文・写真=古後登志夫

中村学園女子と言えば、ウインターカップ出場31回、2005年と06年の連覇を含む4回の優勝を誇る強豪だ。それでも過去3年は出場を逃す悔しい思いをしてきた。今大会を『王朝復活』のきっかけにしたいというのが関係者の総意だろう。30年以上にわたる指導で中村学園女子を全国トップレベルに育てた『名伯楽』の吉村明からチームを引き継いだ平岡雅司監督にとっても、このウインターカップは強い意気込みで臨む大会となる。

代々木第二体育館での開会式では震えました

──先生は1991年、初芝(大阪)の選手としてウインターカップに出場し、準優勝しています。まずはご自身の経験を聞かせてください。

田舎者だったので、まず代々木第二がすごい体育館だったという思い出がすごくあります。開幕式では震えましたね。会場の広さ、人の多さというのを鮮明に覚えています。昔と今とを比較すると、バスケットのスタイルもかなり変わりました。海外から映像が入って来る、指導者も入って来るということで、子供たちのレベルも上がっています。

──そこからの経歴を教えていただけますか。

初芝高等学校を出て筑波大学に進み、卒業後は実業団のNKKでプレーしました。3年でNKKが廃部になったという事情があったのと、当初から教員になりたいという夢がありましたので教員試験を受けて、最初は宮城県で10年間勤務しました。そして8年前に中村学園に赴任しています。

──中村学園女子は過去優勝4度の強豪校ですが、過去3年間はインターハイやウインターカップの出場を逃しています。プレッシャーもあったのでは?

以前に中村学園女子を指導されていた吉村明先生は私もすごく尊敬している先生です。その方からチームを受け継いで、正直なところ大変なこともありましたが、良い子供たち、中学校の先生方、保護者の方々など『人の縁』のおかげでここまでやってこれたと思います。

──強豪が集まる福岡県を勝ち抜くために意識してきたことはありますか?

目先のことではなく、常に高いレベルをイメージしながら練習をすることです。桜花学園や岐阜女子といった全国の強豪との対戦をイメージしながら毎日挑戦させていくということを意識してきました。

小さいからこそできるバスケットがあると思っています

──今の中村学園女子の強みはどこにありますか?

やはりディフェンス力です。エースもいないですし、高さもない。それでも平面、小さいからこそできるバスケットがあると思っています。一人ひとりが『1+1』ではなく、さらに上のケミストリーが起きるようなつながりですね。それを課して毎日の練習をやっています。

──女子を指導するということで心掛けている部分はありますか?

こちらのイメージを選手たちにどう落とすのか。足の方向、つま先をどちらに向けるとか、どこに手を持っていくか。大雑把な説明ではダメで、緻密さがすごく要求されると思っています。そこは女子を教える上で私自身が勉強しないといけない部分でした。単なる根性論では選手たちはついてこない、そこはすごく実感しています。

ただ、生徒たちはみんな、とにかく素直ですね。今後の人生の方がずっと長いので、シュートよりも大事な部分、人としての根っこの部分を意識して指導しています。コートの入り方、心構えは常々言っているところです。

──練習はかなり厳しいのでしょうか?

結構のびのびしていると思うんですけど、キツいかなあ。7時半から8時10分までが朝練習で、個人練習が中心です。18時から19時半ぐらいまでがチーム練習。寮の門限もあって20時には学校を出なければいけないので、それより遅くまで練習することはほとんどありません。土日は選手たちとも話し合いますが、午前は個人練習、午後はチーム練習と分けて行っています。

──最後にウインターカップに向けてのチームの状況、目標を教えてください。

勝ち抜いた自信が出てきて、今の3年生がものすごく成長していると感じます。私が何も言わなくても自立するようになっていて、それがプレーにも出ています。キャリアのない選手たちなので油断することもなく、先ほども言ったように桜花学園や岐阜女子といった全国レベルの学校を目標でやってきましたので、選手たちと一緒に努力して、そこまで勝ち抜きたいです。