大倉颯太

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部

立ち上がりのファウルトラブルに「反省です」

今日、インカレ男子は準々決勝の4試合が行われ、ベスト4が出揃った。関東大学リーグを制して優勝候補と期待される東海大は明治大と対戦。インカレに向けて徹底した準備を行ってきた明治大のリーグ戦からの変化を陸川章監督は「脅威だと感じた」と語るが、油断なく相手をスカウティングして、コート上でもチームバスケットを実践することで上回った東海大が84-51の快勝を収めた。

1年生ながら先発ガードを務める『スーパールーキー』大倉颯太は、第3クォーター終盤に勝利を決定付けるド派手なダンクを決めて大田区総合体育館に今日一番の興奮を呼び込んだ。ただ、今日の彼は試合の立ち上がりにファウルトラブルとなり、試合後のコメントはまずその反省から始まった。

「入りでスタートで任されている中、役割を果たす前にファウルをしてしまいました。チームの流れも悪くなるし、簡単にベンチに戻るのはあってはならないこと。ハードにディフェンスするのはもちろんですけど、すぐファウルしてしまったのは反省です」

それでも明治大は立ち上がりから攻守に激しいプレーで主導権を取りに来ており、ここで後手に回らないためにはタフなプレーが必要だった。「ああいうコンタクトでファウルになるのであれば、アジャストしなければいけません」と大倉は言う。「明日もアグレッシブに行くのはもちろんですが、ファウルするにしても1つに抑えます。今日も後半は激しいディフェンスでコンタクトがあってもファウルは取られませんでした。出だしからアグレッシブに来る相手にどれだけソリッドディフェンスできるか。明日はそこを頑張りたい」

大倉颯太

「責任を感じてゲームをクリエイトしたつもりです」

それでも、早々に2つ目の個人ファウルを犯した大倉がベンチに下がってからが、東海大の強さの見せどころだった。陸川章監督が「全員で戦うチーム」と胸を張るように、ベンチから出るメンバーが先発と遜色ないプレーを見せる。大倉に代わって入った寺嶋良を始め、津屋一球、佐土原遼がエナジー全開のプレーで明治大を飲み込んでいった。

2つ目のファウルでベンチに下がる瞬間は「何も考えられなかった」という大倉だが、ベンチで気持ちを切り替えた。「僕みたいに大事なゲームで簡単なミスを犯してしまうってことは、どこかに甘さがあったんだと思います。自分としてはなかったつもりでも、やっぱりあったんじゃないか。ベンチから出てくる選手、特に上級生にはその甘さがありませんでした。僕は気持ちを切り替えてプレーできるよう準備をしながら、応援で盛り上げようとしていました」

40-27で始まった後半、大倉に再び出番がやって来る。その第3クォーターを25-10と圧倒。大倉は司令塔としてゲームの重要な局面をコントロールした。「大事な場面でみんな僕を信じてボールを任せてくれました。僕もその責任を感じてゲームをクリエイトしたつもりです。周りが僕に託してくれる、それをありがたく感じているし、責任を果たさなきゃいけない。立ち上がりはファウルしてしまったんですけど、そこから切り替えて、自分に向き合って戦うことができました。そこはリーグ終盤から、自分ができるようになってきたと感じる部分です」

明治大はなおもあきらめず、大倉を止めることで逆転の芽を見いだそうとしていた。だが、ここで大倉のテクニックが生きる。ピック&ロールからのスプリット(2人のディフェンスの間を割って抜くスキル)を再三決めて、ボールに激しくプレッシャーを掛ける相手ディフェンスの裏を突いた。「後半はそのアジャストの仕方として、技を見せたわけじゃないですけど、アタックできました。ピック&ロールで相手のディフェンスを引き出して間を抜く、ボールに激しく来るディフェンスの弱さを練習通り突くことができたと思います」

残り2試合でもダンク「チャンスがあれば狙います」

こうして粘る明治大を突き放した第3クォーター終盤に飛び出したのが、184cmの大倉による豪快なダンクだ。陸川監督が「あの身長の選手がやるんだからすごいでしょう。メディアの皆さんも、是非いっぱい取り上げてやってください」と頬を緩めたシーンを、大倉は「気持ち良かったです(笑)」と振り返る。だが気持ち良かったのはダンクだけでなく、そこに至るまでの一連の流れも含めてのことだ。

「その1ポゼッション前のオフェンスで、練習から厳しく言われていた『2for1』を遂行しました(クォーターの最後をオフェンス、ディフェンス、オフェンスで終わるよう残り時間をコントロールすること)。ダンクの前のディフェンスでみんなが連動してタフショットを打たせての攻撃で走った時、クロックを確認したんです。13秒あったらみんなが戻って10秒でオフェンスできると思ったのですが、時計を見たら9秒だったので『行っちゃっていいな』と」

「連動したディフェンスで守れたので雰囲気も良かったです。だからあそこはダンクに行かなきゃいけないところだったと思います」と大倉はこのプレーを振り返る。

だからこそ、「残る2試合でもダンクを狙いたい?」と問われて臆すことなく「チャンスがあれば狙います」と言い切ることができる。「チームディフェンスから来た流れなので、まずはディフェンスから頑張ります」

東海大が目指すのはインカレ制覇。ゴールまであと2勝のところまで来た。「一戦一勝で、優勝にこだわってあと2試合を戦います」と大倉は言う。ファウルを避けつつ激しく当たるディフェンスにも、スキルを生かしたクリエイトにも、そしてダンクにも──。残る2戦、急成長を続ける大倉への期待は高まるばかりだ。

明日の男子準決勝も大田区総合体育館で。11時40分から専修大vs日大、13時20分から東海大vs筑波大の2試合が行われる。