田中大貴

文・写真=鈴木栄一

「痛みもあるので、もどかしさはあります」

ともに開幕4勝1敗と好スタートを切り、下馬評通りの強さを見せているアルバルク東京と川崎ブレイブサンダースによる強豪対決の第1ラウンドが10月20日に行われ、A東京が89-67で快勝した。

この試合、A東京にとって大きかったのはゴール下のリバウンド争いで優位に立ったことに加え、水曜日に行われた栃木ブレックス戦を欠場した田中大貴が復帰し、14得点6アシストを挙げる攻守の活躍でチームを牽引したことだ。

夏の間の代表活動、さらにタイでのアジアチャンピオンズカップと過酷な日程が続いた蓄積疲労の影響もあり、田中は開幕2試合目となる7日の試合を左ハムストリングの筋膜炎で欠場。翌週となる13日の試合には復帰したが、「今のコンディション的に水曜日に出場して週末もプレーするのは難しいので、チームで話し合った結果、栃木戦は欠場してしっかり治療をすることにしました」と、コンディションを考慮して前の試合を欠場した。

今回の試合も万全ではない中でのプレーであり、「本来の自分の身体がどう動くのかを分かっているだけに、始まる前からうまく身体がついてこないことにストレスを感じます。痛みもあるので、もどかしさはあります」とフラストレーションは否定できない。

だが、それでも「コーチと話をして、『試合に出るからには持っている力を全部出してほしい』と言われ、それで吹っ切れました。コンディションが良いとは言えないですけど、その中でもやるべきことはやらないといけない」と、うまく気持ちを作って結果を出すところは、さすが王者アルバルク東京のエースというべき貫禄のパフォーマンスだった。

得意のピック&ロールから自らゴール下にドライブし、そのままレイアップで得点。もしくは的確なパスでアシストと、いつも通りの活躍を見せた田中だが、この試合では小島元基の故障離脱によってポイントガードが安藤誓哉、齋藤拓実の2人体制の中、齋藤がファウルトラブルに陥った。そのためわずかな時間ではあるが、ポイントガードを担いそつなくこなす器用さも披露している。「いつ来てもいいようにと準備はしていますが、なんせ見せかけのポイントガードなんで(笑)、なんとかうまくつなげられたらと思っています」と語る一方で、「こういう状況は拓実にとって良いチャンス。彼は力があると思うので、今のタイミングで彼がステップアップしてくれると期待を持っています」と齋藤の成長に信頼を寄せている。

田中大貴

「キツくなればなるほど、ウチの方が力を発揮できる」

来週も平日開催がある厳しいスケジュールが続き、田中にとってはコンディションを万全にするのが難しい時期が続く。だが、田中はこの日程はA東京にとって優位になると自信を見せる。

「考え方として、自分も100%ではないですけど、チームで頑張れば良い試合ができます。過密日程は他のチームも一緒ですし、逆にキツくなればなるほど、ウチの方が力を発揮できる。それには自信があります。昨シーズンから言っていますけど、どこよりも激しく日々の練習に取り組んでいるので」

「今はアジアチャンピオンズカップが開幕直前にあったことの影響があり、また別の話ですが、それでも悪くないスタートが切れているのはキツいスケジュールを乗り越えられる力があるからです。そういうところでも、もっとコンディションレベルが上がってくれば、チームとして良くなっていくと思います」

文句なしの内容で初戦を制したA東京だが、言うまでもなく一つ勝ったことへの満足感はない。田中も「川崎さんはトップレベルのチームです。その相手に60点台に失点を抑えたのは素直にみんな良いプレーをしていたから。ただ、明日が大事です」と快勝の余韻に浸ることは全くなかった。苦しい時にこそ真価を発揮できる。そんなアルバルクの底力を体現する代表格である田中を軸に、A東京は難敵相手の同一カード連勝を狙っていく。