沖縄でのアウェーゲーム2連勝の立役者
11月5日、6日、大阪エヴェッサが敵地に乗り込んで琉球ゴールデンキングスと対戦した。旧bjリーグ時代からともにリーグを代表する強豪として激しいライバル関係にある両チームだが、これまで大阪は、日本バスケ界有数の観客動員力、熱狂的なファンを有する沖縄でのアウェーゲームでは厳しい結果が続いていた。その代表例として旧bjリーグラストシーズンだった昨シーズン、プレーオフのカンファレンスセミファイナルで沖縄に乗り込んだが、あえなく連敗しシーズン終了となってしまったことが挙げられる。
だが今回、大阪は5日の試合で序盤から圧倒し、96-57の圧勝で嫌な思い出を払拭する。6日はリードを許す苦しい展開が続いたが、残り1秒に決勝点を挙げる劇的な勝利。今季ここまでシーホース三河、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと地区上位の強豪も成し遂げていなかった沖縄での連勝を達成し、同時に昨シーズンのプレーオフでの雪辱を果たした。
この連勝の立役者となったのが、『エックス』のニックネームで知られるエグゼビア・ギブソンだ。5日は序盤から得点を重ね、30得点7リバウンド2ブロックと大暴れ。6日は前半こそ沈黙するも、第4クォーターだけで15得点を稼ぎ、21得点3スティールをマーク。残り約50秒に1点差に迫る3ポイントシュート、そして1点を追う残り4秒からの攻撃ではインサイドに切れ込み難しい体勢から決勝点を決めるなど、終盤のビッグショットを続けて成功させた。
過去、信州ブレイブウォリアーズに2013−14シーズンと2015-16シーズン、トヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)で2014-15シーズンに在籍と、今シーズンが日本での4シーズン目となるギブソン。210cm120kgの恵まれたサイズを持ちながら、スモールフォワードのような軽快なフットワーク、クイックネスも備えており、それはここまでスティール数、速攻での得点がチームトップと、データにも持ち味が表れている。
まさに『動けるビッグマン』である彼は、一度波に乗ると手のつけられない爆発力で試合を支配してきた。ただ、一方で荒削りな部分も多く、相手の徹底マークを受けると視野が狭くなり凡ミスを犯し、調子が上がらないまま1試合を終えてしまうなど、安定感に欠ける部分もあった。
しかし、今回の2連戦ではその課題も改善しつつあることを示した。1試合目は序盤でリズムをつかんで30得点と大暴れ。2試合目は「今日、前半は最悪でしたね。相手のダブルチームに対し、自分からトラップにかかってしまうようなプレーをしてしまいターンオーバー4つでした」と桶谷大ヘッドコーチが語るように、悪い時のギブソンが出てしまった。しかし、「後半に入って、だいぶ球離れがよくなりました。それによって、相手の寄せも遅くなっていました。後半は良かったです」と指揮官が称えるように、後半に入って見事に修正し、最後のビッグショットにつなげた。
ギブソン本人は、6日の試合をこう振り返る。「前半に比べると後半は落ち着いてできた。そして、みんなが信頼してくれたおかげで、1対1を多く仕掛けることができ、活躍につながった。(残り1秒での決勝点は)チームが僕にボールを預け、決断を託してくれた。2連勝はとても大きい。僕たちは若いチームでまだまだ、いろいろと学んでいる途中だ。この勝利は、チームを正しい方向にと導いてくれるものだよ」
「今は本能に従って、アグレッシブにプレーする」
大阪といえば元NBA選手のジョシュ・ハレルソンとギブソンのコンビが大きな武器となっているが、「とても感触は良いね。僕たちはともにビッグマンだけど、外でもプレーできる。そして、互いに色々なプレーをできることで、チームを助けていけると思う」と自信を見せる。
これまでbjリーグでのプレーが多かったギブソンだけに、外国籍の出場時間がBリーグになって減ったことで「かつてはコートに外国籍が3人いることもあったので、プレースタイルは違ってくる(彼にとって日本での1年目となる2013−14シーズンのbjリーグは外国籍が第1、第3クォーターで2人、第2、第4クォーターで3人となっていた)。より責任感が大きくなったと思う」と、自身の役割にも変化があると感じていた。
ただ、ここに来てプレースタイルを、昨シーズンまでのものに戻しつつあり、それが今回の好プレーにもつながったようだ。「落ち着いてプレーしようと意識しすぎて、うまくいかない部分があった。今は本能に従って、アグレッシブにプレーすることを大事にしようと思う」
これからのギブソンについて指揮官は、「ハレルソンとはコミュニケーションを取っていて、これからもどんどん良くなっていける。あとはもっと日本人ビッグマンとも連携を取れるようになっていければ」と、さらなる活躍に期待を寄せる。
未知数な部分はあるが、試合に大きな影響を与える力を持った選手のことを『Xファクター』と評する。まさにギブソンは、大阪の『Xファクター』であり、今回の連勝で勝率5割に戻した大阪が、これから『打倒、旧NBLチーム』で上位に食い込んでいけるかのキーマンになってくるだろう。