ディアロン・フォックス&タイリース・ハリバートン

キングスを引っ張った2人、離れ離れになってオールスターへと成長

1年前までチームメートだったディアロン・フォックスとタイリース・ハリバートンは、2人揃ってオールスターに初選出となりました。トレードの当事者であったドマンタス・サボニスも選ばれており、各選手の活躍を際立たせることになった稀に見るトレードだったと言えます。

若手有望株の一人にすぎなかったハリバートンは、オールスターのサボニスのトレード相手に『抜擢』された形でしたが、1年が経過した今ではすべてを掌握する絶対的なポイントガードとしてペイサーズに君臨しています。19.9得点、10.1アシストという素晴らしいスタッツだけでなく、トランジションにスローダウン、パッシングオフェンスにエースムーブとチームのリズムを巧みに変えていくゲームメーク能力の高さも魅力的です。

そのハリバートンの相棒となるガードには、同じく判断力の高さが目立つアンドリュー・ネムハードが多彩なオフェンスを構築するためのサポート役として収まっています。アシスト王を争うハリバートンの相棒としては、フォックスのように得点力のあるガードが好ましいと考えられていましたが、エースとしての責任を負ったハリバートン自身が『自分で点を取りに行く』意識が高くなり、特にリードされている展開では得点が増えます。

チームの全権を担うことでハリバートンのポテンシャルが引き出され、オールスターに選出へと至りました。

一方のフォックスはプレーメークの役割をサボニスに任せることが多く、キングスはサボニス中心のオフェンスを展開しています。24.8得点、6.2アシストは素晴らしいスタッツであるものの、平均30得点を超えるデイミアン・リラードやシェイ・ギルシャス・アレクサンダーとのオールスター選出争いでは後塵を拝し、ケガ人の代役としての出場になりました。しかし、このスタッツはフォックスの得点力の本質を示しているとは言い難いものがあります。

32勝25敗と7つの勝ち越しがあるキングスですが、残り5分で5点差以内の接戦、いわゆる『クラッチタイム』で18勝13敗と5つも勝ち越しており、好調の理由は接戦で勝ち切れることにあります。しかも、リーグ最高の11.6得点、フィールドゴール成功率53.4%とオフェンス力で勝っているのは明確で、このクラッチタイムでフォックスは5.5得点、フィールドゴール成功率58.8%と圧倒的な結果を示しています。接戦に強いキングスの特徴は、フォックスの勝負強さがすべてといっても過言ではありません。

個人技が中心となる時間帯にスピードでぶっちぎるだけでなく、ストップからのフェイダウェイ、フェイクからのステップワークと多彩なフィニッシュで、フォックスは『分かっていても止められない』選手になってきました。そのプレーの前提にはインサイドにスペースを作り、コンビプレーを生み出してくれるサボニスとの関係性があり、試合全体におけるサボニスの貢献度と、試合を決めるフォックスの貢献度が上手く絡み合っています。

今回のオールスターは試合当日にチーム分けが決められることになります。袂を分かち、ともにオールスターへとステップアップした2人のポイントガードがどのようなケミストリーを見せるのか。あるいは対戦相手としてバッチバチのライバル魂を見せるのか。はたまたハリバートンとサボニスのコンビでフォックスを圧倒するのか。当日まで妄想が膨らむ夢の舞台になりそうです。