滋賀レイクスターズ

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

荒尾岳が滋賀の大黒柱として攻守にいぶし銀の働き

川崎ブレイブサンダースと滋賀レイクスターズの第2戦。フライデーナイトの第1戦は滋賀が第1クォーターにロケットスタートを決めながら、試合が進むにつれてディフェンスの強度を上げた川崎に逆転負けを喫している。今日も立ち上がりは同じ展開になったが、第2クォーター以降は別の展開に。滋賀は川崎がプレー強度を上げるたびに合わせていき、付け入る隙を与えなかった。

勝利の立役者となったのは荒尾岳だ。滋賀はディオール・フィッシャーとガニ・ラワルの外国籍選手2人体制で、帰化選手もいない。そしてラワルが第1戦で足首を痛めベンチスタートに。分厚い選手層を誇る川崎がここで優位に立つはずが、Bリーグになって初めてスタメン起用された荒尾が攻守に素晴らしいプレーを見せて滋賀を支えたのだ。

バーノン・マクリン、シェーン・エドワーズとのマッチアップでも一歩も引かず、スイッチして藤井祐眞とスピードのミスマッチを作られても、フットワーク良くプレッシャーを掛けて1on1で負けない。そしてオフェンスではフリーでチャンスを得た時には迷わず打ち、フィールドゴール4本中4本成功で8得点を記録。ロースコアの展開にあって一発ずつが貴重な得点となった。

過去2年間は千葉ジェッツで脇役に甘んじたが、出場機会を求めて滋賀に移籍した荒尾を、ヘッドコーチのショーン・デニスは「ディフェンスの存在感、身体の強さを見せてくれた。IQの高い選手なので、彼がコートにいる時のチームの出来が良かった。彼なしで今日の勝利はなかった」と絶賛。荒尾も「こういうことをするために滋賀に来た」と胸を張った。

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川崎の流れを何度も経ち切り、リードを守る

川崎は試合を通じてフィールドゴール61本中23本成功、37.7%とシュートが決まらなかった。だがこれは川崎の選手のシュートタッチが悪かったというより、滋賀のディフェンスが機能していたからとみるべきだろう。川崎がファストブレイクから挙げた得点はわずか2。滋賀は粘り強く相手のトランジションオフェンスをケアし続け、川崎の得点はほとんどタフショットを決めきったものだった。これではシュート確率は上がらないし、得点も伸びない。伊藤大司は「昨日は第1クォーターで良いスタートが切れましたが、40分間続けられなかった。それを続けられたのが今日の試合です」

川崎に見せ場がなかったわけではない。第3クォーターには篠山竜青が思い切りの良いドライブからバスケット・カウントの3点プレー、その直後に辻直人のアタックからチャンスを作って長谷川技が3ポイントシュートを沈め、40-41と1点差まで詰め寄る。ビッグプレーの連発で川崎のクラブ史上最多となる4881人を集めたとどろきアリーナのテンションは最高潮となった。

だが、ここで滋賀は崩れなかった。プレーが途切れるたびに伊藤はチームメートに声を掛け、落ち着きを保った。高橋耕陽からラワルへのアリウープで川崎の流れを断ち切ると、巧みにファウルを誘ってフリースローで貴重な得点を重ねていく。滋賀もシュートタッチは必ずしも良くなかったが、そこでフリースローでつないだことが優位を保つ上で大きかった。

滋賀レイクスターズ

「川崎に1勝1敗は我々にとって素晴らしい成果」

第4クォーター序盤にも川崎は堅守からマクリンのダンクで追撃態勢に入り、残り7分を残して滋賀のチームファウルが4に到達。それでも滋賀はディフェンスの強度を落とさず、なおかつ簡単にはファウルせずに川崎を抑え続けた。ここは伊藤に代わってポイントガードを務めた二ノ宮康平の時間帯。粘り強いディフェンスを続けながら、川崎の追撃ムードを断ち切る見事な3ポイントシュートを決め、そのまま勝利を決定づけるまで司令塔の役割を務め上げた。

川崎の北卓也ヘッドコーチは「チーム全体でシュートが入らず、それがディフェンス面にも悪い方向に出てしまいました。自分たちで流れを相手に引き渡したところがありました」と語る。「シュートが入らない試合も長いシーズンにはあるんですけど、オフェンスが良くない時に下を向いてしまい、次へ、という感じにならなかった。そういうタフさも必要になってくる。この負けを教訓にして次節に向けて準備したい」

終盤は10点前後のリードで推移したが、滋賀の選手たちは「相手が川崎なので、油断したら一気に持っていかれるという重圧がありました」と口を揃える。それでも残り2分20秒、エドワーズのハンドリングミスを突いた狩野祐介がワンマン速攻を決めて73-60、これで大勢は決した。

デニスヘッドコーチは「川崎を相手に1勝1敗にできたのは、我々にとっては素晴らしい成果。コーチとして誇らしく思う」と大喜び。伊藤も「シーズン序盤にこれができたのは、必ず先につながります」と、敵地で川崎を破ったことに大きな意義を感じていた。