文=大島和人 写真=野口岳彦

竹内兄弟にあこがれ、洛南高でウインターカップ3連覇

谷口大智は小学生の頃から全国区だった。小6で身長は190cmを越え、ミニバスの全国大会で大活躍。『長身小学生』としてテレビに取り上げられたこともある。

そんな谷口少年にとって、先週末の対戦相手であるアルバルク東京の竹内譲次(と双子の兄・公輔)は当時からの憧れの存在だった。谷口はこう振り返る。「たまたま父が洛南高のバスケ部出身で、練習試合に行った時に竹内さんたち2人を見ました。竹内さんたちの試合を見て、僕もこんなふうになりたいなと思いました。小学校の時に190cmあったけれど、中だけではなくて竹内さんみたいにミドルショットだったり、いろんなプレーにチャレンジしたいなと思って、あこがれて洛南に入った」

竹内兄弟が高校3年だった2002年のウインターカップ、洛南高は全国制覇を果たしている。谷口大智も04年に洛南高へ入学すると、同級生の比江島慎(現・三河シーホース)とともに高校バスケ界を席巻する活躍を見せ、ウインターカップ3連覇の偉業を達成した。

谷口は高校卒業後『スラムダンク奨学金』の第2回奨学生として渡米し、合計6シーズンに渡ってプレップスクール、カレッジで技を磨いてきた。昨シーズンから秋田ノーザンハピネッツへ加入し、今シーズンが2年目になる。

谷口は現在201センチ105キロという大型選手だ。ただ竹内譲次はそれより6センチ大きく、オールラウンドな動きもできる日本人ビッグマンの最高峰。そんな竹内とアンドリュー・ネイミックをいかに消すかが、A東京との対戦における谷口のミッションだった。

7日の『リベンジマッチ』における谷口の個人スタッツは4得点6リバウンド。率直にいって平凡だ。ただ谷口はA東京戦における自分の仕事をこう説明する。「得点よりスタッツにあまり出ないところです。相手のビッグマンを止めるという地味なところを一つひとつやっていければいいなと思っていました」

竹内とのマッチアップも「全く歯が立たなかったというわけではない。これから僕が伸びていければ十分にやり合える」と手応えを口にする。

リバウンド争いで「相手に取らせないし僕も取らない」

B1のビッグマンは大多数が外国籍選手だが、オン・ザ・コート(同時に起用できる人数)が「1」以下になるクォーターが2つある。その時に4番(パワーフォワード)でどれだけやれる選手がいるか――。試合を見ていると、そこが強いチームと弱いチームの差だと思うことがある。

A東京にはそこに竹内、ザック・バランスキーといった日本人登録の選手がいる。4番に帰化選手を起用しているチームも多い。一方の秋田は外国籍選手こそ3名いるが、日本人の4番が彼しかいない。彼も「日本人ビッグが僕一人しかいないということで、僕にしかできないことが多い」と説明する。

7日の出場時間はちょうど20分。オンザコート「1」で、外国人選手が1人しか出られない時間帯に谷口の出番がやって来る。試合の半分に過ぎないが、しかしその時間帯では彼の存在が欠かせない。

7日のA東京戦で一番手応えのあったプレーを尋ねると、彼は「ボックスアウトですね」と答えた。「相手は自分より高い選手ですし、能力もある選手なので、飛ばれると上でリバウンドを取られてしまう。今日はしっかり重心を低くして飛ばせないようにした。相手に取らせないし僕も取らない。でも仲間が取ってくれるというのを信じてやった」

相手に身体を密着させて、ゴールから遠ざける。そんな地味な仕事を彼は実行した。オフェンスでも彼はオトリとして、ポイントに残らない貢献をした。

「僕がビッグマンを外に引き出していれば中のスコット(モリソン)がやり易い。自分がハイポスト(フリースローライン付近のややゴールから遠い位置)でボールを持ってビッグマンを引き寄せて、中にいるスコットに入れて得点につなげるという形は上手くできた」

日本代表に期待される、若きビッグマンの台頭

8日に出発する日本代表の台湾遠征メンバーは、若手中心の選考で、秋田から安藤誓哉も選ばれている。しかし、同じく成長株の若手である谷口はここに絡めなかった。日本代表については「どうしても僕も行きたくて」とやや未練も口にするが、彼の可能性が閉ざされているわけではない。外国人のインサイドを消すという地味な仕事は、国際試合になればさらに必要とされる部分だ。

秋田の長谷川誠ヘッドコーチも「まだまだですよ」と谷口について辛口だが、「これから伸びる選手だと思うので、しっかり使って経験させたい。常に課題を与えながらやっていきたい。シーズンが終わるころには一回りも二回りもうまくなっているとは思う」と口にする。

B1の日本人で2メートル台の選手を探すと竹内兄弟、太田敦也(三遠)、伊藤俊亮(千葉)と30代の選手が多い。バスケの代表チームは16歳以降に帰化した選手を1名しか起用できないため、日本人ビッグマンの台頭が待望されている。谷口はそこに名を連ねてほしい一人だ。

7日のA東京戦は川崎ブレイブサンダースに所属する2つ下の弟、光貴もスタンドで観戦していた。試合の開催日が月曜日で、川崎の試合もちょうどなかったからだ。「あいつの前で不甲斐ないプレーができない」という思いも、今日のパフォーマンスにつながったのかもしれない。

12月10日、11日の第12節は東地区の秋田と中地区の川崎の交流戦がCNAアリーナ★あきたで開催される。「両親もおじいちゃんおばあちゃんも、全員秋田に見に来るということを聞いています」というから、この兄弟、そして谷口家にとっては『大一番』になりそうだ。