片峯聡太

昨年のウインターカップ王者である福岡大学附属大濠は、「日本一カッコ良く素敵なチーム」を掲げている。多くのチームは「堅守速攻」や「全員バスケ」などバスケのスタイルであったり、「全身全霊」のような訓話めいたものとなるスローガンに「カッコ良く素敵」を掲げるのはユニークで、大濠らしさの一つでもある。大濠でキャプテンを務めた後、筑波大を経て教員として大濠に戻り、先代の田中國明からチームを引き継いだ片峯聡太コーチに「日本一カッコ良く素敵なチーム」に込めた思いを語ってもらった。

「一生懸命が認められるチームを作る」

──「日本一カッコ良く素敵なチーム」を目指す大濠に行きたいと思う選手がたくさんいて、スカウティングが上手くいっている印象です。

学校の伝統、強さもありますが、大学附属というのももちろんあります。県外から来る子であれば寮がきちんと整備されて、安心安全に学業とバスケに3年間打ち込める環境があるので、保護者からしても安心感があると思います。志と覚悟を持った選手が3年間頑張れば、自ずと良い道に行くことができる。その信頼感が大濠高校の強さだと思います。

──大濠でバスケを頑張りたいという選手がたくさんいる中で、全員を受け入れるわけにはいかないので取捨選択も必要になってくると思います。そこでの評価基準はどうしていますか。

大濠高校は進学校ですので、学業とバスケのバランスのところは見ます。競技力が高くて絶対に欲しい選手であれば、その後の3年間や進路の道も作りやすいですが、そうじゃない時には両方がしっかりできる選手を取ります。その方が彼らのためにもなってきますので、最終的には勉強と競技力のバランスで判断しています。

──大濠はそれこそ県内では有数の「勉強のできる学校」です。そこに競技力が高く、将来はプロを目指す選手も入ってくることでギャップが生まれることはありませんか。

今の2年生は20人いて、これは今までで一番多い人数です。競技力が高くて入って来た選手が6名で、14名は勉強をしっかりやってバスケと両立させたいと来てくれました。競技力の違いがあれば感覚的なものも違うので、最初は共存させるのが大変かもしれないと思いましたね。でも、一生懸命が必ず報われる世界ではありませんが、一生懸命が認められるチームを作ったことで、相乗効果でお互いが支え合って良い循環が生まれています。それは去年からの私の中での学びでもあるので、大濠を選んで来てくれる選手たちには可能な限りしっかり対応していきます。

福岡大学附属大濠

「気持ちの持ち方次第で何にでもなれる環境が大濠にはあります」

──ちなみに片峯コーチはどんな形で大濠に入ったのですか?

私は一般受験をして入学しました。大濠でバスケを頑張って試合に出て、勉強もちゃんとやって将来は学校の先生になる志を持って入りました。

──そこから主力選手になるケースはそれほど多くはないのでは?

そうですね、珍しかったと思います。その頃ぐらいから大濠の人気が出て、学校の学業レベルも上がってきたこともあって、少しずつ部員が増えていました。ただ、やはり競技力の高い選手たちが優先して試合に出てはいたので、私は「何くそ」と思ってやり続けて認めていただいて、試合に出るようになりました。そして3年生ではキャプテンをやらせていただきました。

そういった意味では、チャンスをモノにできるかどうかは当然あるのですが、自分の気持ちの持ち方次第で何にでもなれる環境が大濠にはありますし、自分の経験は選手にも伝えたいです。可能性を信じて頑張ってやり続けることは、絶対に将来に生きると思います。

──大濠で3年間バスケを頑張った選手に進路のアドバイスをするのも大事な役割だと思いますが、この点で気を付けていることはありますか。

選手に対しては、特に努力もせず成績も良くないのに偏差値の高い大学に行きたいと言う時には、その選手の中での優先順位を決めるよう指導しています。例えばバスケの環境が1番、2番が教員免許が取れるかどうか、という感じです。そこでただバスケではなく、バスケの中でも具体的な優先順位を3つぐらい上から並べさせて、「あなたが求めていることと、この大学が求めているのは違うんじゃないか」ということは言います。逆に選手が求めていることと大学が求めていることが一致していれば、「あとは4年間努力するだけだね」という話をします。

片峯聡太

「イキイキと、キラキラと輝いているかどうか」

──バスケの能力や成績を認められて大学に進むにしても、求めるものが合っているかどうかは大事ですね。

ここは大学やプロの方とも話をさせていただいて、受け入れてくださる方が信頼できるのか、選手の面倒をちゃんと見ていただけるのかは私がまず見極める必要があると思っています。やっぱり大切な選手、生徒ですから。その上で選手の希望と大学の意向が一番マッチするところはどこなのか、という話をします。

最悪なのは大学には行ったけどバスケを辞めてしまい、授業にもほとんど行かない。本人はバスケを辞めてもなんとなく大学に4年間残ってなんとなく就職していきますが、そうなると次の代の選手にお声掛けがなくなってしまいます。それに、やっぱりそれはカッコ良くないですよね。なので、そういったことが極力ないように指導しています。

──なるほど。そういう意味でも3年間かけて「カッコ良さ」と「素敵さ」を身に着けてほしいですね。

そういったものをひっくるめて「日本一カッコ良く素敵なチーム」を掲げています。U12からU15、U18、大学あるいはBリーグとありますが、私はその中でも一番になりたい。大学やBリーグに強さで上回るのはなかなか厳しいですが、そこに向かっていく姿であったり、人間性を含めた素敵さであれば、高校生でも日本一になれる可能性は十分にあるはずなので、そこにチャレンジしていきたいです。

──「日本一カッコ良く素敵なチーム」という目線で、大濠のバスケのどんな部分を見てもらいたいですか。

今年のチームはサイズがある選手たちが揃って頑張っているので、この選手たちが28メートルのコートでダイナミックなプレーをして、イキイキと、キラキラと輝いているかどうか。そうなっていたら、そういうチームに近づいているんじゃないかと思います。そんな姿がカッコ良く素敵かどうかを、是非見ていただきたいです。