分たちが求めているパフォーマンスが出ていなかったですが、チーム一丸となって最後まで戦えました」

「チーム一丸」という水野ヘッドコーチの言葉の通り、アシスト数は31本を記録し、リーグ1位を誇る群馬の平均アシスト数23.0を大きく上回った。中でも並里は的確なプレーメークからパスを供給し、シーズンハイとなる12アシストを記録した。特に印象的だったのが、第2クォーターのオフィシャルタイムアウト後のFE名古屋のゾーンに対する並里のプレーだ。前日、ペイント内で48失点を喫してるFE名古屋はインサイドを固めるべく2-3ゾーンを敷いた。しかし、並里はペイント内へ簡単に侵入し、パーカーのイージーバスケットを演出。次のプレーではエルボーでディフェンスを引きつけコーナーの八村へパスを送り3ポイントシュートをアシスト。そして3回目のゾーンアタックでは自身へのマークが緩いと見ると、トップの位置から3ポイントシュートを成功させた。

3ポゼッション続けてゾーンディフェンスが成功しなかったFE名古屋だったが、ゾーンを継続する選択をした。ここで並里が最初のゾーンアタックと同じプレーでパーカーへノールックパスを出して再びイージーバスケット。並里のプレーメークによってFE名古屋の目論見が崩れた。並里は「ドリブルハンドオフをやろうと話をしていて、その中でシンプルにレーンが見えて、ペイントに入ったら選択肢がたくさんあったという感じです」とゾーンアタックについて振り返る。

得点とアシストは好調だったものの、前日に続き並里は5本のターンオーバーを犯した。「昨日も今日もターンオーバーが多かったので、自分の判断ミスだったり、ボールを持ちすぎたりしたので、今後に繋げていきたいと思います」と並里は語り、最終節となる仙台89ERS戦も気を引き締めて臨む構えを見せた。

4月15日に柿落としを迎えた「OPEN HOUSE ARENA OTA」でのホームゲームは今節が最後。試合後のコート1周の際には、いつも以上の笑顔でブースターに手を振る並里の姿があった。そして「前に比べると5,000人のアリーナは雰囲気がガラッと変わりますし、シュートが入った時に歓声が沸くことで試合の流れをファンの皆さんが引き寄せてくれました。アリーナができてホームの力を感じました」と、ホーム最終戦を振り返った。

生まれ育った沖縄の地とクラブから離れて、新たな挑戦となった並里の今シーズンが間も無く終わろうとしている。群馬のブースターは皆一様に「スーパースターが群馬に来てくれた」とチームの誇りとして並里を語り、一緒に戦ってきた。新アリーナの誕生でクラブにとって転換期となった今シーズン、並里がチームやブースターに与えた影響は計り知れない。ホーム最終節を2連勝で終えて笑顔で帰路に着くブースターと、会見で開口一番「勝ててよかったです」と話した並里の笑顔が重なり、スローガンである『ONE』が結実したのを感じた。