齋藤拓実

昨シーズンの王者相手にシーズン4戦全勝で逆転での地区優勝に望みを繋ぐ

名古屋ダイヤモンドドルフィンズがホームで琉球ゴールデンキングスと対戦。終盤までもつれる激闘をここ一番の決定力で上回り86-79で制した。これで西地区首位対決を連勝で終え、首位の琉球とのゲーム差を1に縮めた。直接対決は4戦全勝と上回っていることで同率になった場合は名古屋Dが優位と、他力本願ではあるが逆転での地区優勝に少なくない可能性を残した上でレギュラーシーズン最終節を迎える。

試合は前半からともに強度の高いプレーを続けていく中で、オフェンスでは同等のオープンシュートのチャンスを作り出す。その中で、シンプルに決め切った本数の差によって名古屋Dが42-35とリードしてハームタイムを迎える。だが、第3クォーターの出だし、琉球は沈黙していたコーナースリーを連続で決めると、ガード陣のドライブにアレックス・カークがうまく合わせてダンクを叩き込むなど、チームオフェンスが機能していくことで54-55と肉薄して勝負の第4クォーターを迎えた。

試合は残り4分半で名古屋Dの2点リードと白熱した展開が続く。しかし、齋藤拓実の巧みなゲームメイクでボールをうまく散らし、チーム全員が連動したオフェンスを継続していく名古屋Dに比べ、琉球は個での攻めが目立った。また、名古屋Dが我慢強くディフェンスを続けたのに対し、琉球はここ一番でシューティングファウルを犯すなど、プレーの遂行力で徐々に差が出た。その結果、終盤は常にリードを保ち、主導権を握り続けた名古屋Dが粘る琉球を振り切った。

ショーン・デニス

デニスHC「特に第4クォーターにおけるジョシュア・スミスのリバウンドが素晴らしかった」

名古屋Dのショーン・デニスヘッドコーチは「チャンピオンシップレベルの素晴らしい試合でした。琉球が何故チャンピオンなのか、地区7連覇を狙うチームなのかを示す戦いを見せました。ウチはその相手に立ち向かい、琉球に流れが行きそうな時に押し返せたことを誇りに思います」と試合を総括する。

そして指揮官は勝負を分けた大きな要因として、ベンチメンバーの活躍を挙げた。「この週末、ベンチの力を発揮できたのはうれしかったです。今日は特に第4クォーターにおけるジョシュア・スミスのリバウンドが素晴らしかった。中でもオフィシャルタイムアウト明けの活躍によって、スコット(エサトン)を数分間休ませることができたのは勝ちに繋がったと思います」

また、本日15得点8アシストと攻撃の起点としてチームを牽引した齋藤は、このように今回の連戦で見せたパフォーマンスに大きな手応えを得ている。「昨日に続き、今日もチャンピオンシップのような試合になりました。その中で自分たちは良い準備をして、強い気持ちでプレーできたと胸を張って言えます。試合を通してうまくいかない時間帯はあっても、自分たちにフォーカスを当て続けることで、相手に流れがいきそうなところで踏ん張れました。相手どうこうではなく、自分たちはCSに行くにふさわしいチームであると感じられました。シーズン終盤でこういった試合ができたのは良いことだと思います」

そして、琉球相手に今シーズン4戦負けなしで終えたことを「琉球さんは西地区を6連覇中で、これまでシーズン終盤になるにつれて完成度が増している姿を何度も見てきました。その相手に同一カード連勝できたこと、シーズンを通して負けなかったことは誇りに思っていいです」と続ける。

齋藤拓実

CSに向け「クォーターファイナルに負けたリベンジのことしか考えていない」

ここに来て右肩上がりで勢いを増している名古屋Dだが、過去2シーズンはCS直前に故障者が続出し、最後は外国籍ビッグマンが1人、もしくは不在といった本来の力を発揮できない状態を余儀なくされ、クォーターファイナルで敗れている。しかし、今シーズンはまだ2試合残っているが、フルメンバーで臨める状況だ。

今、名古屋Dはようやくシーズンを通して積み上げてきた力を出せる陣容でポストシーズンを迎えられる可能性が高い。このことを齋藤に聞くと「率直に今の状態でできるのであればうれしいです」と語る。

「過去2シーズン、外国籍選手がいなくなる大きい穴が生まれました。各選手、それぞれ小さいケガはあっても、これまでの反省を生かし、疲労の管理をしっかりしながら練習しています。残り1週間も質の高い練習、良い準備をして(最終節の)佐賀(バルーナーズ)さんとの試合に臨みます」

そして、デニスヘッドコーチも、「とても楽しみです。CSに向けこのまま健康でいられることを願っています。それができればウチのベンチの強さが出せますし、この2週間はベンチの力を証明しています。ベンチが元気だと、層の厚さで試合を通して相手にプレッシャーを与え続けられることができます」と、喜びと確かな自信を見せる。

さらに指揮官は、この進化は過去の苦しい経験を糧にしたからこそと強調する。「ただ、過去2シーズンのケガ人が多い状況を乗り越えたからこそ、今のウチの粘り強さがある、戦い続ける力がついたと思います」

過去2年の不運を全く言い訳にしなかったからこそ、今の名古屋Dは心身ともによりたくましいチームとなった。齋藤はCSへの意気込みをこう語る。「単純に楽しみな部分もありますが、それよりも過去2シーズン連続でクォーターファイナルに負けたリベンジのことしか考えていないです。メンバーが不足していたとはいえ本気で勝ちにいって、昨年は琉球さんに負けて涙を流しました。リベンジの思いが一番強いです」

名古屋Dが逆転で地区優勝ができるかは最後まで分からない。ただ、今のチームがCSに出るどのチームとも対抗できるリーグ屈指の選手層の厚さ、粘り強さなどを備えていることは間違いない。