ツインタワーのデメリットばかりが目立つ序盤戦に
大型トレードでルディ・ゴベアを獲得したティンバーウルブズですが、ここまで6勝8敗とパッとしない成績に留まっています。アンソニー・エドワーズのダンクが少ないなど、様々な影響が出ていますが、トレードにデメリットはつきもので、個別の現象を取り上げて成否を判断するものではありませんが、オールラウンダーが好まれる現代バスケにおいて、限定的な役割でのみ能力を発揮するゴベアを獲得した狙いが、10試合以上が経過しても見えてこないことが問題です。
オールスターセンターであるカール・アンソニー・タウンズがいながらゴベアを加えることには疑問がありつつも、シュート能力の高いタウンズをアウトサイドに、ゴール下に強いゴベアをインサイドに置けば、スペースを潰しあうことなくツインタワーは機能する形は見えていました。しかし、開幕から2人のポジショニングが被ることが多く、タウンズのドライブが減ったり、エドワーズやジェイデン・マクダニエルズのカットプレーが難しくなるなど、ゴール下にスペースがないデメリットがわかりやすく出ています。
ポジショニングやスペーシングは時間とともに改善していますが、従来のオフェンスパターンが減ることは想定されていただけに、本来であればツインタワーを活用した明確なアップグレードが計画されているべきでしたが、今は「ツインタワーに慣れるのに精いっぱい」といった印象です。誰もが想定できたはずの初期設定の段階で、チーム戦術が躓いています。
一方でタウンズの弱点であるディフェンスは、1人が抜かれても、もう1人がカバーするメリットがハッキリと見えていたはずが、共にアウトサイドへのチェイスを行わないため「1人が抜かれても」どころか、抜かれるまでもなく3ポイントシュートを打たれています。スクリーンに対しての対応が悪いどころか、何もしていないに近い状況のため、アウトサイドで簡単に2on1の状況が作られてしまい、リーグで最も多い1試合平均14.6本の3ポイントシュートを決められています。
元々、対応が悪かったタウンズに対して、ジャズ時代のゴベアはアウトサイドまで追いかける献身性があっただけに、個人というよりはチーム戦術に問題がありそうです。ツインタワーが追いかけないため、アウトサイドの3人が必死にチェイスしていますが、それがディフェンス力の低いディアンジェロ・ラッセルと、スクリーンをかわすにはサイズが大きいエドワーズとマクダニエルズでは機能不全を起こすのも当然です。
また、ディフェンスが整備されていないことはリバウンドにも響いており、ゴベアが個人としてリーグトップの12.6本にも関わらず、チームとしてはリーグで最も悪い平均12.6本のオフェンスリバウンドを奪われています。個人がスタッツを稼ぐことに意味はなく、チームとしての解決策を見つけなければいけません。
ヘッドコーチのクリス・フィンチはアンソニー・デイビスとデマーカス・カズンズのコンビをはじめとして、ビッグマンを複数並べたチームで仕事をしてきただけに、タウンズとゴベアを並べて新たな戦術を用意しているからこそトレードを実行したと思われていました。しかし、フタを開けてみれば普通の戦い方で、普通の悩みを抱えており、ゴベア獲得の狙いが見えてきません。選手達はツインタワーに慣れてきたことで連携面の改善を見せていますが、これならばオールラウンダーを起用したほうが簡単に解決します。ゴベアというラストピースの当てはめ方を、フィンチが示してくれなければ、もうしばらく混乱が続きそうです。