デイミアン・リラード

シーズン残り7試合、リラードを始め主力を出場させず

トレイルブレイザーズは32勝43敗で西カンファレンスの13位に沈み、プレーイン・トーナメント圏内までは4.5ゲーム差。数字上の確率は残っていてもすでにゲームオーバーで、残る7試合にはデイミアン・リラードを出場させないようだ。アンファニー・サイモンズ、ジェレミー・グラント、ユスフ・ヌルキッチも同様で、もうプレーしない見込みだ。

最後はタンクし、下から数えて5番目か6番目でシーズンを終える。NBAドラフトで全体1位指名権を引き当てる確率は、ワースト5位であれな10.5%、ワースト6位なら9%。願わくばこれを引き当ててビクター・ウェンバニャマを、さらにニックスから譲渡される1巡目指名権で即戦力を補強するのがチームの目論見だ。

しかし、話はもっと複雑だ。ブレイザーズは2021年オフに指揮官テリー・ストッツを解任し、昨シーズン途中にはCJ・マッカラムを放出。ストッツが築き上げた『リラードとマッカラムのチーム』はそのサイクルを終えたが、リラード中心のチームであることに変わりはなかった。

そのリラードが32歳になり、昨シーズンは29試合にしか出場できず、今シーズンもこのままだと58試合の出場に終わる。レギュラーシーズンの大詰めで、あるいはプレーオフで、満身創痍でもその得点能力でチームを引っ張ってきたこれまでの『神がかり的な力』は失われつつあると言わざるを得ない。

今オフは、そのリラードについての決断に迫られる。リラードはクラブと街とファンに絶対的な忠誠を誓っており、その姿勢を最大限に尊重して2027年までの大型契約を与えている。だが、この2シーズンでケガの増えた彼に、36歳になる4年後に6320万ドル(約82億円)を保証している。『生涯ブレイザーズ』を実現する代償は、ブレイザーズにとって非常に大きなリスクをはらんでいる。

リラードはケガこそ増えたが、今シーズンも32.2得点、7.3アシストとコートに立てば相変わらずの実力を発揮し、キャリアハイを塗り替える1試合71得点のパフォーマンスも見せている。『自分以外は再建』のブレイザーズを引っ張る重みは年々増しているが、力のあるチームの『優勝のラストピース』としては非常に魅力的なはずだ。大きすぎる契約はネックになるが、このタイミングでトレードできなければ状況は年々厳しくなっていく。

サイクルを終えたチームは完全に解体されるのがNBAでは主流だ。多くのチームが、感傷を抜きにブレイザーズとは逆の選択を行ってきた。例えばグリズリーズは2019年オフに再建へと舵を切ることを決断し、フランチャイズプレーヤーのマイク・コンリーとマルク・ガソルを放出。その年のドラフトで指名したジャ・モラントを中心にチームを再建した。直近では昨夏のジャズがドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアを放出し、1年で将来性のあるチームへと生まれ変わっている。

ポートランドのファンの圧倒的多数が、リラードのトレードには同意しないだろう。リラード自身も、自らのNBAプレーヤーのあり方として、『勝つための移籍』をポジティブには考えていない。だからこそ判断は難しいのだが、今ブレイザーズが一番やってはならないのは『リラードのトレードをハナから検討しないこと』だ。今後もリラード中心のチームでやっていくにしても、それはすべての選択肢を考慮した結果でなければならない。

情に棹させば流される──とにかくNBAのチーム作りは難しい。