フランツ・バグナー

様々な起用に応え続けることでプレーの幅を広げ、不可欠な存在に

ジョナサン・アイザックの長期離脱を始め、ここ数年のマジックはケガに泣かされ続けてきました。今シーズンもギャリー・ハリスやウェンデル・カーターJr.のケガや、マーケル・フルツが戻って来たと思えばジェイレン・サッグスが離脱するなど、主力が揃う試合がありません。毎試合、異なるラインナップ、異なるローテーションになるため、一貫したチーム作りが難しい状況です。

そんな中、ルーキーだった昨シーズンにチーム最多の79試合に出場したフランツ・バグナーは、今シーズンも全試合に出場しており、1人だけ健康を保ってきたことで、マジックの中心選手の座を手に入れました。安定したパフォーマンスとチームメートに合わせてプレーを変更していく柔軟さで、戦術の核となっています。

オフにはユーロバスケットにも参戦したことで、誰よりもタフな日程をこなしながらケガなく過ごしたフランツは、試合に出続けたことで自信と余裕を感じさせ始めました。昨シーズンはハンドラー役を任されれば結果を残したものの、ボールを持てないとリズムを生み出せず、何をすればいいのか戸惑うシーンもありましたが、今シーズンはチームメートに任せる時間帯はサポート役に徹し、焦らずチャンスを待つと、試合のどこかで『自分の時間』を作っています。

また、ケガ人の多いチーム事情によって、様々なラインナップ構成と複数のポジションを経験してきたことが、フランツのプレーに幅を持たせるとともに、マジックのラインナップを多彩にしています。

今シーズンのマジックは218cmのボル・ボルや213cmのモー・バンバ、そして208cmのパオロ・バンケロなどを並べたビッグラインナップを活用していますが、その時間帯には208cmながらポイントガードまで務められるフランツがパサー役としてチーム全体を動かしています。逆にガードが多く起用されると、ウイングとして3ポイントシュートとカットプレーでフィニッシュに絡み、またインサイドのディフェンスでも奮闘しています。どんなラインナップでもフィットするフランツの柔軟性は、マジックの大きな武器になりました。

最近は兄のモリッツ・バグナーとの同時起用も増え、兄弟でテンポ良くボールを回していくシーンも出てきましたが、フランツをコートに出しておけば、どんな組み合わせでも違和感なくプレーを構築できる安心感があります。ドラフト1位のバンケロを始め、若手有望株が多いマジックですが、尖った特徴を持つ選手が多く、チームとして機能させるのは簡単ではないものの、フランツの存在は多くの問題をカバーしてくれています。

再建チームにおいては「誰が主役になるのか」というチーム内の競争も激しいものがあります。どんなに高いポテンシャルを示しても、ケガで離脱している選手を中心にしたチーム作りはできません。フランツは健康にプレーし続けることで、マジックの主役になろうとしています。