スコッティ・バーンズ

オーバータイムには4失点と失速、オフェンス力の低さを露呈

パスカル・シアカムのパスを受けたスコッティ・バーンズがシュートに向かった第4クォーター残り1分の時点で、ホームのラプターズは14点のビハインドを背負っていました。これが決まっても、まだ12点差。ファウルゲームすら意味のない点差だったため、あとはバックスが時間を使ってそのまま試合終了のはずでした。

しかし、ここからラプターズが脅威の粘りをみせます。

ヤニス・アデトクンポのドリブルをスティールしたフレッド・バンブリートがファウルを受けてフリースローを決めると、バーンズがジャンプシュートで続き、直後のスローインではフルコートでプレッシャーを掛けて5秒オーバータイムに追い込みます。それでも残り時間は36秒で9点差もあり、バックスからするとラプターズに少しでも時間を使わせ、自分たちはマイボールをキープすれば何も問題はない点差でした。

急ぐラプターズはバーンズの3ポイントシュートが外れるもオフェンスリバウンドを奪い、ギャリー・トレントJr.の3ポイントシュートに繋ぎます。しかも慌ててプレッシャーを掛けに行ったグレイソン・アレンがフレグラントファウル1をコールされ、ラプターズにフリースローとボールポゼッションを与えてしまいました。点差と時間を考えればフリーで打たれても問題なかったにもかかわらず、『奇跡の逆転劇』を期待する会場の異様な空気、そして自分たちのミスに焦ってしまい、バックスは吸い込まれるようにファウルを続けてしまいました。

続けてバーンズがレイアップを決め、残り25秒で3点差に。それでもバックスは24秒を使い切れば良いオフェンスでしたが、コーナーでパスを受けたボビー・ポーティスは「ファウルゲームに来るはず」という思い込みがあったのか、シアカムの寄せに押し出されるように自らエンドラインを割ってしまいました。

そして最後はまたもトレントJr.が3ポイントシュートを決め、残り1分から16点を奪ったラプターズが試合を振り出しに戻したのです。

思えば、この試合は序盤から奇妙な展開となっていました。前日にキャリアハイの55点を奪ったアデトクンポですが、対面するOG・アヌノビーにすべての動きを読まれているかのように封じ込まれ、12ものターンオーバーを喫し、フィールドゴール成功率は39%に抑え込まれました。

ところがラプターズはアデトクンボ封じに成功して第3クォーターまで63失点と盤石のディフェンスを見せていたにもかかわらず、第4クォーターに入ってゾーンを敷くと、アヌノビーから解放されたアデトクンボが次々と仕掛けるドライブを止められず、このクォーターだけで13本ものフリースローを14得点を奪われました。こうしてバックスはリードを広げて試合終盤を迎えたのです。

一方でラプターズは、ティップオフから6分48秒も得点を奪えず、第1クォーターはフィールドゴール成功率9%とひどいオフェンスでした。その後も打てども打てども決められず、あまりにも点が取れないため、ゾーンに変更してスティールからの速攻を狙ったように見えましたが、その効果は出ていませんでした。

バックスからするとシュート力の低いバーンズをフリーにし、インサイドを固める作戦が成功した形です。ところが、試合終盤までバーンズを空け続けたのは失敗で、時間を使わずに打てるバーンズが積極的に仕掛けたことが、残り1分から14点差を追い付く原動力となりました。

こうして迎えたオーバータイム、楽にボールを持てるバーンズが4点を奪ったものの、ラプターズの得点はそれがすべてでした。再びアヌノビーがマークに付いたアデトクンポが無得点に終わるも、バーンズ以外の得点を封じ込めたバックスが7-4で制したのです。

ラプターズはオフェンス力の低さを、バックスはアデトクンポ頼みであることを露呈する試合内容でしたが、両チームのディフェンス力を堪能できる試合でもありました。しかし、これだけのディフェンス力とメンタリティを持ちながら16勝22敗。東カンファレンス12位に沈むラプターズにとっては、あまりにも痛い敗戦となりました。