渡嘉敷来夢が語るバスケ部時代vol.5「バスケットをやっているみんなで盛り上げて、メダルを取りに行きましょう」

2017/01/03
Bリーグ&国内
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文=三上太 写真=三上太、野口岳彦、Getty Images

『バスケット・グラフィティ』は、今バスケットボールを頑張っている若い選手たちに向けて、トップレベルの選手たちが部活生時代の思い出を語るインタビュー連載。華やかな舞台で活躍するプロ選手にも、かつては知られざる努力を積み重ねる部活生時代があった。当時の努力やバスケに打ち込んだ気持ち、上達のコツを知ることは、きっと今のバスケットボール・プレーヤーにもプラスになるはずだ。

PROFILE 渡嘉敷来夢(とかしき・らむ)
1991年6月11日生まれ、埼玉県出身。193cmの長身ながら、走って跳べる運動神経抜群のエース。Wリーグでは『女王』JX-ENEOSサンフラワーズの主力として活躍。また日本人3人目のWNBAプレーヤーとして、2年連続でシアトルストームでのプレーを経験した。昨年のリオ・オリンピックでは攻守にフル回転して日本代表のベスト8進出に大きく貢献した。愛称はタク。

先輩への感情は「負けたくない」と「一緒にやれてうれしい」

ウインターカップではメインコートになるとスタメンが一人ひとり呼び出されますよね。その時、井上先生にハグしたんです。ギュッと(笑)。あれは井上先生が大好きだからやったことです。バスケットの時は怖いですよ。でも、どんなにコートで怒られても、自分から先生のほうに歩み寄っちゃうんですよね。それは自分のために怒ってくれているんだって思えるからです。

井上先生自身も、自分に対して「絶対に天狗にならないように」という思いで指導されていたと思います。期待されているからこそ怒られるわけで……。もちろん怒られるのは嫌ですよ。嫌なんだけど、期待されたら応えたいというか、「ここはあなたが決めなきゃいけないところだよ」と言われると、自分がやらなきゃいけないっていう責任感みたいなものは、昔からあったと思います。

中学で1年生は基本的に校庭で練習だったのですが、「渡嘉敷だけ体育館に入れ」と言われて、3年生と一緒にバスケットをしていたんですね。その時も「自分はこの人たちの力になれるのかな……だったら頑張ろう」という気持ちで練習をしていました。

基本的に自分は「先輩たちのほうがうまい」と思っているんです。その人たちに負けたくないし、一方でその人たちと一緒にできることに喜びも感じてもいたんです。もしかしたら同級生からは妬みのようなものを持たれていたかもしれませんが、そこは実力だから仕方がないよね、と。ただ自分から同級生や後輩たちを下に見ることは絶対になくて、同級生が羨ましいと思うのであれば、「一緒に頑張ろう!」と盛り上げるタイプだと自負しています。彼女たちがヘコんで文句を言っていたら「そんなこと言っていないで、練習しようよ!」って言うタイプです。

つまり先輩であれ、同級生であれ、後輩であれ、やるんだったらみんなで一緒にやりたいんですよ。例えば自分が上級生で、後輩たちがファンダメンタル(基礎練習)をやっていたとしますよね。上級生は別メニューでもいい。周りから「来夢はできるから、やらなくていいじゃん」って思われても、自分は後輩たちと一緒にやると思います。

できるかできないかではなく、一緒にやることに意味がある

どんな練習でも意味がないものはないし、できるかできないかではなく、一緒にやることに意味があると思っているから。たとえ自分はできていると思う技術であっても、練習すればもっと上手にできるようになるわけでしょう。別に後輩たちができないところを教えてあげよう、という意識ではありません。ただ単に自分も後輩たちと一緒にその技術を……それが基礎技術であっても、改めて自分もそれを高めながら、一緒に取り組むことが楽しいんです。自分だけができればいいのではなく、チームメイト――先輩も後輩もなく、みんなで高めていきたいんです。

だから今、自分はWNBA(全米女子プロバスケットボールリーグ)に行って、周りからすごいとか言われるけど、自分はそれでいいとは思っていないんですね。それこそ今は出身高校に関係なく、同年代の選手がWリーグで活躍しています。そうしたみんなのレベルが上がればWリーグ全体のレベルが上がって、自分より年下の選手たちも「来夢さんたちの代には負けたくない」って思うから、余計にリーグ全体のレベルが引き上げられる。

「タクさん、すごい!」じゃなくて、みんなで一緒に日本のバスケットボール界を引っ張ろうよって思っています。自分だって、リーグの先輩たちに負けたくないって思いを持って練習をしているし、そうした先輩たちと日本代表などで一緒になれることもうれしくて、余計に頑張っちゃうんです。

上の人に負けたくないっていうのは、兄の影響が大きいかな。兄にはいつも負けたくないって思っていました。実際、何でも勝っていたと思います(笑)。ただ、それでも自分のほうが上だなんて思ったことは一度もないです。やっぱり兄は兄ですから。それは先輩に対しても同じで、どんなに自分のほうが上手くても、上の人は上の人なんです。もちろんコートに立てば、年上も年下も関係ないですよ。実力で評価される世界だから。ただコートを離れたら、上の人は上の人と見ながら、仲良くするって感じですね。

頑張るのは、次のオリンピックでメダルが欲しいから

今の自分の夢は、以前から公言している「世界の渡嘉敷になる」っていう意味でも、世界のトップ5というか、世界中で「女子バスケット選手で誰がすごい?」って話題になった時に名前の挙がる選手になりたいですね。

プレー的には、どこがゴールか自分でも分からないけど、自分がうまくなりたいと思っている以上は、もっともっと上を目指していきたいです。いくら周りの人から「世界で活躍できているし、十分だよ」って言われても、自分が満足していないから、もっと上を目指したいんです。

だって、いまだに「自分って下手だな」って思うことがありますもん。「なんで、こんなセンスのないプレーをするんだろう?」って。試合をビデオなどで見る時は文句しか言っていません(笑)。たまに「おお!」って思うこともあるけど、基本的には「普通だな……もっといい時があるじゃん」って自分に言い聞かせています。そして「もっとミスを減らせるだろう?」って。

それってやっぱり次のオリンピックでメダルが絶対に欲しいからなんです。その夢を追いかけながら、その夢に向かって頑張っていたら、オリンピックでの成果も必然的についてくるのかな。

だから学生のみなさんにメッセージを残すとしたら、自分もめちゃくちゃ頑張るから、みんなも2020年のオリンピックを意識してほしい、ってことです。だって自分の国でオリンピックが開催されて、そこでプレーできるんですよ。その権利を、年齢に関係なく、バスケット選手なら誰もが持っているんです。「自分にもチャンスがあるんだ」って思って、日々の練習に取り組んでもらいたいですね。

リオ・オリンピックのメンバーや、今、Wリーグで活躍している選手だけにチャンスがあるんじゃなくて、あなたにもチャンスはあるんです! バスケットをやっているすべての人で、バスケット界を盛り上げて、みんなでメダルを取りに行きましょう。それが今、自分が一番目指していることです。

バスケット・グラフィティ/渡嘉敷来夢
vol.1「陸上は背面跳びが怖くて、バレーは服装のルールが嫌で、バスケットを選択」
vol.2「悩んだ末に『やるからには本気でやってみたい』と井上先生のいる桜花学園を選択」
vol.3「苦手だったポストプレーを習得したら、バスケットがどんどん楽しくなってきた」
vol.4「最高のチームメートがいたことで、『負けない』と信じて戦うことができた」
vol.5「バスケットをやっているみんなで盛り上げて、メダルを取りに行きましょう」