ボル・ボル

早くもMIP候補の声、インパクトはビクター・ウェンバニャマ級?

マジックは開幕から1勝7敗と大きく出遅れ、どうやら今シーズンも低迷の気配だ。今年はドラフト全体1位指名権を手に入れ、パオロ・バンケロを指名できた。ビクター・ウェンバニャマがエントリーする来年のNBAドラフトに向けて『勝たなくてもいい』のかもしれない。

それでもコートに立つ若手たちは、その才能を最大限に発揮しようと努力している。レブロン・ジェームズに代表される『今のNBAの顔』が去った後のNBAを担うであろう世代には、ポジションレスのバスケが身体に染みついている。バンケロはパワーフォワードだがウイングの位置からドライブで仕掛けるプレーが得意。スモールフォワードのフランツ・バグナーはしばしばポイントガードのようにプレーし、ウェンデル・カーターJr.はペイントエリアの外で真価を発揮するセンターだ。

彼らはサイズはあるがボールを扱うことを苦にせず、プレーの幅が広い。経験を積み、NBAをより深く理解した数年後には、このリーグの主役になれるだけのポテンシャルがある。だが、そのフロントコートでさらに異彩を放っているのがボル・ボルだ。

219cmと長身のセンターだが、ドライブもジャンプシュートもできる。フットワークに難があって能力を十分に生かせていなかったが、その課題を克服しつつあることで自信を持ってプレーできるようになり、その恐るべき潜在能力が開花した。

ナゲッツでの過去3シーズンはニコラ・ヨキッチの控えで目立たない存在だった。ナゲッツはヨキッチの消耗をいかに避けて勝負どころを迎えるかが課題で、ボル・ボルには何度もチャンスが与えられたのだが結果が出せず、そのプレーの幅広さはゴール下での勝負を避けている消極性と見なされた。優勝候補の一角であるチームのプレッシャーも、なかなか自信を持てないボル・ボルには重荷となった。

それがマジックに来てからはノビノビとプレーできるようになり、最初はベンチスタートだったがここ3試合はスタメン起用されている。カーターJr.とボル・ボルのビッグマン2人がポジションを入れ替えながら流動的にプレーすることで、互いの持ち味を引き出している。

ここまで21.6分の出場で11.1得点、7.4リバウンド。ナゲッツでの3年間で328分しかコートに立っていないボル・ボルは、すでに173分プレーしている。特筆すべきは2.6ブロックという数字で、234cmのウイングスパンを生かした打点の高さで、多少遅れてもボールを弾き出せる。

マジックの今シーズン初勝利となったホーネッツ戦は、ボル・ボルが初めてスタメン起用された試合だった。「ベンチから出てもスタメンでも心理的なアプローチは変わらない。自分にできるベストを尽くし、チームメートを助けて勝利のためなら何でもするつもりだ」と言う彼は、自身の好調の理由をこう語る。「チームメートから学ぶことが多いからだと思う。僕らはお互いに刺激し合い、学びあっている」

マジックのバスケについては「全員がオールラウンダーなのが僕らの強みだ。全員がドリブルができてシュートを打てて、守れてリバウンドを取れてスイッチに対応できる。すごく特色あるスタイルだよね」と気に入っている様子だ。

『CBS SPORTS』は「まだ議論には早すぎる」と前置きしながらも、最も成長した選手に送られるMIP賞の有力候補にボル・ボルを推している。ナゲッツ時代とは見違えるように自信満々のプレーを見せる彼は、変則的なドライブから決めるダンクにせよ、軽く跳躍するだけで簡単にシュートを叩き落とすブロックにしても、ウェンバニャマを彷彿とさせる。ロッタリーに回らなくても、それだけの才能を手に入れられたのは幸運と呼ぶべきか、才能を引き出したチームの環境を称えるべきだろうか。

ただ、もう4年目の選手であるボル・ボルにはチームを勝たせる活躍に期待したいところ。もちろん、ボル・ボルにこのまま低空飛行を続けるつもりはない。「ケガ人が多くてプラン通りに進まないことが多いけど、僕たちは一生懸命にやっている。このままハードに戦っていけば道は開けるはずだ」という彼の言葉通りにマジックが浮上するのか、今後の展開に注目したい。