サンロッカーズ渋谷

「バスケに魅力があるからこそ、新しいオーナーがどんどん入ってきています」

6月23日、サンロッカーズ渋谷とセガサミーホールディングス株式会社が共同会見を実施。親会社である株式会社日立製作所からセガサミーに全株式が譲渡され、2022年9月を目処にSR渋谷がセガサミーの完全子会社となることが発表された。

川崎ブレイブサンダースのDeNA、千葉ジェッツのミクシィ、島根スサノオマジックのバンダイナムコ。そして、直近では滋賀レイクスターズのマイネットなど、大手企業がBリーグの運営に乗り出す流れが続いていた。もちろんこれは、Bリーグが持つ可能性を信じているからに他ならない。

セガサミーの代表取締役社長グループCEOを務める里見治紀も「Bリーグ自体が変わろうとしている。バスケに魅力があると思っているからこそ、新しいオーナーがどんどん入ってきています。勝敗だけじゃないエンタテインメント性、新しい風。私たちはデジタルを組み合わせた施策などで新たな価値を提供したい」と言う。

そして、今回の買収劇は互いの理念が一致したからだと、里見氏は説明した。「Bリーグが掲げる『バスケで日本を元気に』、『エンターテイメント制の追求』は、我々の企業グループと相容れるものがあります。試合を観に来た人が勝敗に関わらず楽しんでもらえるような空間を目指していく、これが一番重要だと思っています。そしてサンロッカーズ渋谷のクラブ理念は『バスケットボールを通じて全ての人々に夢や希望を与え、地域やコミュニティへ新たな価値を創出する』で、こちらも私達のミッションに通じるところがあり、共感を強めています。渋谷という本拠地にも大いに魅力を感じています」

麻雀のMリーグ、プロダンスのDリーグへの参入もすでに進めている里見氏だが、2019-20シーズンからは横浜ビー・コルセアーズのスポンサーにもなった。これは、Bリーグの試合は見ていなかったものの、留学先でNBAの試合をよく見ていたという、バスケの魅力を分かっている里見氏だからこその決断であり、当時チェアマンを務めていた大河正明との出会いも背中を押したと明かした。

「2019年に当時の大河チェアマンと知り合って、『一度遊びに来てよ』とご招待頂いて、初めて見たのが2019年の千葉ジェッツとアルバルク東京のチャンピオンシップでした。そこでBリーグの可能性を知り、私自身が感動して、『日本のバスケもNBAに負けないくらいのポテンシャルがある』と感じました」

この話は日立製作所のほうから持ち掛けたという。SR渋谷の代表取締役を務める浦長瀬正一は「日立グループ87年間の歴史が閉じるのは少し寂しい」と前置きするも、「日本を代表するエンタテインメント企業集団であるセガサミーと、これまで我々だけでは成しえなかった新たな成長に向けて精いっぱいの努力をしていきます。堅いモノ作りの会社からエンタテインメント企業にという中で、我々では想像しえない大きな変化がもたらせると期待を持っている」と語った。

Bリーグは2026-27シーズンから、アリーナの仕様やクラブの売上、観客数などのハードルを上げた『新B1リーグ』を構想している。SR渋谷が使用する青山学院記念館は、VIPラウンジの設置や、飲食の施設など、その基準を満たしていないが、里見氏は新B1を目指している。

「新B1構想の概略は聞いていました。新B1に行けるのかという不安はあり、覚悟を決めないとなかなか引き受けできないと思って、お話を聞いていました。もちろん売上、入場者数、そしてアリーナといろいろなハードルがあります。現状の施設ではクリアできず大きなチャレンジではありますが、やりようはあるだろうと。具体的な方法に関してはお答えできませんが、我々は新B1、昇格を目指していきたいと思っています」

新たな企業が運営に参入することでメリット、デメリットはもちろん生じる。ただ、今回の場合、親会社は変わったものの「現在の機能は一切失うことなく、そのまま10月の開幕はこれまでと同様に迎えることができる」と、浦長瀬氏は言った。そのため、これまでにSR渋谷が築いてきたカラーはこれからも残ることになる。それはリーグで屈指の人気を誇るマスコット、サンディーの存続も担保される。里見氏は言う。「我々は物販も得意としていて、日本で一番ぬいぐるみを作っていると思っています。サンディーのグッズも作っていきたいですし、デジタルも含めたエンタメ、新しい価値を創出し、試合のもっと前から早く来たいと思えるようにしたいです」