ドウェイン・ウェイド

写真=Getty Images

『フランチャイズプレーヤー』ウェイドに対する熱い思い

2018-19シーズンを最後に現役引退を表明したドウェイン・ウェイドにとって、NBAキャリアで大きな分岐点になったのは、故郷シカゴを本拠地とするブルズへの移籍を決めた2016年だろう。

1年目から13シーズン所属し、3度の優勝を成し遂げたヒートを離れ、故郷へ錦を飾ることを決断したウェイドに対し、ヒートの指揮を執って11年目になるエリック・スポールストラが、当時我慢ならなかった心境を明かした。

「彼(ウェイド)がブルズのユニフォームを着た姿を初めて見た時、メールを送ったんだ。『これは違う。間違っている。周りの意見なんて知るか。君の出身地なんて知るか。とにかく、これは違う』とね」

「我々は、過去にブルズと何度も激しくやり合っている。ホームタウン云々なんて、私にはどうだって良いことだったからね」とも語ったスポールストラは、ブルズのウェイドと対戦する際、ある罰則をヒートの選手たちに強いたという。

「もし彼のフェイクに引っかかったり、彼のトリックに騙されてファウルを犯したら、その選手に5000ドル(約56万円)の罰金を科したんだ」

「25歳以下の選手は、私に貸しがあるよ」と、笑顔で語ったスポールストラだが、ヒート内部には、おそらく彼と同意見のスタッフが多かったと推測できる。フリーエージェント選手になったウェイドとの契約交渉が上手くまとまらなかった、という側面はあったにせよ、出来ることならヒート一筋でキャリアを終えてもらいたいと思ったファンも多かったはずだ。

結果的に、ウェイドは1年でブルズを去った。ブルズが2017年6月にジミー・バトラーをティンバーウルブズにトレードし、若返りをの方針に転換したことを受け、ウェイドは球団との契約をバイアウトしてフリーエージェントになり、2017年のオフにキャバリアーズと契約。盟友レブロン・ジェームズと再び共闘したが、2018年2月のトレードデッドラインに成立したトレードにより、古巣ヒートに復帰し、元サヤに収まった。

罰金は歪んだ『ウェイド愛』だったのかもしれないが、スポールストラにとっても、それだけウェイドの存在が大きかったことの裏返しでもあった。やはりウェイドには、ヒートのジャージーが良く似合う。