平野実月

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部

筑波大のプレッシャーをはね返したポイントガード

インカレは大会5日目。女子は準決勝の2試合が行われた。第1試合を勝利した東京医療保健大に続き、決勝へ駒を進めたのは愛知学泉大だった。

駒沢から大田区総合体育館へと会場を移して行われた筑波大との準決勝、立ち上がりは動きが重くて相手の先行を許すも、時間が経過するごとに本来のバスケットが出てくる。ディフェンスからリズムを作り、早い仕掛けからの3ポイントシュートで追い上げを開始。第2クォーターに28得点を奪う猛攻で42-35と逆転して前半を折り返した。

後半、司令塔の高辻真子を起点に挽回を試みる筑波大に流れがいきそうなシーンは何度かあったが、愛知学泉大のディフェンスは崩れなかった。相手にビッグプレーを決められても動じることなく、リードを保ち続ける安定感の中心にいたのは2年生ポイントガードの平野実月だ。桜花学園の先輩である高辻と激しいマッチアップを繰り広げつつ、下級生ながらチームメートを鼓舞し、試合をコントロールし続けた。

79-62で筑波大を退けたこの試合を、平野はこう振り返る。「最初は固まってあまり動きが取れませんでしたが、後半からは学泉らしいディフェンスからブレイクが出ました。ディフェンスからリズムを作れたことが勝因だと思います」

上級生に指示を出す立場だが、「思ったことをもっと言ってほしいと先輩が言ってくれます。みんなが言い合えるようなチームを目指して日々努力してここまで来たし、自分も出してもらっている責任感を持って、ガードとしてチームに貢献したいからこそ声を出せます」と言う。

愛知学泉大

「負けるとは全然思わず、大丈夫だと思っていた」

平野がメインのポイントガードを任されるようになったのは今年から。それでもケガもあり、実際にコートでチームを引っ張るのはこのインカレからだ。平野は桜花学園出身で、自分の代である2年前には高校3冠を達成している。しかし、桜花学園では下級生の山本麻衣に先発を譲り、ベンチに回っていた。持ち前のスキルとリーダーシップを発揮できる場をようやく得て「試合が楽しいんです」と笑みを見せる。

「桜花の時は控えだった分、ゲームに出たいという気持ちがものすごく強くて。それで学泉に来て出させてもらって、自信を持てるようになりました。技術を磨いてもっと上手くなりたいですが、今はとにかくバスケットを楽しむことができる環境にいられてすごくうれしいです」

その平野は、後半に筑波大の追い上げるプレッシャーに直面しても「焦りはなかったです。負けるとは全然思わず、大丈夫だと思っていました」と平然としていた。それはプレーにも表れており、筑波大もディフェンスから主導権を奪おうと高い位置から激しくプレッシャーを掛けたのだが、平野は安定したボールハンドリングでそれをかわし続けた。

インカレでは長らく関東のチームが上位を占めているが、その牙城を崩すことにどのチームも強い意欲を持っており、愛知学泉大も例外ではない。「インカレは関東のモノじゃない、どこかで関東を崩さないと関東のモノになってしまうので頑張ろうと私たちはずっと言っています」

優勝まであと一つ。東京医療保健大のイメージは「インサイド」と平野は言う。「ハイピック、ピックからダイブとかハイ&ローが多いので、そこを全員でカバーして守れるようにしていきたい」と意気込みを語りつつ、最後は「相手がどこであれ、学泉らしいバスケットをすれば絶対勝てると思っています。自信はあります」と笑顔で締めた。

愛知学泉大が2000年以来となるインカレ女王となるか、前年女王の東京医療保健大か。決勝は明日15時30分から、大田区総合体育館で行われる。