東藤なな子

「押され負けしない身体の押し出し方は毎日繰り返し練習してきた」

バスケットボール女子日本代表は優勝という確固たる目標を胸に、女子ワールドカップへと挑む。

日本が東京五輪で銀メダルを獲得し、追う立場から追われる立場へと変わったように、当時最年少だった東藤なな子には後輩ができ、気持ちにも変化が生じた。

東藤はラトビアとの国際強化試合『三井不動産カップ』を2連勝で終えた後、「オリンピックの時に先輩たちからたくさんのことを学んで、自分も勝利にもっと貢献したいという欲が出てきました」と語っていたが、その思いは増す一方だ。

「オリンピックの時はディフェンスをすれば自分の役割を達成したことになっていましたが、今回のワールドカップでは数字に残る貢献をしたいと思っています。得点面でもそうですし、リバウンドなど、数字に残るようなプレーで勝利に貢献していきたいと思っています」

ワールドカップの初戦でぶつかるマリは身体能力が高い選手が多く、指揮官の恩塚亨も「特にマリのフィジカルな部分が私たちにとって脅威になる」と警戒を強めている。東藤も「マリの選手の手足の長さは日本人選手同士でやっている時には感じられない部分なので、そこでいかにターンオーバーをせずに自分たちのカウンターバスケットができるかを今考えています」と言う。

そして、ディフェンスリバウンドを確保することは、相手にセカンドチャンスポイントを与えず、速攻の機会を増やすことに直結するため非常に重要だ。175cmの東藤は世界的に見ると長身ではないが、フィジカルが強く、跳躍力もあり、リバウンドも得意としている。さらにリバウンドを強化してきた自負もあり、このように語った。

「私は海外の選手に比べて強さも高さも劣ると思います。相手に入り込まれてから当たりに行くのでは遅いので、まずヒットファーストで。自分から当たりに行って、押され負けしない身体の押し出し方は毎日繰り返し練習してきたので積極的に絡んでいきたいです」

東藤なな子

「悔しい思いが今の成長したいという気持ちに繋がっている」

日本はプレータイムをしっかりシェアし、全員で相手の体力を削るスタイルで頂点を目指していく。それを体現するには、どんな組み合わせであっても、一定以上のパフォーマンスを出さなければならない。戦いやすい対戦相手がいるように、チーム内にも相性の良し悪しは存在する。ポイントガードの安間志織は「平下(愛佳)選手と東藤選手と3人で出ている時は、すごくスティールを狙えているので、その2人と出る時はディフェンスを楽しみにしています」と語っていた。そして、東藤も安間とのやりやすさを実感していたという。

「安間さんはディフェンスの時にすごく声を出して指示してくれるので、自分も積極的に声を出してコミュニケーションが取れてやりやすさを感じています。オフェンスでも周りの動きをよく見てくれているので、フリーになるために動きがいがあるというか、すごくやりやすいです」

安間が信頼するように、東京五輪以降の東藤は加速度的に成長し、現在の日本にとって欠かせない存在となった。ここまで成長を速めることができたのは自身への歯がゆい思いがあったからこそだと東藤は明かした。「オリンピックで先輩方があきらめずに戦っている姿を見て、自分もあんなふうになりたいと、そこで心が大きく動きました。オリンピックで先輩から受け継いだものを自分も出していこうとアジアカップに挑んだんですけど、自分のプレーが全然できずに悔しい思いのまま終わりました。数字を残せるような選手になりたいと思っていたのに、実現できなかったことがすごく悔しくて。その悔しい思いが今の成長したいという気持ちに繋がっていると思います」

アジアカップでの悔しさは、ワールドカップで返せばいい。大会期間中も成長を続け、東藤が納得のいくパフォーマンスが体現できた時、目標達成も近づくはずだ。