ニック・ファジーカス

前回のワールドカップ予選では6試合の出場で平均27.2得点を記録

8月29日、バスケットボール男子日本代表はワールドカップ2023予選のカザフスタン戦を翌日に控え前日練習を公開。そこではニック・ファジーカスが入念にシュート練習を行っていた。彼が明日の試合に出場すると、2019年ワールドカップ以来の代表復帰となる。

トム・ホーバス体制となった後、これまで代表の帰化枠はルーク・エヴァンスが担っていた。豊富な運動量とハードワークで、ホーバスの目指すアップテンポなバスケットボールを支える縁の下の力持ちとして奮闘していたが、一方で得点力については物足りない面があったのも事実だ。

その点、ファジーカスの卓越した得点力はBリーグでの活躍ぶりが物語っている。国際大会において前回のワールドカップ予選では6試合の出場で平均27.2得点と大暴れ。リーグ戦のプレーを見ても、現在の彼の実力は当時と遜色ないことは明らかだ。

まず、ファジーカスは代表に戻ってきた現在の心境をこのように語った。「久しぶりに代表に戻って来られてエキサイティングです。Bリーグのシーズン前にこのようなハイレベルの試合ができるのは良いことです。おかげで僕の身体もよく絞れています」

2019年ワールドカップ終了後、日本代表の帰化枠にはファジーカスよりも若いギャビン・エドワーズ、ライアン・ロシターらが起用されてきた。代表活動は終了したと思っていたという投げかけに対し、ファジーカスはこう答える。「(代表復帰を決めたのは)いろいろと長い話になりますが、シンプルに復帰してチームを助けたいと思いました。トムは友人であり、彼から『代表復帰には良い時だよ』と言われていました。また、沖縄はホームゲームでプレーしやすいので、今回の決断に至りました」

ニック・ファジーカス

「代表のスタイルは僕にも合っていると思う」とチームへのフィットにも好感触

ホーバスヘッドコーチとの関係については、次のように続ける。「僕とトムは同じコロラド州出身という繋がりがある。代表活動を始めた時、NTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)に行くと(女子日本代表のヘッドコーチだった)トムはいつもいたので、そこで関係が深まっていったんだ。よく話をしていたしランチ、ディナーを食べていたりした。彼が成功する姿を見たいし、彼は僕を今回ベストオプションと見てくれている。だから彼を助けたいんだ」

来日したのが8月中旬ということもあり、「チーム練習に参加したのは2日、他にはトムと川崎で2日間トレーニングしていた」と、当然のように連携不足は否めない。ただ、「代表のスタイルは、僕にも合っていると思う。3ポイントシュートは得意だからね。どこまで彼のスタイルでうまくプレーできるのか、明日の試合が楽しみだよ」と、百戦錬磨の大ベテランは特に不安視していない。

また、ペイントアタックと3ポイントシュートにこだわり、得点効率の面からミドルシュートを打たないのが代表のスタイルだが、ファジカースにはミドルレンジからのフックシュートという十八番がある。その点について聞くと、「それはトムも受け入れなければいけないと思うよ。何故なら、とても成功率の高いシュートだからね(笑)」と笑顔を見せており、自身の強みを生かすための擦り合わせは順調なようだ。

今回の代表復帰によって、周囲には来年のワールドカップ本大会出場を期待する声も高まっていくだろう。だが、今のファジーカスはあくまで明日の試合に集中するのみと強調している。「(来年の本大会は)まだ先の話だ。前回のワールドカップで、チームは本来の力を発揮できなかった。(グループリーグ開催地の)上海ではいろいろなことがあった。来年は僕も38歳になるし、先のことはどうなるか誰にも分からない。今は明日の試合にコミットしているし、次のWindowとなる11月にどうなるのか見ていきたいね」

ビッグマンの得点力不足解消へ、これ以上ない特効薬となるファジーカスがどんな支配力を見せてくれるのか。明日のカザフスタン戦がより楽しみになってきた。