文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

細かい部分で全員がオフェンスの流れを作っています

週末に行われたシーホース三河との対戦は1勝1敗に終わった。どちらも堅固な守備をスキルと工夫でこじ開けて、我慢と集中を要する重苦しい接戦。東地区と西地区の首位チーム同士のぶつかり合いに相応しい、一つのミスが命取りになる緊迫した2試合となった。

接戦の末に土曜の第1戦を落とした直後、田臥勇太はこう語っている。「全然ネガティブになる必要はないととらえています。明日、全員で今日できなかったことを一つでもできるように、全員で勝てるようにと思っています」

有言実行──。第2戦も同じく接戦となったが、今度は勝ち切った。「昨日の敗戦から自分たちがどう復帰して勝ちを取りに行くのか、チャレンジでした」と田臥は言う。

敗れた前日との違いを田臥はこう説明する。「三河さんは本当に質の高いバスケ、無駄のないバスケを展開します。こういう相手と戦った時にいかに自分たちが激しくディフェンスし続けて、ゴールにアタックし続けるか。単純なことですけど、その単純なことをいかに相手の質よりも高くやれるかということは、本当に優勝できるかできないかの分かれ目だと思います」

1ポゼッションの間でせめぎ合うシーソーゲームが続いた終盤、残り20秒を切って三河がファウルゲームを始める前までの3つの得点、つまり遠藤祐亮の3ポイントシュート、ロシターのバスケット・カウント、そして決定打となったロシターのダンク、そのすべてが田臥のアシストによるもの。どの選手も心身ともに消耗し尽くした場面で、決定的なプレーを連発して勝利を引き寄せた。

最後のダンクの場面を、田臥は至ってクールな表情でこう振り返る。「何年も一緒にやっていますし、一緒にやればやるほど彼の良さは僕にも染み付いてきます。お互いに信頼関係が築き上げられていると思っています。そこでライアンがああ動くのも分かっていますし。言ってみればその前のジェフ(ギブス)がスクリーンをかけてくれたり、クマ(熊谷尚也)や遠藤がスペースを取ったりだとか、細かい部分でチーム全員がオフェンスの流れを作っています。最後はライアンが決め切ってくれてよかったです」

「後から考えなくても、やってて楽しいですね」

ギリギリの攻防を戦い抜くのは大変だろう。2日連続となればなおさらだ。三河を相手にしてのディフェンスを「全く気が抜けないです。その場その場の集中力を切らさないことを意識していました」と言う田臥に、「勝った後に振り返れば『楽しかった』と思えるものですか」と質問すると、その表情がほころんだ。

「後から考えなくても、やってて楽しいですね」と田臥は充実した微笑みを浮かべる。「こういう相手はやり甲斐があるし、チャレンジし甲斐があるので。こういうメンタルとバスケットの質を意識してやっていかないと成長できないと思います」

三河との試合は両日ともに激戦だった。1勝1敗という結果はさておき、田臥とチームにとってはまた一つ大きな収穫が得られた週末だった。「こういう試合を経験しながらチームとして作っていきたいなと思いました。それが今日勝ちにつながったので、しっかりと自信を持って。まだまだ成長できる部分はたくさんあるので、しっかりと次につなげていきたい」

いよいよ始まった交流戦、次節はアウェーゲーム、沖縄に飛んでの琉球ゴールデンキングス戦となる。「沖縄で試合をすること自体が僕は初めてなので、そういう意味では楽しみです」と田臥は言う。

「秋田の時もそうですけど、地元が一生懸命応援してバスケットを盛り上げてくれているのはプレーヤーとしてうれしいです。そういう環境の中で試合ができるのを非常に楽しみにしています」