県立豊見城

取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

県立豊見城は公立校ながら強豪が居並ぶ沖縄県予選を勝ち抜き、初めての全国大会出場を勝ち取った。悔しい負けを力に変え、越えられなかったライバルのコザ高校を破ってウインターカップ行きを決めたのは9月9日。そこから選手たちはウインターカップでの上位進出を目指してトレーニングを重ねている。3年生の幸地信哉(写真右)、2年生の赤嶺有奎。2人のチームリーダーに全国の舞台に立つ気持ちを語ってもらった。

インターハイ予選での『涙の負け』が力に

──最初に自己紹介をお願いします。

幸地 キャプテンの幸地信哉です。強みはドライブで、中学校での実績は県大会2位です。豊見城には顧問の嘉陽宗紀先生から誘われたのと、練習試合を見てもみんなやる気があって、力強さもあったので、ここに来たいと思いました。1年からガードとして試合に出してもらっていましたが、1年の時はミスばかりで、そこからの経験がたくさんあって今の自分があると思っています。

赤嶺 2年生の赤嶺有奎です。強みはスピードとアウトサイドのシュートです。中学校はジュニアオールスターに入って、全国大会でベスト8でした。高校に入るきっかけは、兄がバスケットをやっていて、小学校の時に高校バスケを見に行って。そこで嘉陽先生のバスケットを見て一目惚れして、この先生に教えてもらいたいと思ったからです。

──その時の嘉陽先生のバスケットはどんなものでしたか?

赤嶺 スピードもあってアシストが多く、5人全員でバスケットをしている。相手を崩して崩して、これでもかってくらい相手を翻弄していたので、そういうバスケットに感動しました。

──今回、ウィンターカップ出場を決めた県予選はどんな戦いでしたか?

幸地 決勝とのコザとの試合は崖っぷちでしたけど、練習してきた成果を出せました。

赤嶺 最後は点差が開いたんですけど、インターハイの予選ではリードしていたのに逆転されてインターハイに出れなかったので。だから最後のチャンスでした。

幸地 インターハイ予選でコザに負けたのが、今までバスケをやってきた中で一番悔しい経験でした。正直、インターハイは高校生活の集大成だったので、すべてを懸けていたんですけど。自分たちがリードしていたのに逆転されたのが大きかったですね。その悔しさがありました。

赤嶺 決勝リーグの初戦で負けたんですが、みんな涙しながら「次もあるから」って(笑)。その後でまたみんなで集まって、また涙しながら。あと2試合ある、チャンスまだあるよ、って。

──そのコザ高校とウインターカップ予選の決勝で当たることが決まった時の気持ちは?

幸地 緊張もあって不安もあったんですけど、いつもの大会よりは落ち着いてできました。

赤嶺 選手権の予選では去年もあと一歩で興南に、最後ブザービートに近い感じで負けたんですよ。それがあったので、めっちゃ緊張してました(笑)。でもたくさん練習してきたので、絶対に負けないという強い気持ちはありました。

県立豊見城

赤嶺「1年生から3年生まで仲良く、いじり合い」

──沖縄県は独特なリズム感のあるスピーディなバスケが印象的です。そういうバスケットに憧れてたりしますか?

赤嶺 家には父が作ってくれたリングが小さい頃からありました。兄を見てバスケを始めて、近くの公園でやったり。もう兄は社会人なのでバスケはしていませんが、超えました(笑)。

──チームの雰囲気を教えてください。

赤嶺 部員が多いのですが1年生から3年生まで仲良く、どっちもいじり合いみたいな感じです。

──プロ選手のプレーを見て参考にしたりすることはありますか?

幸地 中学生の頃は並里成選手に注目していましたが、今はあまりプロの試合を見なくなってしまいました。

赤嶺 僕はラッセル・ウェストブルックです。スピードがあるし、ガッツ溢れるプレーが大好きなので、ウェストブルックみたいにアタックしていく選手になりたいです。日本人選手だと岸本隆一選手が好きです。岸本選手の爆発した時のプレー、爆発力はすごくて尊敬しています。

──将来はプロバスケットボール選手になりたい?

幸地 Bリーグでプレーしたいと思います。でも、その夢が叶わなかった場合には柔道整復師という夢もあります。柔道整復師かスポーツトレーナーで迷っているんですが、どちらも人を助ける仕事だし、自分が選手を続けられなくても選手とかかわることのできる仕事なので。

赤嶺 自分もプロバスケット選手を目指しています。

県立豊見城

幸地「身長は大きくないので、走ることが目標」

──幸地選手がどんなプレーヤーなのか、赤嶺選手から教えてください。

赤嶺 中学の頃からプレーは見ていて、クールな感じでドリブルして相手をやっつけていたので「カッコ良い人だな」と思っていたんですけど、豊見城に来たらあんまり、なんというか、クールではなかったですね。天然でかわいいキャプテンでした(笑)。でも、ドリブルスキルは全国でもトップクラスだと思います。独特のリズムを持っているし、ガードとしてのゲームメークもすごい。プレーしている間に勝手に信哉さんの流れができていて、本当にすごいです。

──では幸地選手から、赤嶺選手のどこがすごいのかを紹介してください。

幸地 アウトサイドですね。みんなが決められない時、流れを取りたい時の1本を決めてくれます。ガードとして、そこをちゃんと決めてくれると思ってパスを出しています。でも、たまに無茶しすぎるところがあって、一生懸命なのは良いんですけど、全部に一生懸命すぎるので、足がつったりして最後までもたないことがあります。

赤嶺 信哉さんはオフェンスのドリブルスキルはヤバいんですけど、ディフェンスをサボっちゃう時がある。バレてないんですよ。相手も気づいてないぐらい(笑)。

幸地 そのおかげで第4クォーターにもフルでオフェンスができます(笑)。

──では最後に、ウインターカップに出場する豊見城がどんなチームか教えてください。

幸地 身長はあまり大きくないので、みんな走ることが目標です。県外に行ったら留学生もいるし、自分たちより大きい選手もいるので、身体を鍛えてディフェンスでは身体を張って守り、オフェンスでは誰より走って得点に繋げるチームを目標にしています。

赤嶺 3年生は『高校生活の最後』という強い気持ちがあります。僕ら2年生もそれに負けないように、自分が強い気持ちを持って、3ポイントシュートを1試合10本決めたいですね。目標は全国ベスト8以上です。

幸地 個人としては初めての全国というのもあるので、ガードとしてしっかりチームをまとめて勝利をつかみたいです。みんな全国も初めてで、緊張もすると思うので、ウインターカップまでみんなで練習にしっかり取り組んで、身体作りをしっかりして1戦1戦勝っていけるようにしたいです。